豚の臭い
「それと、私はもう疲れた。布団を用意しろ、寝る」
疲れていて、眠いのも本当だった。だから咲希は、これからの戦いへと備えることを込めてそう言った。戦争が始まってしまっては、もう静かに布団で眠ることなんて叶わないと分かっているから。
咲希が突然そんなことを言うので、日良は驚いた様子だったのだが、すぐに笑顔を取り戻すと優しく頷き頭を下げた。そこに一国の殿たる威厳はなく、ただの少女に恋した男、むしろ恋する乙女のような表情だった。
「了解致しました。和輝様はどうなさいますか?」
頭を上げると日良は、和輝にもそう問い掛けた。和輝について知りたいと言う気持ちもあるが、和輝に対する警戒心が解けていない日良。一緒に話したいと思いながらも、大人しく寝て欲しいと思う。
自分の気持ちが理解出来ず、矛盾する思いを抱えながらも日良は微笑む。自分が今まで咲希へと向けていたその思いが、和輝へと向けられ始めていることに気が付かずに。
「俺? 俺も咲希ちゃんと一緒に寝させて貰おっかな」
日良の気持ちなんて知らずに、和輝は笑顔でそう答えた。辛い状況だというのに、周りを笑顔にしてしまう明るい笑顔で。日良と同じくその笑顔に魅力を感じ、照れ隠しも含めて咲希は和輝を思い切り蹴飛ばした。
「了解致しました。それでは、部屋は一つで宜しいのですね? 広い部屋を用意して、布団を二つ敷かせて貰います」




