ノボリベツの湯
ゆっくりと温泉に肩までつかる。
「はぁ~~……。極楽極楽」
「なにその極楽ってのは」
「異世界人……私たちは気持ちいいときにこれ言うことあるんだよ」
「そうなのね。じゃあ極楽……」
魔物の熊の討伐を終え、うち漏らしがないことを確認してゆっくりと登別の温泉に浸かっていた。
被害があった区域と温泉がある区域とは離れており、営業停止にはならずに済んだようだ。そして、魔物討伐の報酬ということで、今回の温泉旅行の宿代を警察の皆様が負担してくれることになった。安い報酬ではあるが、別に気にすることでもない。
ゆっくりと目をつむりながらくつろいでいると。
(アカネさん! 聞こえるっすか!)
脳内にヤマトの声が響き渡る。
「ヤマトもつれてくればよかったな」
「学校だから仕方ないべさ」
「そうね。学業は大事ですもの」
(聞こえてたら応答してくださいっす! メーデーメーデー!)
どうやら空耳じゃない。
(なんだよ)
(よかった! 聞こえるんすね)
(いや、なんで心の中で会話出来てんだよ)
(今日転校生が来て、その子がテレパシーを使えるみたいで! それの能力っす!)
(あぁ……)
スキルがある子なのかな。
(で? どーしたよ。スキルの実験か?)
(もあるんすけど、こっちでも熊の魔物が出たっす)
(は?)
私は思わず声が出てしまった。
「どーしたんだ? いきなり声出してよ」
「いや、眞峰町で熊の魔物が出たらしい」
「……マジ? やばくないそれ。戦える奴いないじゃない」
「てかなんでわかるのー?」
「ヤマトんとこにテレパシースキルを持った転校生が来て話しかけてきたんだよ。脳内に」
(一応アタシがなんとかしたんすけど情報だけ共有しておきたくて! 帰ったら調べてみませんか!)
(わかった)
そういって声が途切れてしまった。
「ヤマトがなんとかしたの? あの子やるわね」
「魔法が使えねーのによくやるなぁ」
「スキルがあるから戦えるわよ。まぁそれはいいとして。眞峰町に熊の魔物……。私たちがここノボリベツだったかしら。ここで戦ったのも熊の魔物よね」
「あぁ」
「もしかしたらさっきの魔物はワーベアーだったのかも」
アルタは魔物の心当たりがあるようだった。
「ワーベアー。転移魔法を覚えてしまった熊の魔物。同じ見た目をしているバーベアーがいて見分けつかないのよね……」
「そのワーベアーが眞峰町に転移したってわけか」
「もあるけど……。眞峰町だけじゃなく複数の個所に転移していたら……」
「そりゃやばい……」
出来ればそういう悪い予感は当たらないでほしいものだが……。
だがしかし、そうとなるとおちおち風呂にも入っていられない。私は急いで上がり、身体を拭き、コーヒー牛乳を飲みテレビをつけると。
『次のニュースです。大阪府堺市の路上に突如巨大な熊が現れ、人々を襲いましたが、勇者と名乗る男性が倒しました』
倒されていた。
『現場につないでおります。現場の佐々木さーん』
アインって探している勇者メンバーの一人じゃねえか。
現場に中継が映るが、剣を持っている人はいない。というか、野次馬と警察ばかりで勇者アインであろう人物は見つからなかった。
大きな熊の死体があるであろう場所はブルーシートがかぶせられており、中の様子はわからない。
「勇者アインは大阪か……。行ったことないな」
とりあえずアルタに報告だな。




