93、夕立
降ってくる雨をすべて撃ちぬくほどのマシンガンの名手がいた。
カウだ。
雨のなくなった世界。
ずっと快晴のつづく世界。
昼は真っ青な空か、入道雲。
夜は、いつも満天の星。
カウの心を映し出したような世界。
雲ひとつない晴天が落ちてくる。
広い、広い、どこまでも続く地平線の彼方まで広い。
ここはカウに征服された世界。
邪魔するものはなく、いつも穏やかな晴れが続く場所。
でも、カウの心に一点の曇りが。
この世界から雨を奪ってしまったこと。
空に小さな雲ができた。
カウの心の乱れ。
上にはカウが乗っている。
与えてあげる。
みんなにもう一度、雨の素晴らしさを与えてあげる。
叩きつけるような豪雨の雨音を与えてあげる。
前も見えなくなるくらいの叩きつける豪雨を与えてあげる。
カウはかつて、降ってくる雨粒をすべて撃ち抜くほどのマシンガンの名手だった。
撃つ。
点火。
激打する。
地上の人々に、叩きつけるような雨粒を撃ち続ける。
カウは雨雲さまだ。
地上の人々は久しぶりに降る雨に大慌て。
あっちへ行ったり、こっちへ逃げたり。
カウは人々を狙い撃つ。
ダダダダダダダダッ。ダダダダダダダダッ。ダダダダダダダダッ。
カウは狙いを外さない。
人々を狙いすましたかのような雨粒が空から大量に降ってきた。
空にはたった一つの小さな雲。
大きなマシンガンを抱えたカウが、地上の人々を雨粒で撃ち抜き続ける。
その日、久しぶりに夕立が降った。
※カウは女の子です。




