77、針金
「針金だよな、針金」
「あたぼうよ。針金だって、針金。絶対に針金」
AとBは二人して、針金を大絶賛している。しかし、Cは一人、針金には賛成できない。
「待ってくれよ。針金なんて無茶だよ。あれはもう、人の食い物じゃないよ」
「何いってんだよ。針金、最高。マジ、針金、最高」
「そうだよなあ。針金以外、考えられないよなあ」
「おれは普通がいいよ。針金なんて考えられない。おまえらは常軌を逸しているよ。もう、まともじゃないんだ。狂っているんだよ」
Cは必死になってAとBを止める。
「何いってんだ。男なら針金だろ。針金じゃねえやつなんて、もうダチじゃねえ」
「んだんだ。針金に挑戦しないやつなんて、ダチじゃねえ」
「そこまで、針金に魅力があるっていうのか。針金なんて、誰が考え出したんだよ。考えたやつの正気を疑うよ」
Cの限度を超えた拒絶に、AとBは気がとがめた。
「おまえ、本当に針金にしないつもりか」
「まあ、無理にとはいわないけどな」
そこでCは答えた。
「針金なんて人の食い物じゃない。おれはせいぜいバリカタにしとくよ」
「バリカタなら、まあ、ぎりぎり男といえるだろうな」
「ああ、バリカタなら仕方ねえ。おれたちは当然、針金だけどな」
そして、三人はラーメン屋に入った。
普通、バリカタ、針金は、ラーメンの固さを表わすことばである。
普通の次に、カタメがあり、カタメより固いのがバリカタで、バリカタより固くなると、ハリガネになる。ちなみに、ハリガネは本物の針金が出てくる。




