田舎を狙うなよ
「やべ財布に金入ってない。ちょっとおろしてきていい?」
稚内に行く道中、財布を覗き込むとすっからかんだった。
スマホで決済も出来るのだが、そういう支払いができない店もあるので現金を持っておくに越したことはない。
幸いなことに、宝くじの当選金額が入った銀行の支店が今走っている町の中にあるのでそこに寄ってもらうことにした。
ATMに向かう。
ATMにズラリと人が並んでいた。平日昼間だというのにここまで混むのか。
窓口でおろすというのもいいが、それもそれで面倒臭い。
そう思っていた時だった。
「中に入れ」
私の頭に何かが突きつけられていた……。
私の目の前には黒ずくめの男たちがいる。
手には拳銃を持っており、受付の人を銃で脅して金を要求していた。
銀行強盗……。漫画とかでよく見る奴だ!
……なんで私銀行強盗事件に巻き込まれてんの?
手は縛られ、中にいたお客さんともども人質になってしまっていた。
「…………」
「早くしろ。遅れるごとに人質一人ずつ殺していくぜ?」
「は、はは、はいっ!」
魔法を使えば何とかなるだろう。
身体強化魔法で体を強化すれば銃弾は効かないだろうし、制圧は人質にさえ気をつけていれば何とかなると思う。
でも使えないんだよな……。別の意味で騒ぎになるのは間違いないので。
「あ、あの……。私が一千万くらい差し上げますので解放してくれませんか」
「断る」
なんでだよ。
一千万なんて大金だろうが。私のあげてすぐ逃げたら捕まりもしないかもしれないぞ。
ってか、こんな地方の銀行狙うなよ。一千万はあるだろうけどこんなど田舎よりもっと大都会の銀行の方が待ってるぞ。
「早いとこ稚内いきてえのに……」
仕方ない。
私は立ち上がる。
「お、おい!」
「うるせえよ」
回し蹴りを男に喰らわせた。
その瞬間、他の仲間から銃弾が飛んでくる。が、私の頭を貫くことはなく、ポトリと地面に落ちた。
衝撃こそあるが死ぬほど痛くはないな。
「は?」
「私の頑丈さ舐めんなよ」
「いや、ヘッドショット……」
「死ねやオラァァ!!!」
もう一人の仲間も蹴り飛ばした。
男二人は伸びた。手を挙げていた銀行の人は恐る恐る近づき、銃を遠くへ蹴り飛ばす。
「君すごいね」
「…………じゃあ私は行くんで」
「いや、警察が来るからとりあえずこの場に……」
「友達待たせてるんですが……」
「とりあえずお友達にも事情を話しましょう。わかってくれます」
「……はい」
何でこんな目に遭うんだよ。こんな田舎の街で銀行強盗に出会うなんて思ってもなかったよ。
私はとりあえず推華に電話して事情を話すと、推華ははは……と苦笑い。
警察が到着し、伸びている犯人を捕らえ、私ともども事情を聞かれる。
さて、どうしよう。
必要最低限しか魔法は使ってないが……。頭に銃弾喰らっておいて無傷ですっていうのは流石に言い訳できないよな。
「この方が有無を言わさず強盗たちを蹴散らしたんですよ! とてもすごい体捌きで……!」
「そうなんですか?」
「え、えぇ。まぁ」
「失礼ですがなにか武道の方されていたり……?」
「中学時代に空手を少し齧った程度です」
「やっぱり! 熱海さん!」
「あ? なんで私の名前知ってんだよ」
「僕ですよ。中学時代に同級生だった猪俣 雷太ですよ!」
「雷太……。あーー、泣き虫雷太?」
「それは思い出さなくていいです」
私の同級生の猪俣 雷太が警察官としてやってきたのだった。
「……なんでここにいんの?」
「警察学校を卒業して配属になったのがここなんです」
「へえ……」
「なるべく知り合いがいない田舎に希望を出したんですけど……。まさか知り合いがいるとは」
「私もビックリだよ」
雷太になんとか誤魔化してもらうしかない……。




