↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キルト  作者: カシミア
前編
PR
12/20

03.忍者、香住蓮-2

*




「ロイド=パトリック、A級の賞金首だねぇ。ん、確認完了しました。……それでは、改めまして。キルト=アルジェント様、魔術師試験予選通過おめでとうございます」




 パソコンに向けられていた顔を上げ、年配の警察官は愛想良く笑う。力で国を統治したクロノスを、そこに属する魔術師を、快く思わない警察らしからぬ対応に、キルトは驚きを隠す事が出来なかった。


 キルトは、魔術師一門の出であり、クロノスの元将官を父を持つサラブレッドだ。軍の犬と蔑まれてる事や、嫌煙されてる事はよくよく知っていたし、冷たい視線と刺々しい言葉を受ける覚悟はしていた。


好意的な態度など、予想の範疇にない。逆にどう反応すればいいのかわからずに、キルトは「はあ……」と頷く事しか出来なかった。




「はい、これ証明書ね。頑張ってください」




 警察官は、預かっていた受験票を返すタイミングで、“A級捕獲証明書”と書かれたブラックカードをキルトに渡した。アリガトウゴザイマス、と片言のような敬語を口にしたキルトは、にこやかに笑う警察官に会釈しながら出入り口に足を向ける。


 ウィーン、という機械音と共に自動ドアが開き、4月を超えたばかりの冷たい風が体の温度を下げた。凝り固まった筋肉が少しずつほぐれていくような感覚に、キルトは思わず空を仰ぐ。




「邪険にされた方がいいとか、俺ってどーなの……」


「……あっ。キルトさーん」




 出てきた途端駆け寄ってくる茶髪の女の子に、キルトは、はた……と動きを止めた。我感せずを貫くシノとは対照的に、彼女はグイグイ他人のパーソナルスペースを踏み荒らしていくタイプらしい。突っ立ったままのキルトの手を引き、リオは半ば強引にシノの元へ引っ張っていった。




「さ、行きましょう! 道案内なら私に任せてくださいね!」


「は?」


「……うむ」

戸惑うキルトを差し置いて、シノは自分の荷物を手に、いつもの仏頂面をリオに向ける。

「そうだな、任せよう」


「え、ちょ、待てって。……てか、大丈夫なのか? 任せて」




 勝手に歩き出すリオの背中を追いながら、つぶやくキルトにシノは不敵に笑った。




「来た事はないが、この街の地理は頭に叩き込んでいる。彼女が嘘の道を教えても私は正しい道がわかるから安心しろ」




 緊張感の欠片もないくせに警戒心は人一倍強く、寄ってきたかと思えばさらりと交わす。変わり者で底が見えない、扱い辛い事この上ない同行者に、キルトは思わず苦笑いを浮かべた。




「早くついてきてくださいよー! すぐ着きますからぁ」


「ああ、わかった」




 早く早くと飛び跳ねるリオに、シノは駆け寄り、キルトはその背中を無意識に目で追った。その後、キルトの視線に気づいたシノから、また失礼極まりない発言を受ける事になるのだが、それはまた別の話。




*




 サンディゴシティのゼウスタワーは、大きく小奇麗な建物だった。中は軍基地にすぎないのだが、外観はまるで一流企業。ここで魔術師試験が行われると思うと、キルトは緊張を隠しきれず生唾を飲み込む。


 隣を見ると、行き慣れているであろうリオでさえ顔を強ばらせている。シノは相変わらず無表情で何を考えているかわからなかったが、若干漂う空気が固いような気がした。


 キルトが一歩踏み出すと、それに続いてシノとリオも歩き出した。入り口に立つ警備員に受験票を見せ、中に通される。




「初めて入ったけど……すげ」


「はしたないぞ、キルト」




 思わず周りを見渡してしまうキルトに、シノはため息をもらす。そして、失礼な奴と口を尖らせているキルトを素通りし、リオと一緒に受付へ向かった。


 受験票と証明書の提示を求められ、シノとリオ、少し遅れてキルトが受付の男性に渡す。男性は受験者名簿を取り出し、受験者番号と名前の確認をしていた。




「リオ=クルスクさんはこちらを……」


「はい」




 そう言って差し出された星形のピンバッチ。続いて、シノとキルトにも渡された。形、大きさ共に同じだが、3人とも色が違う。


 不思議そうに互いのピンバッチを見比べていると、男性は補足するかのように話し出した。




「捕まえた犯罪者のランク、数によって星の色が違います。それ、試験終了後回収するので無くさないで下さいね。無くした場合、失格です」


「これからの試験に響くんですか!?」




 不安げに尋ねるリオに、男性は静かに首を振った。




「いえ、途中評価も変わりますから。

リオさんはB級の賞金首を1人なので青い星を。キルトくんはA級の賞金首を1人なので赤い星を。

シノくんはB級の賞金首でしたが、あの短時間で複数の賞金首を探し確保するのは困難だと見なし、2ランク上の黄色をお渡ししました」


「そうか……1人だけにしとくんだったな」




 ぼそぼそと呟くシノに、キルトは不思議そうに首を傾げた。高い評価が不服だなんて、全く理解が出来ない。




「他に何か質問はありませんか?」


「いえ、特には……」


「それでは、会場へ向かっていただきましょう」




 男性はカウンターを飛び越えると、3人を誘導するかのように歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。