魔法使いに憧れる少女
猫に変身して町を歩く。
人間として歩いたことがある町でも、人間ではなく猫として歩いてみるとまた違っていてとても面白い。
「オラも動物に変身とかしてみてぇなぁ……」
「練習すりゃ出来んじゃね?」
「何年後だか……」
推華は隣を歩く。
ここは車通りが多く、通行人は殆どいない。まぁ、北海道の田舎町なら主な交通手段は基本的に車だからな……。
「あら〜推華ちゃん。猫ちゃん飼い始めたの?」
「あー……」
推華はもちろん私の正体を知っているので、飼い始めたという問いに素直に答えることが出来ないようだ。
「人から預かってる子なんだぁ」
「そうなのねぇ〜。あ、仕込みしなきゃ。またいつでも来てね推華ちゃん!」
「あぁ」
とてとてと逃げるように走っていく。
その後も歩いていると推華は知り合いと遭遇して猫を飼ってるのか聞かれ続けていた。
私をペットのようにはしたくないらしく、律儀に預かってる子だと説明している。
田舎に住むあるあるなのだろうか。基本町の人は知り合いというのは……。
「ま、帰ろうか。なんかごめんな」
「いいんよ〜」
歩いて推華の家に帰る。
変身を解いた、その時だった。パシャリと背後から音が聞こえた。
「世紀の撮影! 猫は人間!」
「あ?」
女子高校生くらいの女の子がスマホを片手に私を撮影していたのだった。
いつのまに尾行されていた? の前に、これ割と不味くないか。
この世界には魔法がない。人間が猫になっていたと知ると大騒ぎになる……。
「嬢ちゃん、家の中で話しよっか」
「はい! 魔法使いさん!」
私はその女の子を推華の家に招き入れることにした。
「魔法使いってこの世に存在してるんですね! 私魔法使いに憧れてまして!」
「…………」
「さっきのも魔法ですよね!? 私にも出来ますか!?」
「知らん」
居間で話していると。
「お客さん? お、ヤマトちゃん。いらっしゃい〜」
「推華、知り合いか?」
「今日話した定食屋の娘だべ〜」
「あぁ、あそこの……」
「なんかあったんだか?」
「魔法使ってるとこ撮られた」
「あぁ……。あれは世間様にばれるわけにゃいかんわなぁ」
推華もなんとなく危うさを理解しているのか、苦笑いでそう言っていた。
「推華さんも魔法使いなのですか!?」
「どーだかな。オラはまだまだよ」
「ふあーあ……。朝からなんの騒ぎよ」
「アルタ」
「ん……。この世界の子どもね」
2階からアルタが降りてきた。その瞬間、ヤマトちゃんと呼ばれた女の子が目を見開いて驚いていた。
というのも、見た目的にこの世界の人間ではないというのが分かったのだろう。そもそも白髪。日本人なら絶対にない髪色だ。
「この家は魔法使いの家だ……」
「あら、魔法使い知ってるの?」
「……っ! 不肖この私、名を山寺 大和と申します! 私を魔法使いにしてください!」
「ん〜?」
アルタは大和をマジマジと見ていた。
「無理、ね。魔力がないもの。完全に魔力が0……。魔法がないというのはこういうことね……」
「なっ……」
「流石に魔力がない人間は魔法使えないわよ」
「…………」
ショックを受けたような顔をしている大和。
「そんなっ……。小さい頃から魔法使いになるのが……夢だったのに……。猫ちゃんに変な違和感を持って尾行して魔法があることを折角突き止めたのに……」
「あー、その撮ったやつ他には見せんなよ」
「はい……」
「その、なんだ……。あまり気に病むことはねーと思う。うん。他にもいろいろ将来はあるだろうからよ……」
「……はい」
才能ないって突きつけられてとても絶望的な目をしていた。




