⑩
どれだけ時が過ぎたのだろうか、気が付くともう周りは薄暗くなり始めていた。
「ダーイ大変! 早く家に戻らなきゃ。今夜は新月じゃなかったかしら? 早く戻らなきゃ砂嵐に巻き込まれちゃうわ」
「やべー寝ちまっていたのか…そうだ、俺おじいに砂嵐がくるからランルーサを捜してくるように言われてここにきたんだった」
ダーイもランルーサの言葉に飛び起きると二人は慌てて村に続いている道を駆け出した。
ようやく二人が村の近くまで戻ってきた頃には砂まじりの風が吹き始めていて目が開けていられないほどになっていた。
ダ―イは激しい風でランルーサが飛ばされえないように彼女の前を歩きながら左手で彼女の手をしっかりつ掴み、右手で自分のマントで口を覆いながら村を目指していた。
「ランルーサ、大丈夫か? 村が見えてきた。もう少しだ」
「ええ、私なら大丈夫よ。でもうっかりしていたわね。あそこで寝ちゃうなんて」
「仕方ないさ、お互いここ数日は収穫で忙しかったんだから」
「そういえば明日から収穫祭だろう。ランルーサは今年はどんな姿で踊るんだ?」
「ふふふっ明日のお楽しみ。あっ今年はあなたの衣装もおば様に頼んで作ってもらっているから覚悟しなさいよ。今年は去年のように口実をつけて逃げようなんて考えないほうがいいわよ」
ランルーサはショールで顔を覆いながら声を大きくしながらダーイに言った。
「なんだってぇ~? よく聞こえなかったなあ…そうだ、明日俺、親父に頼まれて森に行く用事があったんだ」
ダーイはわざと聞こえない振りをしながらとぼけてみせた。
「うそおっしゃいダーイ! 逃げようたってそうは行かないんだから。私十日も前からおじ様にもお願いしておいたんだから、収穫祭の日はダーイを一日私に貸してって。だから逃げられないわよ」
「ちっ親父のやつ余計なことを…ランルーサいっとくけど、俺はもうぜったい女の格好は嫌だぜ! 二年前は女の格好をさせられて村のやつらに長いことからかわれたんだからな」
「わかっているわよ、今年は任せなさい。それはそうと…ねえ、あれ人じゃない? どうかしたのかしらね」
ランルーサはふと村の入り口の大きな木の下の辺りになにやら人らしい形があることに気がついた。いつからそこにいたのかは定かではないが体の半分がすでに砂に埋もれていた。
「本当だ! だけど村の人間じゃなさそうだぜ。こんな夜に出歩くなって普通の人間はしないからな。何かトラブルでも巻き込まれたのかな? どうする? 誰か人を呼んでくるか?」
「そうね…でも呼んでいる間にあそこじゃあ飛ばされちゃうか砂に埋もれて息が出来なくなっちゃうわ。もしかしたら怪我をしていて動けないのかもしれないし、見に行ってみましょうよ」
ランルーサはそう言うと、
ダーイも頷き半分砂に埋もれている人影に向って進路を変え吹きすさぶ砂嵐の中を倒れている人物の方に歩きだした。




