74/167
笑顔
「まだってなんだよ!」
和輝の言葉を聞いた咲希は、和輝の足を思い切り踏み付ける。これは変態を気持ち悪がっている訳ではなく、梓にデレデレする和輝に対しての、ちょっとした嫉妬心であった。
しかし、和輝は笑っている。咲希以外の少女にセクハラしようとしたことを、咲希は不快に思っていたのだ。だからお仕置きのつもりだったのに、ニヤニヤニヤニヤ、ニコニコニコニコと和輝は笑い続けていた。
「踏まれて笑うな。気持ち悪い」
この言葉は咲希の本心らしく、本気で気持ち悪がるような表情をしている。そして咲希は更に力を入れて、全体重を掛けるくらいに和輝を踏んでいた。それでも和輝は、ニヤニヤニコニコと笑っていたのだった。痛いと言う表情など見せずに。
勿論、和輝だって痛くなかった訳ではない。単純に、その痛みを悦んでいるという訳でもない。少し俯くと、笑顔の理由をぼそっと独り言のように和輝は告げた。
「だって、俺は嬉しいんだよ。咲希ちゃんが、元気になってくれたみたいだから」




