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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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破滅

 ”ぶっがーん!! どーん! ぼごーん!!”


 四人が話し合いを再開しようとすると、外から酷く大きな音が聞こえてきた。

「何だ!? 何があった!」

 驚いて立ち上がる咲希。丁度そこに、伝令兵が駆け込んできた。

「姫様、兵糧庫が爆発しました。恐らく、幸久殿の……」

「何!?」

 咲希は余りにも驚愕し、言葉の途中で叫んでしまった。驚きながらも、伝令兵をもう追い返した。

 幸久というのは、玲奈に仕える将だ。文武両道ではあるが、特別優れているという程ではない。玲奈にも信用はされているが、特別気に入られていたりはしない。

「幸久、殿の? では楓雅殿がこちらに向かっているというのに、幸久殿まで……? え、あ……ごほん。林太殿と玲奈殿の繋がりは見えますか?」

 一葉も驚愕し、取り乱してしまっていた。しかしなんとか冷静さを取り戻し、咲希にそう問い掛ける。

「それはないんじゃないか? 豚もポンコツも、欲張りだからなあ。仲良く半分こなんて、出来ないよ。そしてそれが分かっているんだ、わざわざ手なんて組まない。ふっふふ、にゃははは、愉快愉快」

 途中までしっかり尤もなことを言っていた。しかし咲希は最早壊れかけていた。

「でも深雪が思うに、玲奈はそんなでもないんじゃない? だって幸久なんて、使えない奴送りつけたんでしょ?」

 周りが戸惑う中、深雪だけはとても冷静だった。驚いてはいるが、ふざけていられない雰囲気を感じ取ったのだ。

 普段はハイテンションでも彼女は忍者。驚きを隠すことくらいお手の物。どんなときだって、冷静でいられるから優秀なのだ。

「おい変態、行こう。なくなった食料を、取り戻しにさ」

 やがて咲希も冷静を取り戻し、目に妖しい輝きを浮かばせた。

「えっあ、はい。でも咲希ちゃん、どうすればいいの?」

 そんなことを言われても、和輝に分かる筈がなかった。問い掛けながらも和輝は、まだキーンとする耳を押さえているような奴だ。分かる筈がない。

「そのまんまさ、行くぞ」

 低い声で咲希はそう言うと、また和輝の手を取り部屋を飛び出した。そのまま走り走り走り続け、二人は城を出ることに成功した。それでも走り続け、城の後ろに回り咲希は突然止まった。

「戦、そこにいるんだろう? 出番だ、出てこい」

 そして咲希は、地面へ話し掛けた。和輝はこれはもう完全に、咲希が可笑しくなってしまったと思った。

「咲希様、御用ですか?」

 しかし、咲希が可笑しい訳ではなかったのだ。地面が四角く開き、その下から汚れた若い男性が出てきた。

 背中までぼさぼさの黒い髪を伸ばし、髭も生やしている。そして真っ黒の髪とは反対に、肌はとっても真っ白だった。青白い肌に細い体の為、病人と疑う姿だった。服装も、適当な布を身に纏っているだけだ。

「うわっ」

 驚いた和輝は、少し後ずさってしまう。そんな和輝など気にせず、咲希はその男性に話し掛ける。

「食糧を楽に運べる機械だったっけ? あれは完成したのか?」

 期待を込めた瞳で、咲希はそう問い掛けた。それに、男性はニヤリと微笑んで返す。

「あれは失敗してしまいました」

 微笑みから成功したものだと思ったので、男性の返しに咲希は驚いた。しかしそのあとすぐ、なぜ微笑んだのかが分かる。

「しかし代わりのものならありますよ。ばれずに物を盗めるという、優れものです」

 彼は別のものを完成させていたのだ。頼んだものとは違っているが、素直に咲希は興味を持った。

「ん? まあいい、持って来い」

 男性は一旦地面に戻る。そして、咲希くらいの小さな少女なら入れる程度の四角い木の箱を出してきた。

「これは、どう使うのだ?」

 不思議そうに、目を輝かせて咲希は問い掛ける。その反応に男性は喜び、嬉しそうに微笑む。

「実際に試してみましょう」

 男性は二人を地面の下に呼び込んだ。

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