78、神話
全知全能で、すべてのものに対して無限の慈愛をもち、万物を創造して、宇宙すべてに偏在する。それが神。唯一絶対にして、神聖不可侵なもの。
「すべてのものに対して無限の慈愛をもち、だって? 何をいってるんだ。世界はこんなに不幸と苦痛で満ちているというのに。万物を創造したのなら、地獄を造ったのも、悪魔を造ったのも神なんだろ。神は、この世界に悪魔を遣わして、命ある者たちを苦しめようとしているじゃないか。神は宇宙すべてに偏在するだって? だったら、おれもおまえも、神の一部なのか。こんなくだらない、とるにたらない存在価値のないおれやおまえが神さまだっていうのか。だったら、神さまもたいしたことがないな。矛盾だらけで、苦痛に満ちた世界をつくりやがって、おれのような凡人がその構成要素で、まったくたいしたことがない。神なんて、しょせん、その程度のものなんだろ。そんな神に対して、信仰なんてもてるわけがないじゃないか」
「おまえのいうことはまったく正しい。神が存在するというのなら、その存在は矛盾に満ちており、また、くだらない存在だ。だが、しかし、ひょっとしたら、我々は、まだ、神について、何かひとつ見落としているのかもしれない。神が神である条件が、あとひとつ存在するのかもしれない」
「神を示す四つの条件の他に、五番目の条件があるっていうのか。その条件とは何だ」
「わしが思うに、神はマゾなんだよ。自ら、苦しみたがっているのだ。苦しみに喜びを見出したマゾなんだよ」
「神がマゾだと。それが宇宙の最後に隠されていた真理ってやつなのか。まさか」
「さあ、それを試すために、ここにムチとロウソクを用意した。そうれ、お主も神を体現するのだ」
「いやだあ」
「愚か者が。神の真理に従うのだ」
あああああああああ。




