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「これは…連れの者から借りたものなのです。連れというのは騎士団に昔所属していたようで、旅をするならこの格好が一番楽だというものですから、その者にかりただけなのです。ですからわたしは都で物売りをしているただの商人でございますよ。実はこの谷に有名な料理が数多くあると聞きまして、収穫祭の日にそれらの料理が一同に見られるとお聞きしたものですから、都でもだせないかと視察にきたのです。ただ、日にちを一日間違えたようですね」
ジルダスはそう言うと、にっこりと笑顔になって二人に頭を下げた。
その様子をみたダーイは面白くない様子でジルダスのいる方とは反対側を向きムスッとした様子で腰掛けた。
ランルーサはそれをやれやれといった様子で大きくため息をつくとジルダスに向って言った。
「そうだったのですね。それならそうだわ、嵐が止んだら今日の収穫祭の会場になる場所を案内しましょうか?」
「なら俺も行くよ」
ランルーサの言葉にダーイがすかさず言うと、ランルーサは火にかけたままのトービを指差しながらダーイに向って言った。
「何言っているのよ、あんたは私の変わりにあれを見ていて頂戴」
「何いっているんだよ、トービを煮るのはランルーサの仕事だろ! 俺は関係ないからな、俺はかあちゃんにおじいが戻るまでランルーサについていてやれって頼まれたからここにいるだけだ。お前のとこのトービの火の番をしにきたんじゃねえからな」
「何よもう! 役立たずね。私の心配ならご無用よ。火の番をしてくれないならさっさと自分の家に戻りなさいよ」
二人が言い合いを始めるを見たジルダスは思わず噴出してしまった。
それに気付いた二人は真っ赤になりながらお互いの腰小突きあった。
「これは失礼しました。いえ、お二方は仲がよろしいのですね。わたしにはそのように喧嘩を出来る友はおりませんので、うらやましいです。わたしの事はどうかご心配くださいませんよう。連れと合流できましたら、今夜の宿泊先はわかるはずですので、嵐も止んだようですし、わたしは少し村の中を捜してみることにいたします。朝食ありがとうございました。何分何も持ち合わしておりませんので、助けていただいたお礼にわたしのこの腕輪を受け取りくださいませ。都に来ることがございましたら訪ねてきてください。この腕輪を都の誰かに見せればほとんどの者ならわたしのいる場所を教えてくれるはずですので」
そう言うと、ジルダスは自分の右腕にしていた金の腕輪の一つ抜き取ると机の上に置き二人に頭をさげ、出て行こうとした。




