45、死の国の王
日本の死者の国の神は何であろうか。ギリシャ神話ならハーデス、ローマ神話ではプルトーが死後の世界、冥界の神である。ギリシャ神話のハーデスが有名なので、当たり前に存在するものかと思ってしまうが、考えてみると、死者の国の神とは、それほど、多くの神話で当たり前に出てくる神ではなさそうである。死者の国の神はそれ以外にほとんど思い浮かばなかった。キリスト教では、唯一神が死者の国の神であり、死者はみんな神の前に並ぶ。つまり、キリスト教の死者の国の神は天国の神である神そのものであるといえる。ゲルマン神話のオーディンも死者の神といえる。ただし、勇敢な戦士しかそのもとに行くことはできない。こう考えると、天界、海、地上、冥界、などという単純なギリシャ神話的な世界観を持っていると、正確に世界を思い描けないことになりそうである。まずは先入観を捨てなければならない。
それでは、日本の死者の国の神は何であろうか。答えは実はわかっている。物語で出てくる日本の死者の国の主は閻魔大王である。閻魔大王こそが日本の死者の神であり、これはインド神話のヤマが仏教を通じて伝わったものである。
つまり、最初のおれの疑問には正解がある。日本の死者の国の神は何であろうか。答えは、閻魔大王である。これが最も一般的な共通見解だと思う。そして、実際、閻魔大王は人々に有り難がれ、恐れられ、尊ばれ、崇められている。閻魔大王は、非常に強い神だとされている。閻魔大王は正確には神ではなく、不死の人である。
これで、今回の話は終わりかというとそうではない。話は脱線する。そもそも、ここからが、この話の本番である。閻魔大王は外来の聖人だ。日本本来の土着の死者の国の神は誰だろうか。つまり、日本神話の中の死者の神は誰かという話である。これにも、答えがある。かなりの大物が二人も名をあげる。どちらが有名なのかもわからないぐらい、どちらも有名である。
それでは、一人目の名を出す。スサノオである。意外かもしれないが、スサノオは死者の国、つまり、根の国の主として古事記に登場する。大国主命が王であることを認めてもらうため、死者の国にいるスサノオのもとまで行き、もうすでに死んだはずのスサノオに王であると認めてもらうのである。つまり、日本神話の死者の国の王はスサノオだということになる。死んだスサノオは、そのまま、死者の国を治めているのである。
ところが、これに対抗できるぐらいの強力な神がいる。スサノオと同じくらい強く、スサノオと同じくらい有名な死者の国の神がいる。二人目の名を出そう。イザナミである。なんだ、イザナミか、と思うかもしれない。イザナミの神話は大国主命の神話より有名であるから、知っている人も多いと思う。死んだイザナミの墓を暴き、醜く腐ったイザナミに襲われるイザナギの話である。ここで、イザナミは死者の国の主らしく、蛇などを従えて、イザナギを襲う。ということで、日本の死者の国の神は、イザナミだといえるのである。
三人のうち、どれを書いても正解であろう。日本の死者の国の神は、閻魔大王、スサノオ、イザナミである。




