氷
「ん、そうか。じゃあ、頼んだからな。私を守れ、だぞ」
今度はニッと可愛らしく笑い、ボーっとする和輝にデコピンをした。それで和輝の意識は戻ったが、やはり恥ずかしそうだった。
「うん、俺も頑張るよ」
その言葉を聞いた咲希は、満足そうに笑った。そして照れている和輝など放っておき、一葉や深雪のいる部屋に戻った。
この為だけに咲希は連れ出したのだ。和輝に守るって言って貰いたい。でも、二人の前じゃ恥ずかしい。そんな、可愛らしい少女な願いだった。
めんどくさい。そう思う人もいるかもしれないが、咲希にとっては大きなことなのだ。ずっと力だけを信じて来た、咲希にとっては。それに、とても嬉しいことなのだ。彼女は守るなんて言われなかったから。
「姫様、私達はどうすればいいのですか?」
どうにか咲希に頼って欲しい。そう思う一葉は、咲希にそう問い掛けた。
「ねえ咲希、深雪も何かやりたいよ」
頼って欲しい、その思いは深雪だって一緒だった。しかし二人の言葉を、咲希は小馬鹿にするように鼻で笑った。
「ふんっ、お前らは城を護ってればいい。特に深雪、絶対に戦には出るなよ? 今のお前じゃ無理だから」
強がって言うが、素直じゃない咲希にとってそれは”お願い”だったのだ。それには、ずっと一緒にいた二人だって気付かなかった。ずっと一緒にいたのに、気付けなかった。
二人に咲希がそう言うと、黙ってしまい場は沈黙となった。そこへ、やっと正気に戻った和輝が部屋に入って来た。
「咲希ちゃん咲希ちゃん!」
妙にニヤニヤしていて、嬉しそうな和輝の表情。そんな空気が読めない和輝に、三人は一斉に視線を向けた。しかし、彼はそんなこと全く気にしなかった。
「何だよ、変態。五月蝿いぞ、ったく」
咲希はいきなり叫んできた和輝を、鬱陶しそうに睨み付けた。名前を呼ばれるだけでも嬉しかった。だけど、それが恥ずかしくて睨み付けた。




