㉓
村の中心部の広場では一年の収穫を祝う収穫祭がお昼前から盛大に行われていた。
村中が活気づき、多くの村や町から人々がこの村に集まってきていた。
村の中心の広場には多くの屋台が並べられ、
さまざまなものが売り買いされていた。
ランルーサもお昼前にその一角にトービの煮物を硬いクコルの実をくり貫いた手作りの容器の中に入れ、行きかう人々に家意欲振舞っていた。
「おにいさん、どうだい、トービ飲んでいかないか? 今年のトービは最高だよ。トービの干し物もあるよ、こっちは持ってければいつでも食べられるよ」
「おお。ランルーサ、今年も買いにきたよ。どうだい今年のトービの出来は?」
「あら、シーラじゃない、久しぶりね。今年は最高のできだよ。おばさんの分はちゃんと取ってあるよ。でもこれ飲んでみてよ、今年は私が仕込んだんだよ。おばさんのトービの煮物には負けるけど」
ランルーサは屋台の後ろに収穫していたトービの束の一束をシーラに手渡すと釜の中のトービの煮物を差し出した。シーラはトービを受け取ると、背中のかごにトービを詰め込むと代金を支払いランルーサからトービの煮物を受け取り口に運んだ。
「どれいっぱいいただくかね。うん、おいしいよランルーサ、腕をあげたね。このままじゃ、私もそろそろ引退だね。今年はトービの煮物はランルーサが一番だね。ランルーサ、これでいつでも嫁にいけるってもんだ。ダーイ、あんたも早く一人前の風使いにおなりよ、ランルーサを誰かにとられちまうよ」
「なっ何いってんだよシーラ。俺とランルーサはそんなんじゃ…」
「そっそうよ。私達は姉弟みたいなもんなんだから、もう冗談はやめてよね」
シーラの言葉で二人は真っ赤になりながら慌てた様子で否定した。
そんな様子にシーラは二人の肩をたたくと笑いながらさって行った。
「まったく、シーラったら、私達はそんなじゃないわよね。私はまだ十七よ、嫁なんて」
「でもよ…ランルーサ、早いやつはそろそろ嫁にいく奴もいるぜ。貰い手がなかったらどうするんだ?」
「何いってるのよ、こんないい女、周りがほっとくわけないじゃない。私にまだその気が無いだけよ。みてなさい、私がその気になったらすぐにだって相手ぐらいできるんだから」
ランルーサはむきになってダーイを突き飛ばしながらそっぼをむき何もなかったかのようにまた行きかう人々に向って威勢のいい掛け声をかけ始めた。
ランルーサとダーイの店は予定時間よりは早く売り切れてしまい、
二人はそうそうそう店じまいし、昼過ぎから始まる収穫祭最大のイベント会場に顔を出した。
舞台上では多くの人達が自慢の歌や芸を披露していた。そしてランルーサの番が回ってきた。
ランルーサは大きく深呼吸をすると、
体をすっぽり覆い隠すかのようなだぼっとした白い服を着て、
両手を首だけを出し髪は白い布で覆い隠していた。
目だけをだして顔中に綿の木から取れた綿をつなぎ合わしたまるで白いひげをつけ、
最後に大きな木の杖を持つダーイに手で合図を送った。
すると、ランルーサの後ろで立っていたダーイがポケットから緑の大きなビンダルの木の葉っぱを取り出すと、口のところに持って行き、ダーイがいつも牧場で吹いているメロディーを奏で始めた。
するとランルーサは腰をかがめ、まるで老人が歩くかのような足取りでゆっくりステージの真ん中に置かれていた大きな白い砂の入った袋の前まで歩み寄った。
そして深呼吸をすると、その砂を足元に一面に引き詰められていたシーツの上にばら撒き始めた。
会場に集まった人々がランルーサが何を始めるのか固唾をのんで見守っていた。




