⑪
「ダーイ、お前はもう家に戻りなさい」
ジンダーヌ爺さんはベッドに横たえている男に布団をかけながら心配そうに後ろから覗き込んでいるダーイに向って言った。
二人は砂嵐の中どうにか倒れていた旅人を担いで家に戻ることができていたのだ。
「なあおじい、この人村の人間じゃねえよな。もしかして都から来たのかな?」
「よけいな詮索はせんほうがええ、見たところどこも怪我をしている様子もなさそうだし、明日になれば意識が戻るじゃろう。すまんがアイリに明日の朝この人が食べられそうなスープか何か持ってきてくれるように頼んでおいてくれるか? わしは夜が明け次第、おさの所に言ってくるから。ランルーサ、お前はそれまで先に少し休んでおきなさい。わしが家を出るとき起こすからこの人をみていてくれ。わかったな、わかったら二人共もう部屋からでなさい」
「なあ、そんなことをしたらおじいが寝れないんじゃねえか? そうだ、俺が朝までここで見ているからよ、おじいは俺のベッドで寝てくれよ。おさの所はここからじゃあ村の反対方向だし、夜明け頃はまだ砂が巻き上がっていなくて歩きづらいぜきっと。なんだったら俺がおさの所に行ったっていいんだぜ」
「ダーイが行くなら私も行くわ。外の砂嵐の様子じゃあ、夜明け頃家をでるのは大変よ。おじい一人で行くのは心配だわ」
「二人とも余計な心配はせんでもええ、こんな砂嵐、外界に比べたらなんでもないわ。それに日が昇る頃には砂は全て上空に上がるだろう。この荒れようなら砂ぞりが使えるじゃろう。風が止んで砂が積もっている夜明け前の方がおさのいる村はずれに行くには早いからな。帰りは昼頃になっていると思うがお前さんらは気にせず夜の祭りにだす料理の仕込みに入っていてくれ、今年はトービの出来は上出来だからな、下準備は済ませてあるから、後は火にかけるだけじゃ」
「わかったわおじい、仕込みは私に任せて、おじい気をつけね。ダーイ行きましょ。おじいおやすみさい」
「だっだけどよ~」
ランルーサは渋るダーイの腕を無理やり引っ張りながらおじいの部屋をでていった。
ジンダーヌは二人が部屋を出て行ったのを確認すると助けた男が身につけていた剣を手にとり険しい顔つきになった。
「都の王家のお人がこの村にいったいなんの用が…まさか都で何かあったのでは…ランルーサを呼びにきたので無ければよいが…」
ジンダーヌは何か不吉な事が起こるのでないかとベッドに横たわっているランルーサの以前の髪の色と同じ金色の長い髪をした長身の男の顔をじっと見つめた。




