これから
不思議なことに魔法が使えるようになった。
だからなんだという話ではあるのだが、これはこれでとても便利である。
「魔法っていうのは個人で属性が決められているの。私は全属性扱えるけど普通の人は一属性しか使えないの」
「んなら茜の二属性は珍しいんだなぁ」
「そう。推華さんは土属性の魔法が使えるわ」
「土……」
少し残念そうだ。
「あとは別に、誰でも使える魔法の身体強化魔法、浮遊魔法、転移魔法というのがあるんだけど……。身体強化はともかく他二つは習得難易度が高いからあとで教えるわね。身体強化は簡単に自分の魔力を身に纏うイメージよ」
というのでなんとなくの感覚でやってみる。
なんだか力が強くなった気がする。試しに近くのテーブルを持ち上げてみる。
テーブル自体は軽いが、それでも結構大きいので両手でやっとではあるのだが……。
ひょいっと端っこを片手で持ち、持ち上げることが出来た。
ベニヤ板を持ち上げているような感覚である。こんなに軽いはずがない。身体強化出来ている証だろうか。
「すんげえ! オラもやる!」
テーブルを置き、推華が持とうとしたその瞬間。
推華が掴んだところが千切れた。手には握りつぶされたテーブルの破片。
推華はぽかんと立ち尽くす。
「なんつーパワーだべ!?!?」
「いや、豆腐千切るみたいに簡単に千切れたな……」
「身体強化は人によって変わるけど……。いや、木を簡単にへし折れるやつなんて私の世界でも指折りよ……」
推華はキッチンからフライパンを持ってきた。
「元々曲げることは出来たけんど……。今なら」
推華はフライパンを軽く曲げると、ぎゅっと圧縮していく。
推華の顔より大きかったフライパンは、砲丸投げの砲丸のようなサイズとなっていた。
仮にも鋼鉄のフライパン、曲げるだけならまだしも機械を使わずここまで圧縮する……。握力だけで人殺せるじゃねえか。こわっ……。
「オラの力は人に向けちゃいかん……」
「そう、ね。殺しかねないわ……」
アルタさんドン引きである。
「こほん。まぁ次はこんな魔法があるよってことで……。変身」
アルタさんの姿が変わっていく。
アルタさんは狼の姿になっていた。
「変身魔法よ。これは誰でも出来るけど習得まで時間がかかるわ。教えて欲しかったら結構かかることを……」
「変身ねぇ」
なんとなくイメージしてみると。
身体が変化していった。視点が低くなる。
「え……」
「出来た」
「なんで!? 見様見真似で出来るの!? 私ですら三年かかったのよ!?」
「黒猫だ」
良い毛並みをした黒猫の姿。
猫可愛いよな。変身を解いて人間に戻る。アルタさんは打ちひしがれていた。
あとは浮遊と転移だったか。浮遊はこういうイメージで……。
と、イメージするとやはり飛べた。
「教えてないのに浮遊までっ!」
「すげえなぁ、茜は!」
「だろ? こういうの昔から感覚で出来んだよな」
「天才じゃったか……!」
なるほどな。
一度使ったらコツとかわかってきた。魔力の使い方で色んなことが出来そうだ。
空を飛び、猫に変身する。魔法って面白いな……。こういう非日常的な体験はすごい。
喜びに満ち溢れていると、ぐううと誰かの腹の音がなる。
「……ご飯にするべ。まぁ簡単なものでいいべな」
そういって、炊き立てご飯と生卵、そして漬物が運ばれてきた。
私は卵をご飯に割り入れ、醤油を垂らす。
「何これ」
「卵かけご飯だべ。あ、異世界にはそういうのないか……」
「え、えぇ。卵を割ってご飯にかけるのね?」
見様見真似でアルタさんは卵をご飯にかける。
箸で混ぜ、黄金色に輝くご飯を恐る恐る口に運んでいた。
「……っ!」
「どうだか?」
「美味しい! 濃厚なコクがあるわね! 何杯でも食べれそう!」
「よかったよかった」
「あとこの黄色いものもぽりぽりして美味しいわ! ご飯が美味しい国なのね!」
「んだ。ご飯に関しちゃこの国はうるさいからな」
「まぁ……。北海道は基本どこのレストランも美味いしな」
黙々と食べ進める。
「アルタさんはこれからどーすんだ?」
「そうね……。とりあえず推華さんの家に置かせてもらえないかしら。帰る方法探していくから……」
「ん、まぁ、部屋は有り余っとるから構わんど〜。今日から賑やかになるなぁ」
推華はとても嬉しそうに笑った。




