㉕
収穫祭から一年の月日が過ぎようとしていた。
ランルーサは種まきと収穫時期限定の日の出前のふた時の間の見張りの塔での仕事が楽しくて仕方がなかった。
というのも今まで見ることの出来なかった峠の向こうの大きな扉の先が塔の最上階に上れば天気がいい日には日の出と供に見ることができるからだった。
この塔は遥か昔からあり、人々はこの塔から見える砂の動きで作物の作る時期などを見極め、砂嵐の時期を避け今の生活を維持してきたのだ。
「ねえダーイ・・・どうしてこの塔には自由に誰もが毎日登っちゃいけないのかしら?」
「しらねえよ、昔っから決まってることみてえだぜ、村長にでも聞いたらわかるんじゃねえのか? 村一番の年寄りなんだし」
「いやよ、私村長さん苦手なんだもの、何か知らないけど、あの村長さんいつも私の顔を見ると、ぶつぶつこごとを言うのよ、そして決まって最後に、いい加減巫女になる決心はついたかって毎回同じ事を言うのよ。私は巫女になるつもりはないって何度いっても聞いてくれないのよ。本当に嫌にやっちゃうわよ」
「なんだルーサは知らねえのか? 巫女になったら夫をもつ事は出来きないけど、一生生活にはこまらねえし、きれいな服やおいしい食べ物がいつもあるらしいぜ、一生土にまみれて生活するよりよっぽどいいってなりたいっていう女が多いらしいぜ、まっ簡単に誰もがなれねえらしいけどな」
「巫女なんて私は絶対嫌だわ。巫女なんてなりたい人間になってもらえばいいのに、なったくいい迷惑だわ」
「巫女には血筋や神に選ばれている人間がなると定められているなんてさ、私は大地や風を感じながら生きるほうが好きだわ」
ランルーサは塔の窓から見える砂丘に通じている門を見つめながら言った。
「ねえ、あそこの門からいつもではいりしている騎士団ってどうして行きは何も持っていないのに、帰りは大きな荷物をさげてくるのかしら」
「そりゃあ、砂漠にはいろいろな昔の遺跡が埋まってるっておじいが言ってたじゃねえか、きっと何か都で役に立ちそうな何かを見つけてきているんじゃねえのか?」
ダーイはポケットから大きなりんごを出してかじりながら言った。
「それより、そろそろ砂嵐が近いんじゃなかったか? ラシグがいってたぜ、今回の砂嵐が通り過ぎたら種まきだからしっかり観測しろって」
「そうね、でも昔の人はすごいわね、こんな簡単な計測器で砂嵐のタイミングがわかるなんて」
「そうだよな、砂嵐が来るのは風の向きが変わるらしいぜ、それも一番先に変わるのがこの塔のこの場所だってんだから、ここで風向きが変われば三日後には地上に砂嵐が舞い降りるんだから、神様も正確だよな」
二人はこの塔にくるようになってから手渡されたジールで書かれた文字が円形に記され、真ん中に針のような羅針盤がついた計測器を眺めながら溜息をついた。




