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41、公務員業務改革制度

 2156年、サイボーグが街を飛びまわり、遺伝子工学が人類の進化に影響を与え始めた未来。パブロフは、血液の流動を速くして、自らの興奮を高め、快楽中枢に脳内麻薬を分泌させ恍惚の域に浸っていた。日本は、国会を解体し、高度に発達したコンピュータ網を使って直接民主制に移行していた。だから、パブロフのような一般人にも法律を決める投票権があった。立法だけでなく、行政府も解体され、それまで公務員が行っていた仕事はすべて民間企業に払い下げられることとなった。公共の福祉とされる業務には、日本に国籍を置くすべての人々によって直接投票され決定されることとなっていた。

 パブロフは日本人の遺伝子を受け継ぐサイボーグだ。ただし、ロシア人の遺伝子を体内に組み込み、白色の肌と青色の目と白色の髪を手に入れていた。正式な日本名は極秘回路に保存してある。パブロフは自分が誰なのかを隠して生きることとし、仮の名をパブロフと名のった。

 パブロフは、自分の縄張りの電線工事を発注することに投票した。投票は体に埋めこまれた携帯端末から行われる。パブロフは、右腕に埋めこんだ携帯端末で、世界中の情報網に接触できるが、その主な接触先の三番目は、岐阜市の公共工事の投票箱だった。常に、自分に有利なように投票していく。公共工事は十分に一回は提議されたから、パブロフは十分ごとに岐阜市の公共工事に投票していた。公共工事として道路電灯を設置させ、そこに公共の天文台をつくり、天文台に仮眠室を設けさせ、パブロフはその仮眠室に住んでいた。日常に必要なものは投票して税金で購入させる。パブロフの右腕の携帯端末で常に投票しつづけるかぎり、行政はパブロフに有利に働く。選挙に興味のない国民の多い中で、公共工事を操って日常生活を送るパブロフは、富裕浮浪者と呼ばれた。選挙で、自分に生活保護を認定させ、税金の納入から逃れていたパブロフは、いっさい働くことなく一生を生きていくことができた。それはただまめに投票を行ったというだけのことであり、サイボーグ化したこの時代に、常に投票箱とネットでつながっている日本人は、選挙に責任をもって参加しなければ、パブロフのような富裕浮浪者を生むのだった。

 パブロフは里中二号通りの九階建て道路の改修工事に、三階に非常食を置くことに投票し、賛成二票、反対〇票で可決された。パブロフはしばらく非常食を非合法に食べて暮らすことになる。非常食を食べに来たもう一人のサイボーグ、ソーニャに会い、お互いににっと笑った。


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