神隠し事件
「茜さんっ! 推華さんっ! アルタさんっ! おはよーございます!」
ヤマトが元気よく頭を下げて挨拶。
ものすごく元気そうだ。昨日の今日でまた遊びにくるとは。若い子のバイタリティって怖いな……。
「よく来たねぇ〜。オラたち仕事あるから今相手出来んよぉ」
「アタシも手伝いますっ!」
「ハウス三棟しかないしええよぉ。人手は今足りとるしなぁ。少し待っとってくれなぁ」
今日の仕事は苗に水を撒くことである。
ポンプをすでに設置しており、ただただ苗に水を撒くだけの作業ではあるが……。
私はハウスに入り、ちゃっちゃと魔法で水を撒いておいた。
「すげー! 魔法便利だすげー!」
「だろ?」
やっぱヤマトの反応はとても心地がいい。
「んじゃ、魔法でも見せるか。また変身か?」
「あ、いえ! 遊びに来たのはちょっと異世界について話したいことがあって!」
「なんかわかったのか?」
「確証はないんすけど!」
「わかった。二人を待とうか」
二人が水まきを終えて、家の中に案内する。
「アタシなりにネットとか使って調べてみたんスよ。結構昔のデータもあったりとかして。で、気になったのが神隠し事件っす」
「「「神隠し事件?」」」
「はい。一瞬目を話した隙に消えていた……というのは結構昔からあることみたいなんす。でも人間が一瞬で消えるなんて普通はあり得ないじゃないっすか」
「まぁな。それこそ転移魔法……」
そこまで言って気づいた。
もしかして転移魔法が関係してるかもしれないってことか?
「転移魔法……。使い方次第ではワンチャン異世界に転移出来るんじゃないっすか? 神隠しはその条件が偶然噛み合わさって魔法が発動した……。そう考えたら納得はできる」
「魔法が勝手に発動することなんてあるのか?」
「なくはないわね。昔は魔法陣で魔法を発動することが当たり前だったから、その魔法陣が消えてなかったりしたら魔力を込めれば魔法が発動することはあるの」
「ほーん……」
「でも相当古い技術よ? 今は魔法陣なくても出来るし……。それに世界観を跨ぐなんてどんな魔法よ。私が魔王に受けたのと同じようなものじゃない。並大抵の魔法使いには出来ないと思うわよ」
「でも神隠しが魔法となんの関わりもないかってのはないべ? 実際関わってると考えてもいいべさね」
神隠し……か。
少なくとも転移魔法は関わってはいそうだな。魔法が関わってるとするなら異世界も多少なりとも関わってきているはずである。
「でもすげぇなぁ。一晩で調べてきたんか」
「お役に立ちたくて! 昨日偶然神隠し事件をまとめていた番組を親が観てたからそれ頼りに」
「……超常現象って魔法由来だったりするのかもな」
「かもっすね!」
神隠し……。現地に行って調べてみるのもいいかもな。
「場所とかわかるか?」
「えぇっと……。神隠しは全国であるらしくて、一番近いところで稚内市っすね!」
「遠いな〜……」
「転移でいけばすぐじゃないっすか?」
「そうなんだけど……。転移魔法って多分行ったことないと無理だろ?」
「そう、ね。一度行ったことのある場所じゃないと無理よ。使えるようになってから行った場所ね」
「なんかゲームみたいっすね!」
「稚内、行ったことないんだよな」
そもそも魔法を会得してからどこにも行ってない。
日本最北端の稚内市。私は用事がないと基本遠出は滅多にしないし、元々函館住みだったしわざわざ遠い稚内までいくのも怠いしなぁという感じで行ったことはない。
「なら行きましょーよ! みんなで!」
「そら行きてえけど今は無理だなぁ」
「なんでですか!?」
「オラのワゴン車はアルタさん轢いちまったときに大きく凹んで修理にだしてっし……」
「あ、アタシが親を説得して車を……!」
「人様の車で事故起こしたら申し訳ねーからな……。車だってポンポン買えるような値段でねーからよ。修理が終わったら連れてってやっから」
「まぁ……今はゴールデンウィークだしな。どっかに出かけたいわな」
「うぅ……」
ヤマトは悲しそうに落ち込んでいた。
「ここ付近にレンタカーはねぇし……」
「あっても隣の隣の市ぐらいだな」
「流石に軽トラじゃあ味気も座席もねーし……」
「私は何でもいいわよ! もっとこの世界のこと体験したいわ!」
「浮遊魔法で行ったら目立つよな」
「少なくとも騒ぎにはなるんでねぇか?」
「だよな」
だとしたらバスしかないわけだが……。
あまり悲しい顔はさせたくない。がこればかりはなぁ……。




