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星空アクア

 ゴールデンウィーク最終日。

 最終日とは言っても、農家には休みなどないという。いや、推華のところは小さいから割とゆるゆるできるとは言っているが。


「そういえば今日なんだかテレビ来るらしいべ」

「あん? なんで?」

「アイドルがオラに会いたいとか言ってるそうだけんど……」

「アイドルの知り合いっていたかお前」

「うーーん……。心当たりがないんだぁ」

「じゃあ詐欺かなんかじゃねーの?」

「かもしれんけど金銭要求はされんかったど」


 うーん。

 まぁ、テレビ来るのはいいけど……。


「さすがに今日は迂闊に魔法使えんな。映されたら困る」

「んだなぁ」


 本当にテレビが来るならだけどな。

 水を振り終わり、アルタに今日は魔法を使わないでくれと言いに行こうと扉を開けた時だった。


「あのー、すいません。ホホテレビの者なんですけれども」

「ホホテレ?」

「はい。西浦 推華様のご自宅でしょうか」

「そうですけど……」

「あなたが西浦 推華さん?」

「あー、いえ。推華ーー。さっき話してた人来たぞー」


 家に入った推華を呼んだ。

 推華は中から出てくる。結構長身の女性が出てきたのに驚いたのか、うおっという声を上げていた。推華はガタイがいいからなぁ。


「うちが推華ですけんども。テレビの方が何の御用だべ?」

「実は今、会いたい人の元へ行ってみたっていう企画でして。テレビ大丈夫でしょうか」

「全然かまわないどー。でもオラに会いたい人って?」

「お呼びしても?」

「え、えぇ」


 そういうとスタッフであろう人が誰かを呼びに行った。

 現れたのは私でも知っているほど有名な歌手、星空アクア……。結構有名人だぞ? 推華と本当に知り合いなのだろうか。

 推華はん~?と何かを思い出すように歌手の人を見ていた。そして、思い出したのか「あ~っ!」という声を上げる。


「光ちゃんだべ!」

「久しぶり。元気してた?」

「元気だべ~。今話題の歌手の星空アクアって光ちゃんだったんだか~」


 私は知らないとなると推華の中学時代の友人だろうか。

 とりあえず私はお邪魔虫だと思うので家に入ろうとした時。


「あら、何の騒ぎ……」


 中からけだるげなアルタさんが出てきたのだった。

 アルタさんは推華とアクアさんのほうを見る。そして。


「魔力あるわね」


 あるの?

 っていうかそれ以上にアルタさんを映すのはまずくないか。アルタさんは異世界からやってきた身である。当然日本国籍なんてあるはずもない。

 ないと思うけど一応国籍がないから不法入国みたいな扱いになるんじゃないだろうか。あと純粋に魔法を使わせたくない。


「ちょっと私と中入ってようぜ、アルタ」

「ん? えぇ……。ってあの男の人が持ってるの何かしら! なんかすっごい興味をそそられる機械じゃない!」

「あとで教えてやっからな!」

「あ、みなさんもどうぞ! 私も皆さんとお話したいです」

「いいの!? したいわ!」


 好奇心が勝ってしまったか。

 私は仕方ないので、アルタさんに話をすることにした。アルタさんに魔法を使わないこと、アルタではなく荒田と名乗れということ。

 正直警戒しすぎな気もするが、なにがあるかわからないからな……。


「初めまして。私は熱海 茜っていいます。こっちが荒田です」

「茜さん、荒田さんはじめまして。私は西浦さんの中学の同級生の星空アクアです。みなさんは推華とどういった関係ですか?」

「えっと、一応居候させてもらってる感じ……かな? 私は高校時代の友人で……荒田は……」

「………………」

「いろいろあって知り合った人だぁ。にしても光ちゃんがここまでビッグになるとは思っとらんかったよぉ」

「私も。中学時代はありがとね」

「なんかあったのか?」

「光ちゃんはクラスメイトに名前をからかわれとったんよー。オラはずっと光ちゃんって呼んどっただけだけどなぁ」

「それで救われたの」


 ほーん。

 からかわれる名前か。光ってありきたりの名前だし、何もからかわれる要素がないとなると苗字がそういうからかわれるような名前だろうか。 

 まぁ、とりあえず私はお茶を淹れてこよう。


「お茶汲んでくる」

「あ、おかまいなく」


 私は人数分の湯飲みを用意し、魔法で熱湯を注ぎ入れる。お茶に最適な温度も感覚で出せる。自分で熱湯を出すことができるというのはとても便利だ。

 お茶を運び、スタッフさんたちと星空さんの前に置いた。


「美味しい! どんな茶葉使ってるの?」

「普通の市販品だど~」

「じゃあ水がいいのかな……。ミネラルウォーターとかで淹れてるんですか?」

「いや、私のまほごほっ」

「まほ?」

「真心ですよ私の……」

「ぶっ」


 推華が噴き出した。

 あっぶね。私の魔法で出した水なんて馬鹿なこと言えるもんかよ。アルタはカメラのほうをガン見してカメラマンの人困らせてるし。

 めっちゃ子供のような好奇心たっぷりの目で見ている。


「はい、いったん撮影とめまーす」


 と、カメラが下ろされた。


「緊張するべ……」

「ごめんねいきなり。でも同窓会とかに来なかったからさ。会いたくて番組利用したんだよね」

「オラ農作業で忙しかった時期だしなぁ」

「でも元気そうでよかった。で、熱海さんたちとはどういったご関係なの?」

「んー、茜は高校時代の友達でなー。アルタさんは魔法の師匠なんだべ」

「魔法?」

「えっあっ、農家の師匠みたいなもんなんだ! まーほんとにね!」

「何か隠してる?」

「……してない」

「嘘。推華は嘘をつく際に汗をたくさんかくの」

「嘘だべ!?」

「嘘よ」


 推華は助けを求めるように私を見てきた。

 いや、無理だろ。がっつり言及しちまったじゃねえか。誤魔化し方も無理がありすぎるだろ。仕方がないので星空アクアさんだけキッチンへ呼ぶ。


「……で? 何隠してるの? まさか……さっきのお茶実は違法なアレとかだったり!?」

「えっと……。今から見せるのはあまりというか、絶対にばれないようにしてほしいだ……」

「嫌よ。犯罪に加担するつもりは……」


 私は手から水を出す。


「なにそれすごーーーーーーーーい!」

「オラたち魔法が使えるようになったんだべ……」

「え、それほんと? すご……。マジ?」

「マジだよ」


 私は星空アクアさんに変身してみた。


「私……!? 変身もできるのね!」

「内密にな……」

「任せなさい。その代わり私も魔法使いたいんだけど」

「……アルタ」

「わかったわ。背中失礼」


 アルタは先ほど魔力があると言っていた。

 魔力を解放させている。


「これで出来るわ」

「ほんと?」

「属性で言うと風じゃないかしら」

「ほーん。ウインド」


 すると、強く風が吹き台所が大惨事。


「すごっっ!!! まじすごい!」

「何の音ですか?! ってうわっ!? どうしたんですかこれ!」

「思いっきりオラがこけちゃっただけです!」

「な、なら良いのですが……」

「ふふん。魔法……魔法かぁ~……。よしっ。ねぇ、推華。私も居候していい?」

「えっ?」

「もちろん生活費は出すわ。魔法の鍛錬をしたいの」

「わ、わかっただ……」

「決まりね。しばらく活動休止しよ。テンション上がってきた!」










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