ハナの記録⑪ 謹慎と静けさ
ククちゃんが謹慎になった——
簡単に言ってしまったが、この工場において”謹慎”というのは初めての事例である。
そもそも、謹慎という制度があったのも初耳だった。
修理が終わるまでの休止とかならよくあるけど…
ここ最近は、作業中も右隣がやたら賑やかだったので、今の静けさは逆に変な感じがする…
反対隣はハロなので、静かなものだ…
たまに動作不良で大きな音がしてビックリすることはあるけど。
……
今回のことから、私は2つの気付きを得た——
1つ目は、謹慎の基準だ。
今までみんなは様々なことをやらかしてきた…。
でも、実際に謹慎になったのはククちゃんだけだ。
先日、新品のコンベア用ベルトをバラバラにしたロナさんでも謹慎にはならなかった。
まぁ…謹慎じゃなかっただけで、物凄く怒られてはいたけれど…
じゃあ、ロナさんとククちゃんの違いはなんだろうか…?
ロナさんは多分、わざと交換用のベルトを使ったわけではない。
もう必要のない古いベルトだと勘違いしていただけだ。
怒られた時も自分の不注意を反省していた。
ベルトが新しいか古いかは、見たらすぐに分かりそうなものだけど…
多分、ロナさんはミミ先輩のことしか頭に無かったのだろう。
対してククちゃんは——
立入禁止と承知の上で倉庫に侵入し、自分の物ではない休眠装置で勝手に充電した。
そもそも、ククちゃんは反省の為に今の作業場に飛ばされてきた身だ…
その上での所業とくれば…ちょっと庇う余地がないかもしれない。
……
2つ目は、修理ではなく謹慎だったこと。
つまり、ククちゃんが規則を破って暴走しがちなのは故障ではない。
もし故障なら、”謹慎”ではなく修理や調整を行うはずだ。
もしかしたら、余計なことを考えてしまう私の”個性”と似たようなものなのだろうか?
謹慎理由がククちゃんの個性にあるのなら、この先もたびたび謹慎になってしまいそうだ——
いや、私の寝癖の個性は次の日には無くなってたし、ククちゃんの個性も謹慎が終われば無くなっているかもしれない。
大人しいククちゃんというのは、ちょっと想像がつかないけど…
……
なんにせよ、謹慎が明けるのを待つしかない。
ククちゃんが無事に反省できるのか、また暴走するのか見守ろう…。
とりあえず、私はいつも通りに作業するのみだ。
静かだからか、いつもより機械音も大きく聞こえる——
…あれ?
怒られたククちゃんは謹慎で作業が無くて、私は作業するの…?
”謹慎”とは、一体なんなのだろうか…?




