04.一次試験開始-3
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複数の弾が、マシンガンのように放たれる技――鋼砲。鋼属性が扱える中級攻撃術で、生身で当たれば命を失くす程の殺傷能力を持つ。だけど、軌道が読みやすい、真っ直ぐにしか飛ばない弾を避けるのは容易く、シノの表情に焦りの色は浮かんでいなかった。
丸腰同然の装備で、鋼の雨が降り注ぐ中、確実に距離を縮めていく。その無駄のない動きは、見ている者を惹きつけ、興味無さげに見ていた受験者達は目を丸くしていた。
「やはり……生身はキツいな」
余裕綽々の発言をもらすシノに、クレヴァーは激高し表情を歪める。怒りの感情と比例するかのように、鋼の弾は更に大きくそして早さを増していったが――それでもシノは冷静に軌道を見極め、魔力で強化した三棍棒で、いくつかの銃弾を打ち返す。
「くっ……鋼の盾!」
予想だにしない反撃にクレヴァーは攻撃の手が止め、円盤の鋼でそれを防いだ。
「ほう、防御術まで取得しておったか」
シノにとってはまたとない攻撃のチャンス。だが、彼は攻撃するでも距離を縮めるでもなく、その場でじっと相手の出方を伺っていた。その余裕すら感じられる態度は、クレヴァーの怒りを買うには十分で、彼は勢い任せに右手を胸元に当てた。シノの紫眼が瞬く。
「まさか……」
「朝星球!」
術者の心を形にした具現武器――別名、心武が彼の手に現れた瞬間。シノは思わず後退し、クレヴァーは満足げな笑みを浮かべた。上級魔術に匹敵する強度を誇る武器が、モーニングスターの鉄球部分が勢い良く放たれる。
「……くっ」
魔力で強化しただけの三混棒では、術者の心と密接に繋がりあった武器には敵わない。シノは、飛んでくる棘付鉄球をバック転で避け、空中で苦内を投げつけた。だが、クレヴァーはそれを避けながら前進し、シノが地に足をつく前に飛び蹴りを食らわせる。
遠距離攻撃に頼っていた為、基礎体力は高くないと踏んでいた誤算。とっさに左腕で受け止め致命傷には至らなかったが、シノは思いっきり蹴り飛ばされた。
「……っ、わからないな」
「何っ?」
「魔力コントロールが高くなければ、具現武器は精製出来ない。お前の技術では――」
「っその減らず口も! 時期にきけなくしてやる……!」
未だ空中にいるシノ目がけて、飛ばす刺付き鉄球。身動きのとれない空中ではまともに食らうしかないのに、シノは右手を胸元に当てたまま口角を上げるだけだった。
何で魔術を使わないんだ、と叫ぶ蓮の声が聞こえる。その声に釣られ、ふと視聴席を見上げると、口を開けたままのキルトと目が合った。
瞬間――鋼鉄の武器が彼の身体に直撃する。
「シノっ!!」
「――っ」
魔術対策をしている、頑丈で固い壁に叩きつけられたシノは、ズルズルとその場に崩れ落ちた。
会場が揺れるような衝撃音がしたのである。無事でいられるはずがない、のだが――
「やはり、その具現武器……不完全な代物だったな」
良くて全身骨折と思われたシノには、傷1つついておらず、何事もなかったかのように服についた汚れを払い落としていた。
会場がざわつき、クレヴァーは顔面蒼白になる。
「な、んで……魔術使ってもないアンタが無傷なんだよ」
「使ってない、ね。そう見えたなら、それでもいい」
シノは、“弓掛をつけた右手”を見せびらかすように掲げ、挑発気味にクレヴァーを見据えた。 具現武器の類なのだが、それに気づく者はほとんどいない。
「全力で来い。私にかすり傷を負わせたければ、な」




