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88、音のない雨
雨の音がしなかった。
無音。
明鏡止水の域に達すると、雨の音も聞こえなくなるというが、これがそれかと剣豪ヤマトは思った。
音のしない雨の中、剣豪ヤマトは刀を構えていた。
一方、剣士アブラミはざあざあと雨の音を聞いていた。
「ええい。この雨の音がうっとうしいわい」
剣士アブラミはいう。
「それはお主がまだ未熟なゆえよ」
剣豪ヤマトが答える。
一閃。
勝ったのは、剣士アブラミの方だった。
雨の音がしないなんてのは、どこかおかしくなっていたに違いない。
雨の音がしないなんてのは、耳が遠くなっていたのだろうか。
それを明鏡止水の域とかいっちゃって、聞いてる方がおかしくなるというものだ。
雨はざあざあ降っていた。




