一緒の部屋に
そこまで言い終えると、日良はもう部屋から立ち去ってしまっていた。和輝は嬉しそうに笑っている。しかしそれとは反対に、咲希は酷い膨れっ面をしていた。不満気に和輝を睨み付けるその姿は、幼い子供そのものだった。
「咲希ちゃんだって不安でしょ? 俺だってそうさ。だから一緒にいてよ」
頬を膨らませる咲希の可愛さに見惚れながらも、和輝は一旦それを振り払いそう言った。人の死を間近に見てしまったのだから、不安だと言うのは本心だ。だからこそ、和輝の浮かべる悲しそうな微笑みが咲希を説得したのだろう。
「お前が? 分かった、特別だからな。私はお前を信じてやってるんだから、絶対に何かあったら守れよ? 一緒の部屋にいるからには、絶対の絶対だからな。お前が私を守り、私がお前を守るんだ」
自分で不安だから一緒にいて欲しいと言うのは恥ずかしかったが、強がりの咲希だってそれは思っていた。安堵と喜びから咲希はニコッと笑い、和輝に軽くデコピンをした。
それがなんだか嬉しくて、和輝の顔はにやけてしまっていた。目には薄ら涙を浮かべて、それでもにやにや笑っていた。それこそが自分に出来ることと、無意識にそう判断してしまっていたから。




