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キルト  作者: カシミア
前編
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18/20

04.一次試験開始-3

*




 複数の弾が、マシンガンのように放たれる技――鋼砲(ガンズ・メタル)。鋼属性が扱える中級攻撃術で、生身で当たれば命を失くす程の殺傷能力を持つ。だけど、軌道が読みやすい、真っ直ぐにしか飛ばない弾を避けるのは容易く、シノの表情に焦りの色は浮かんでいなかった。


 丸腰同然の装備で、鋼の雨が降り注ぐ中、確実に距離を縮めていく。その無駄のない動きは、見ている者を惹きつけ、興味無さげに見ていた受験者達は目を丸くしていた。




「やはり……生身はキツいな」




 余裕綽々の発言をもらすシノに、クレヴァーは激高し表情を歪める。怒りの感情と比例するかのように、鋼の弾は更に大きくそして早さを増していったが――それでもシノは冷静に軌道を見極め、魔力で強化した三棍棒で、いくつかの銃弾を打ち返す。




「くっ……鋼の盾(メタシルド)!」




 予想だにしない反撃にクレヴァーは攻撃の手が止め、円盤の鋼でそれを防いだ。




「ほう、防御術まで取得しておったか」




 シノにとってはまたとない攻撃のチャンス。だが、彼は攻撃するでも距離を縮めるでもなく、その場でじっと相手の出方を伺っていた。その余裕すら感じられる態度は、クレヴァーの怒りを買うには十分で、彼は勢い任せに右手を胸元に当てた。シノの紫眼が瞬く。




「まさか……」


「朝星球(メイス・フレイル)!」




 術者の心を形にした具現武器――別名、心武(しんぶ)が彼の手に現れた瞬間。シノは思わず後退し、クレヴァーは満足げな笑みを浮かべた。上級魔術に匹敵する強度を誇る武器が、モーニングスターの鉄球部分が勢い良く放たれる。




「……くっ」




 魔力で強化しただけの三混棒では、術者の心と密接に繋がりあった武器には敵わない。シノは、飛んでくる棘付鉄球をバック転で避け、空中で苦内を投げつけた。だが、クレヴァーはそれを避けながら前進し、シノが地に足をつく前に飛び蹴りを食らわせる。


 遠距離攻撃に頼っていた為、基礎体力は高くないと踏んでいた誤算。とっさに左腕で受け止め致命傷には至らなかったが、シノは思いっきり蹴り飛ばされた。




「……っ、わからないな」


「何っ?」


「魔力コントロールが高くなければ、具現武器は精製出来ない。お前の技術では――」


「っその減らず口も! 時期にきけなくしてやる……!」




 未だ空中にいるシノ目がけて、飛ばす刺付き鉄球。身動きのとれない空中ではまともに食らうしかないのに、シノは右手を胸元に当てたまま口角を上げるだけだった。


 何で魔術を使わないんだ、と叫ぶ蓮の声が聞こえる。その声に釣られ、ふと視聴席を見上げると、口を開けたままのキルトと目が合った。


 瞬間――鋼鉄(こうてつ)の武器が彼の身体に直撃する。




「シノっ!!」


「――っ」




 魔術対策をしている、頑丈で固い壁に叩きつけられたシノは、ズルズルとその場に崩れ落ちた。


会場が揺れるような衝撃音がしたのである。無事でいられるはずがない、のだが――




「やはり、その具現武器……不完全な代物だったな」




良くて全身骨折と思われたシノには、傷1つついておらず、何事もなかったかのように服についた汚れを払い落としていた。


 会場がざわつき、クレヴァーは顔面蒼白になる。




「な、んで……魔術使ってもないアンタが無傷なんだよ」


「使ってない、ね。そう見えたなら、それでもいい」




 シノは、“弓掛(ゆかげ)をつけた右手”を見せびらかすように掲げ、挑発気味にクレヴァーを見据えた。 具現武器の類(たぐい)なのだが、それに気づく者はほとんどいない。




「全力で来い。私にかすり傷を負わせたければ、な」

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