登別クマ騒動
異世界へ繋げるための方法も何もわからず、アルタの仲間たちの所在も何もわからず。6月に入った。
「田植えも終わったし……。あとはのんべんだらりとやれるべ」
「だな。田植えもまぁ……魔法ですぐだったしな」
「浮遊魔法とか便利だべ〜」
あとは草刈りと後片付けぐらいで、特に急いでやることはほとんどないらしい。
「稲見とらんきゃいけねーから日帰りになっけど温泉でもいくか?」
「いいわね。どこいく?」
「日帰りじゃなくても転移魔法使えば泊まれるぞ」
「お、そうか。ならどこでもいけるな」
「温泉かー。箱根、熱海、下呂、草津、別府、登別……日本って温泉地沢山あるからね〜」
どこへ行こうか。
どうせなら遠いところ行きたいが、運転は推華任せになってしまう。
「推華、お前が運転するしかないし、お前の好きなとこでいいよ」
「んだか? ならオラ……登別行きたい!」
「っし。登別だな。行こう」
ということで温泉へ向かうことになった。
登別といえば温泉もそうなのだが、クマ牧場というものがある。北海道民にはお馴染みのCMソングもあり、一度は聞いたことがある。
車に乗り込もうとしたとき、静かな田舎町に似合わないサイレンの音が鳴り響く。
救急車……のサイレンではないようだった。赤いパトランプを灯しながら、北海道警察と書かれたパトカーが複数台家の前に泊まる。
複数の警察官が降りてきた。
「西浦 推華様の自宅で間違いないでしょうか」
「え、そーですけんども……」
「至急手伝って頂きたいことがござきまして。お力添えをお願いいただけませんか?」
「どーしたんすか?」
「登別の方でこの世界の者ではなさそうな生物が確認されました。自衛隊の皆さんが防衛してくれておりますが……砲弾も効かないようで」
「登別……」
ちょうど私たちが向かおうとしていたところなんですけども。
「わかりました。オラたちもちょうど登別に旅行に行こうかと思っとったんです」
「そ、そうなのですね。ではパトカーにお乗りください! 急いで行くので!」
「了解です」
私たちはそれぞれパトカーに乗る。
なんというか、すごく新鮮な気分だ。特に悪いこともしていないのだが、なんか……。
「なんか犯罪犯して連行されてる気分」
「複雑ですよね。申し訳ございません」
「どういう魔物ですか?」
「熊のような魔物で……」
「熊」
登別だからだろうか。
サイレンを鳴らしながら、車をかき分けて進んで行く。法律なんて関係ないと言わんばかりに、特権のような感じで突き進んで行く。
「もう少し速い移動手段があればいいのですが……」
「なら全市町村の警察署に一度私が訪れたら楽ですよ」
「なぜ?」
「転移魔法って言って、ワープ出来るんです。一度行った場所に」
「うわ、便利……」
だがそれでも結構時間がかかる。急いでも1ヶ月は余裕でかかるのではないだろうか。
現在、もはや石狩辺りまでついていた。信号など無視できるものは無視して進んで行く。
「こちら高田、こちら高田。もう少しで熱海さんが現着!」
登別に入る。
自衛隊の車が停まっている奥に、ものすごいデカい熊が暴れていた。
「ハイドロポンプ!」
勢いよく水を放つ。
図体のでかいクマを貫いた。
「これ一体だけですか?」
「いえ、まだ奥に多数!」
「了解」
私は悪へ突き進んで行く。
民家が崩れ、死体を貪り食っている熊の魔物。体格は民家くらいの大きさである。
まず日本では見ない熊だ。グリズリーとかそっちの類。
「なんでこんな熊生物がいるの?」
「知らないわよ。やるしかないでしょ」
「……誰かがこの世界に魔物を送り込んでるのかしら」
「どーだべか。でも考えんのはあとにすんべ」
推華は熊を殴り飛ばした。
熊の爪が私の頭に当たる。サクラが私に回復魔法をかけ、傷が癒えていく。
「いっつぅー……」
死ぬかと思った。




