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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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手紙

 和輝と話しながらも、深雪は咲希に手紙を渡す。それこそが深雪がここに現れた理由である。

「ん、陛下からの手紙。一人で読めって」

 確かに深雪は咲希に仕えている身である。しかしそれ以前に藤原家に仕えているのだから、陛下の命は絶対。そして陛下、つまり咲希の父親は神のように崇められている。

 その彼が娘に書いた手紙。そうなれば、深雪ほどのものにしか預けることは出来ない。何度も預かっている深雪だから、疑うことなく咲希の元に届けた。

「父上、から? 分かった」

 中々手紙なんて送られてこないので、何があったのか不思議に思う。咲希は深雪から手紙を受け取ると、しゃがみ込んで素早く最後まで目を通した。内容に驚き、何度も読み直す。

 しかし、そこに書かれた文字が変わりはしなかった。表情には出さないよう努力するが、一気に彼女は不機嫌になっていたのである。

 演技派な咲希が不満を表情に出すほど、不機嫌であった。深雪ですら気付かない、些細な表情の変化ではあったのだが。それでも手紙により、咲希はかなり気分を害していた。

「咲希ちゃんのお父さん? そういやぁ、お姫様って言ってたね」

 暢気にも和輝はそんなことを言っている。しかしそれが、今の咲希には愛しく見えていた。

「ジュッキー、陛下のこと知らないのかよ。深雪は基本命令されるのとか、人に仕えるのとか大嫌いなんだよ。あの人はそんな深雪でも協力したくなるくらいに、無邪気で優しくて素敵な人なんだぜ」

 深雪が父親を褒めている。本来ならば、咲希は喜ぶところであった。それでも今の咲希には、それが腹立だしく思えていた。その手紙の内容に、明らかに咲希は乱していたのだ。

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