61、山戦争
ジャンクは宇宙意思に使命を受けたと思っていた。ジャンクは、宇宙意思の求めるところにより、地球から宇宙人を追い出さなければならない使命にかられたのだ。
「見ろ。山がある」
「そうだね。山があるね」
「あの山は宇宙人だ」
「まさか。山ですよ。ずっとむかしから地球にある」
「例え何億年経とうとも、宇宙意思を誤魔化すのは不可能だ。宇宙人を退治してやる」
そして、ジャンクはスコップをもって、山を掘り始めたのである。
「あの人は何をしているのですか」
「何でも、あの山は宇宙人だから、やっつけるんだそうです」
「でも、山ですのに」
「ええ、山ですけど。最近、暖かくなってきたから、それが原因でしょうか」
ジャンクは作業のはかどらなさに激怒した。
「おれ様は宇宙意思の任命せし宇宙帝王だぞ。ものども、早く山を掘り起こすんだ」
ジャンクに従う者はいなかった。ただひとり、ロボットのガランガンを除いて。
ガランガンは、全宇宙の中で、自分だけが自由意志をもっているのだと信じている宇宙大元帥だった。
「任せろ。大型ショベルカーをもってきたぞ」
ガランガンの大型ショベルカーが山を削る。
そうしたら、ちょっと山が逃げた。
それに気づいたものはわずかだった。
「見ろ。宇宙人が逃げ出したぞ。やつはまちがいなく宇宙人だ。早く山を掘るんだ」
ジャンクとガランガンは必死に山を削り落としていった。
山は原型をとどめることなく、掘り返されてしまった。宇宙人の死である。
「勝った。だが、宇宙意思が呼んでいる。まだ地球に宇宙人が隠れ潜んでいると」
「まさか」
「そうだ。掘るぞ。次の山が相手だ。この辺りの山はすべて宇宙人だ。これは宇宙大戦争だ」
「山をいくつ掘り起こせば、気がすむんだね」
民衆は聞いてみた。
「それは、宇宙人がいる数だけだよ」
ジャンクは答えた。
「山は山だよ」
「いいや、山は宇宙人だ」
山が動きだした。
「わあ」
民衆は逃げ出した。
のちに呼ばれる山脈戦争の開始である。
ヒマラヤ山脈は宇宙人だった。これには、さすがのジャンクも、怖気づきそうになってしまった。すでに、アンデスとロッキーを倒した後であるにも関わらず、世界最高峰のヒマラヤ山脈には、とても太刀打ちできるとは思えなかった。
「ヒマラヤは掘っても無駄だ。発破するしかない」
とジャンクはそう考えた。
「発破だと。やつを吹き飛ばすには相当な火力が必要だ。まさか」
「そうだ。核を使う時が来たのだ」
ジャンクの指示によって、核兵器で崩れ落ちるヒマラヤ山脈。




