ハナの記録⑨ 私の長所と眼鏡
今日は何事もなく作業ができている。
なぜかククちゃんが眼鏡をかけて、これ見よがしにクイクイ動かしている以外は特になにもない。
ただ箱に弾薬を詰めるだけ。
うん、今日も平和だ。
「ハナ、ちょっといいか?」
意識の外から主任の声が飛んできて、頭が真っ白になる———。
「わ、わたしじゃないです!」
「……なにがだ?」
思わずよく分からないことを口走ってしまった。
気を取り直して主任に身体を向ける。
「いえ、なんでもないです…なんでしょうか?」
「向こうで話す、ついて来い」
主任は言うが早いか背を向けて歩き出していた。
まぁいつものことなので、小走りで追いかけ面談室に向かう。
……
しかしいったいなんだろう…?
私は何かしてしまったのだろうか。
ここ数日の自分のしでかしを思い出しながらソファに腰かける。
ダメだ、何も思い当たらない…ええい、来るなら来い!
「お前から見て、最近のククの様子はどうだ?」
なるほど、そういう感じか…!
怒られるわけじゃないと分かり、自然と安堵の笑みを浮かべてしまう。
「えーと、そうですね…前よりは落ち着いてきたかなと…」
「正直に話せ」
「なんか、あれからも色んな所に入り込んで物を漁ってるみたいです。」
ごめんククちゃん、私は薄情者だ。
でも、事実は事実なので…。
「…そうか。今後もよく見てやってくれ」
「もしかして、その為にククちゃんを私の隣にしたんですか?」
「ああ。お前はすぐに気を取られるが、それだけ周りを見ているということでもある」
「つまり、私の個性は長所ってことですか?」
「いや、短所だな。ただ、長所にもなり得るということだ」
なるほど?
いまいち褒められた気はしないけど、これは主任にしては褒めた方だ。
つまり、私ならククちゃんをしっかり見てくれるだろうという主任の信頼。
そうに違いない。
「では、また何かあれば報告します」
なんだか誇らしくなって、いつもより少しだけキリッとした声が出た。
お気に入りのソファを撫でるのも忘れて面談室を後にする。
持ち場に戻ると、ククちゃんに飽きられた眼鏡が寂しげに作業台で横たわっていた。




