51、軌道エレベータ・ラーメン屋
「汚物は消毒だあ! ヒャッハー!」
今日も地球の軌道エレベータで、人が燃やされている。頑固親父の経営する店で、気に入らないお客は火炎バーナーで燃やされてしまうのだ。
この殺伐とした雰囲気が、この店の最大の売りともいえた。
おれはこの話題の店にさっそくラーメンを食べに行った。
軌道エレベータを使うのは初めてのことだ。どきどきと緊張する!
ウィーンと音がして、エレベータが動いていく。とてもすがすがしい気分だ。いったい、どんなラーメン屋なんだろう。おれは期待に胸を膨らませていた。
そして、ついた先が、
「汚物は消毒だ! ヒャッハー!」
あきれて、ものもいえない。
本当に人が燃えている。いや、燃える人はSFでは英雄ではないのか。あの人たちは宇宙ジョウントするかもしれないと思い、おれはみずからを慰め、それでラーメン屋の席に座った。
見ると隣に男が一人。小説「ALL YOU NEED IS KILL」を読んでいる。ああ、その本はおれも知っている。とても面白いんだ。なかなかの通が来たな、とおれは思っていた。
だが、そんなおれの考えはあまかった。
「ラノベは消毒だあ!」
とラーメン屋の主人が燃やしていく。
ああ、なんということだろう。これは、ラノベとSF小説(日本にかぎる)の因縁の戦いであり、お互い似たもの同士なのに、それを知らず、相争っているのだ。
ラノベを読んでいた男は、大切な読みかけの小説を燃やされてしまって、傷だらけ、全身大火傷で、それでもラーメンを食べようとしていた。
なぜだ。
なぜ、あんなに酷い扱いを受けたのに、このラーメン屋のラーメンを食べるんだ。
「へい、とんこつラーメン一丁!」
おれの頼んでいたとんこつラーメンが来た。おれはラノベ読者のことを心配しながら、この店のラーメンを食べてみることにした。
この店のラーメンの味こそが、あの火炎放射器親父の腕であり、心であるはずだ。ラーメンが美味しいなら、あの殺伐したラーメン屋の主人のすべてを許そうとおれは思った。不味かったら、こんなラーメン屋は、通報して営業停止にしてやる。
そう思い、おれはラーメンを食べた。
「不味い」
思わず、口に出た。
とてもじゃないが、こんなラーメンは食べていられない。麺もスープも最悪の味だ。
おれは我慢できなくなって、大声で叫んだ。
「なんで、こんな不味いラーメンを食べるんだよ、みんな。こんなラーメン、食べれるわけないだろう」
店長は怒りもしなかった。おそらく、ラーメンが不味いことを実は気づいているのだ。
すると、火傷したラノベ読みがしゃべった。
「あのね。ここのラーメンはね、地球以外の、宇宙からだけ食材を集めてつくっているラーメンなんだ。そんなラーメンが不味いわけないだろう。これが宇宙の味なんだ。これが宇宙の味なんだよ。美味しいといえ。頼むから、美味しいといってくれ」
ラノベ読みと、ラーメン屋の店長の目には涙が浮かんでいた。
おれはむさぼるようにラーメンを食べた。




