82、クローバー
「なあ、おまえ、サンタクロースって信じるか」
「はあ? 信じてねえよ。信じるわけねえだろ」
「じゃあ、UFOは信じるか。宇宙人が本当に地球にきてると思うか」
「はあ? 信じてねえよ。信じるわけねえだろ」
「じゃあさ、四つ葉のクローバーは信じるか。四つ葉のクローバーは実在すると思うか」
「はあ? いや、やっと話がまともになったな。四つ葉のクローバーは、し、信じるといやあ信じるな」
「そうか。四つ葉のクローバーは信じるのか。実はおれ、四つ葉のクローバーって見たことないんだよ」
「なるほど。実はおれも、四つ葉のクローバーを見たことはない」
「疑問に思わないのか。おれもおまえも四つ葉のクローバーを見たことがないのに、その存在を信じているんだぞ」
「でも、どこかにきっとあるだろ。四つ葉のクローバーは。見つけたことのあるやつ、いると思うぞ」
「まさか。ひょっとして、おれたち、サンタクロースみたいに騙されてるんじゃないのか。四つ葉のクローバーなんて、実在しなくて、それを見つけた人が幸せになれるなんて、やっぱり、どっかの大人の考え出した嘘で、世界中が嘘をつきあって、おれたちをだましているなじゃないのか」
「四つ葉のクローバーは嘘だというのか。なるほど、考えてみれば、そんなに都合よく、世界中で同じ突然変異が起こるというのが疑問だ。四つ葉のクローバーは実在しないのかもしれない」
「そうだろ。これで、また、世の中の汚さをひとつ思い知ったよ。また、大人たちはおれたちをだましていたんだ」
「だが、こうは考えられないか。おれたち二人は、四つ葉のクローバーを見つけられない運の悪いやつらだってことは」
「いや、その理屈はおかしい。それは四つ葉のクローバーを信じているやつの言い分だ。おれたちは四つ葉のクローバーを信じていないんだ。世界は真っ暗闇さ。騙し合いの醜い世界だ」
「それじゃあ、おまえ、関羽と張飛って信じるか」
「関羽と張飛? どういうことだ。三国志か。実在したんだろ。それは信じているさ」
「でも、歴史書に、関羽と張飛は一万人に相当する豪傑だって書いてあるんだぞ。そんな歴史書を信じるのか? 一万人に匹敵する豪傑なんているわけないだろ。日本の幕末の戦争じゃあ、一人で十三人を斬った男が豪傑だっていわれたんだぞ。十三人が現実で、一万人は虚構だよ。歴史書が嘘をついているんだよ」
「関羽と張飛か。まるで、四つ葉のクローバーみたいだな。大人たちのついている嘘なんだ」
「世の中、嘘ばっかりなんだな。おれは今日ほど、世界に絶望した日はないよ」
「ああ、関羽も超飛も、四つ葉のクローバーも嘘なんだからな」
この二人は、運が悪く、その日のうちに、トラックにはねられ、交通事故で病院に運ばれた。
クローバー 追記
ちなみに、四つ葉のクローバー、五つ葉のクローバーは,ググると写真を見ることができる。この二人には「ググれカス」といってるのが適切であろう。
追記 了




