新島さくらという存在
稚内警察署会議室にて、たくさんのファイルが積まれる。
これらが全て稚内で起きた神隠し事件の捜査資料だという。
「本来ならば一般の方に見せるわけにはいかないのですが……。異世界が関わっているなら話は別になりますからね」
ということらしい。
とりあえず私は一つ手に取り調べてみる。
「行方不明者は新島さくら、16歳高校一年生……。出身は東京都で家族旅行で稚内に来た際に失踪……」
事件が起きたのは2016年と9年ほど前。私と同い年の女子高生。
可愛らしい女の子だ。
「あ、ニージマ・サクラじゃない」
「……知ってるの?」
「私が師匠から魔法を教わってる時に師匠が拾ってきた子よ! 回復魔法が得意でね」
「…………」
モロ異世界行ってんじゃねぇか!
「……つまりこの新島さくらさんは異世界へ行っていると?」
「……あっ、そうね。たしかに名前も同じだし見た目も同じだからそうだと思うわ!」
何らかのキッカケで異世界へ転移してしまった。
ここに来たことでわかった。確かに異世界へ行く方法は存在している。
その転移の仕方がわかればよかったが……。流石に無理だろう。
「ほんっとに異世界に転移した事件なんだなぁ」
「問題はそれをどうやって引き起こすか、よね。これも多分偶発したもの。アルタさんを異世界へ帰すにはこれを意図的にやらないとならない」
「でもこの資料にはそういうの載ってなさそうっすねー。まぁ異世界なんて想像もしてないだろうから仕方ねーっすけど」
ま、そういうことがあったと分かればいい。あとはやり方を模索していくだけで終わるだろう。
が、やり方を模索するにしても私たちはまだ魔法に触れたてで何もわからない。魔法とはなんなのかすら感覚でしか掴めていない。一気に空間転移までのステージに押し上がるのは無理だ。
「神隠し事件は日本限定なのか?」
「え、どーなんすかね? 少なくともネットでは日本の記事しかなかったっす!」
「それに……。神隠し事件がすべて異世界に行ったとも限らないわ。ね?」
「そうですね。日本各地で起こる失踪事件……。数カ月後に死体が発見されている場合もありますし、関連性がない……というのもあります」
「稚内でのは偶然合致したってことか」
アルタが知っていたことがデカいな。
「アルタ、さくらって女の子と知り合いなんだべ? アルタがここに来る前はなにしてたんだ?」
「え? 勇者パーティで一緒に魔王討伐に行ってたわ」
「……アルタがここに来た理由は?」
「魔王の最後っ屁で飛ばされて……」
「その場にいたのはアルタさんだけなんすか!?」
「いや、みんないたけど……」
「勇者パーティは何人?」
「私、戦士のルドー、勇者のアイン、僧侶のサクラで四人」
待てよ。そいつら全員食らってるってことはサクラとかは帰ってきてるんじゃないか?
警察の人をチラリと見ると、私たちと同じ考えに思い至ったようだ。
「……とりあえず探してみましょう! 全員飛ばされた位置はバラバラですよね? 会った場所に他に人がいたとかは」
「ないべ。オラが車で轢いちまったから現場のことはよく覚えてる」
アルタの他のメンバーも集めて異世界へ返さなくちゃならないのか。
「大変です! 宗谷岬の近くの崖の下に女性が倒れているとの通報が……」




