惨事
そんなこんなで稚内市到着!
銀行強盗に巻き込まれたりと災難な目にはあったが。
「それで? 現場は?」
「ええっと……。神隠し事件があったのは宗谷岬らしいっす」
宗谷岬に車で向かう。
日本最北端の地で起きた神隠し事件。アルタは車から降りて、周囲を探索していた。
私たちも何かしらヒントがないか探してはみるのだが……。
「魔法使ったら魔力とか付着してんのかね? 私らそれわからんよな」
「そうね。魔力があるかないかって判別できないし……」
「その神隠し事件って何年前に起きとるんだ?」
「えっと……2018年だから……」
「7年前か。期待薄だな」
なんのヒントもないだろう。
「ふぅ〜、さみぃ」
北風が吹きつけてくる。
人がいる前で魔法を使って身体を温めるわけにもいかず、ただただ上着だけで寒さを我慢していた。
あいにくの曇り空、太陽の光もない。寒いのは当然か。
「なにかわかった?」
「いや……。ここじゃないのかも。魔力はたしかに微弱ながらに感じるんだけれど……」
「感じるのか……」
「何かしら関わってると見て間違いはなさそうね」
「結構な年数が経ってるからもうほとんどないわ。無理無理」
「そうっすか……」
「そんなしょんぼりすんなよ。とりあえずそういうのがあるって分かっただけで来た価値はある。宿に泊まるんだろ? さっさと行こうぜ」
「んだな。温泉で体温めるか」
車に乗り込もうとしたそのとき。
突然、地震のような振動が襲いかかった。周囲の観光客の人もなんだ!?と地面に捕まり騒ぎ出している。
「地震……?」
「結構揺れとるべ!」
揺れがおさまった。
だがしかし、それと同時に観光客が騒ぎ出したのだった。
岬のほうから、何かが這い上がってきていた。
緑色の皮膚をして、棍棒を持った鬼のようなもの。人間に襲いかかり、棍棒で人間を殺しまわっていた。
「きゃああああああ!?!?」
「な、なにあの化け物!」
「ば、化け物! これでも食らえ!」
男が殴りかかるがその化け物は微動だにしなかった。
にちゃりと笑い、そのまま男の腕を引きちぎる。
「う、うわぁあああああああ!!」
「なんだよあの化け物!」
「ゴブリン……」
「あれがゴブリンか!?」
「うちらの世界の魔物よ……。なんでここにいるの?」
「とりあえずなんとかしねえと! 魔法がある! 魔法で戦うしかねぇ!」
「そうね。でも数が多いわ!」
「私ら全員でやるしかねえだろ! ヤマトは車の中で待ってろ」
「う、うっす!」
魔法が使えないだなんだの言ってる場合じゃない。
私は火の玉をゴブリン目掛けて放つ。ゴブリンは燃えて倒れた。
「オラは身体強化しか使えないからなぁ! おりゃりゃりゃ!!」
ゴブリンの頭を掴んでは引きちぎっていく。
グロい。パワータイプの戦い方である。
「茜危ない!」
「あ?」
ゴブリンに棍棒で頭をぶん殴られた。
銃弾ですら効かなかった私の肌に傷がつく。魔力で防御してなきゃ即死だったな。
衝撃で口の中を切ってしまう。血をぺっと吐き出した。
「いい度胸じゃねーかコラ。ぶっ殺してやるよ」
炎の出力を最大まで高める。
炎の渦が目の前のゴブリンの群れを包み込んだ。ゴブリンは苦しみ悶えて死んでいく。
なんとか、ゴブリンを倒すことが出来たようだ。ゴブリンの残党の様子は確認できず、周囲には死体が散らばっている。
「一体なんなんだよコイツら。なんでアルタだけじゃなく魔物までこっちの世界に来てんだ」
「わからない……」
「もう来ないわよね? 流石にヘトヘト……」
「茜、怪我は大丈夫なんか?」
「平気だよ。別にこんくらいの怪我いつでもしてたし」
ゴブリンたちはなんとかなった……。けどここに現れるってことはどこに現れてもおかしくないよな。
私たちが偶然いたからいいが、これが全国各地で起きたら? 銃火器の類はコイツらに効くのか?
「あー、細かいこと考えんのは後だ……。宿に行こうぜ。魔力がほとんどねえ」
「私も……」
「オラはまだまだあるど〜」
「とりあえず休みましょう。この岬の崖……多分この下に原因があるから見てくるわ」
浮遊魔法で下に降りていくアルタ。
数分後上がってきたアルタはなにか納得したような顔をしていた。
「原因がわかったわ」
「マジ?」
「私たちがここに来たのが原因みたい」
「そうなの?」
「下に変な魔法陣があった。魔力を持つ私たちに反応して発動したみたい。消してきたけど……。あれは空間転移の類いだと思う。あれが多分神隠しに関係してるわね」
「そう……。じゃあもうないってことだな」
「撃ち漏らしさえなければ」
そんな怖いこと言うなよ。
撃ち漏らしたら大惨事だろうが。人間なんて容易く殺されるっていうのに。




