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家では、朝食が終る頃になると、家の外では激しいうなり声のような風が音たてて地上に積もっていた砂を空へと巻き上げ始めていた。
それはまるで頭上で何かに吸い取られているかのように渦を巻き、砂だけを絡めとりながら空の彼方へ砂は消えていった。
その様子を窓ごしに眺めていたランルーサにジルダスは席から立ち上がり彼女に近付くと話かけた。
「この地方は本当に不思議な現象が起きるのですね」
「都では砂は舞い降りてこないのですか?」
「そうですね、砂など舞い降りたりはしませんね。都はルーアルーアのちょうど中央にあたりますからね。ここのようにあのデル山を越えれば外界といった環境ではありませんから、外界の砂も都まではやってはきません。この土地の人達は都に移り住もうとは考えないのですか? 都に住めば砂の恐怖に恐れて生きなくても住むでしょう。それに、あのような砂がたびたび降ってくるようでは大変でしょう」
「そうね、でもだいたい決まった日の夜だからそれさえ気をつけていれば平気よ。昨夜は私達牧場で転寝しちゃっていて帰るのが遅れちゃったんだけどね。それに、私あの砂には何か理由があるような気がするのよね」
「砂嵐に理由ですか?」
「ええ、この谷以外に住んでいる人はここに住むのを恐れているようだけど、私達は平気よ。あの砂は秋の訪れを知らせる大切な嵐なのよ。それにあの砂には神様がこの土地に新月の夜にだけ砂を巻き、舞い降りた砂は翌朝必ず再び吸い上げてしまうのには何か理由があるような気がしてならないのよ。きっと神様はあの砂は私達に何かを伝えようとしているのよ。まっ都の人にいってもわからないでしょうね」
ランルーサは暖炉のなべのふたを開け、中の様子を伺いながら言った。
ジルダスはランルーサの言葉に一瞬顔色を変えたがすぐに元の表情に戻るとランルーサを見つめながら話始めた。
「あの砂は神からの戒告なのではありませんか? 都ではまだあの砂の被害はございませんが、外界の砂の被害はこの国の領域を確実に狭めてきているという噂があります。あんな砂が神の使いなどと、我々があの外界の砂のことを悪魔の使いと言っています。人間は滅びる運命なんだと神が言っているのではありませんか? その為にはなんとしても我々の存在を神に知らしめなければ、我々には時間が残されていないのです」
「都の人はそんなことを考えているんだ…私達とは違うわね。私はこの国の人達はみんな同じ考えなんだと思ってたわ。砂に囲まれたこの限られた土地で生を受けた私達緑の民は砂と共存しながらこれからも生きる道を探すように神様がおっしゃっていると私は思うの。だからこの谷の人達は収穫祭をあえて新月の翌日って決めているのよ。それは、神に感謝する日だから、私達の生きる場所を守り続けてくださっている神様に感謝して、ここで未来に続く営みを続けているのよ。私達は砂の恐怖に怯えて生きてなんかいないわ」
ランルーサの言葉に一瞬再び険しい表情をしたジルダスの態度を黙って二人の会話を聞いていたダーイは見逃さなかった。




