76、ウィキペディアン
2090年、インターネットフリー百科事典「ウィキペディア」は人類の知識の99%を網羅するに至っていた。大学入試にパソコンの持ち込みが可能となり、誰もがパソコンを持ち込んで、試験問題を解いていた。
そこに、一人の貧乏な受験生がパソコンを持たずに試験を受けに来た。
それを見た他の受験生たちは、その受験生を好奇の目で見て、嘲笑気味に噂した。
「あいつ、ひょっとして、ウィキペディアを見ないで受験するつもりなのか」
噂は飛ぶように広がっていった。ウィキペディアを見ないで受験するなんて、落ちるに決まっている。ウィキペディアには、人類の発見した試験問題の99%がのっており、解答はウィキペディアを見るだけでわかるようになっているのだ。
試験が始まると、みんなはいっせいにパソコンで問題を検索し始めた。
問題も解答もウィキペディアにのっている。これは時間内にウィキペディアを
検索できるかという、検索能力を問う試験なのだ。
パソコンを持っていない貧乏受験生は、うんうんと試験問題を前に頭をひねっていた。
それに気づいたものは思わず笑った。あんなやつ、百年前の受験生だ。
時代遅れもいいところだ。
そして、試験が終わり、合格発表がなされた。一位で合格したのは、なんと、あのパソコンを持っていなかった貧乏受験生だった。彼は、試験問題の中に一問だけ用意されている、ウィキペディアにのっていない問題を解いたのだった。
ウィキペディアの残り1%を埋めるのは、きみのような学生だ」
教授たちは、貧乏受験生を大絶賛して迎え入れた。




