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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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涙を拭いて

「咲希様、お呼びですか?」

 壁に向かい座り込む咲希、その肩に手を置く和輝。そんな二人の姿を見ても平然としたまま、そこにあった椅子に座った。

 いいや、平然としていられた訳がない。それでも彼は、今取るべき行動が分からなかった。だから椅子に座り、二人が落ち着くのを待つしか出来なかった。

「私がここにいるのがばれたら、豚はここを狙って来るかもしれない。だから日良、お前は対策を取っておけ」

 涙を拭いて笑顔を浮かべると、咲希は自分の顔を軽くパンと叩く。そしていつも通り自信に満ちた、じゃじゃ馬姫の表情を浮かべ直し、日良の向かいの椅子に座った。

 それでも正面で見ていると、咲希の目が赤くなっているのが分かった。そんな彼女の姿を見ているのは、日良にとって何より辛いこと。それでも彼は、ここを治める者として微笑んだ。

「出来る限り私の居場所は知られないようにするんだ。正々堂々戦ったって、お前に勝ち目ないのは分かっているだろ? 準備は万全に」

 馬鹿にしたような言い方も、咲希らしいので日良は好きなくらいあった。少し嬉しそうに微笑んで、日良は深刻な表情で頷いた。微笑んでいる場合じゃないことくらい分かっているから、再び微笑み直す。

 それを見た咲希は、満足そうな笑顔を浮かべる。そして隣に突っ立っている和輝を突き飛ばすように、堂々と立ち上がった。その表情はまるで、この状況を楽しんでいるかのようであった。

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