表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/131

24、断罪者を贖え

 人類が宇宙を征服した未来、人類は宇宙の覇者として民主的な世界を築いていた。しかし、宇宙の征服者である人類でも手の出せない謎の存在があった。それが断罪機関。人類のなすことに謎の力で介入し、人類のさらなる発展を妨害するものであった。

 ある時、惑星ネッドが宇宙工学により宇宙環状高速道路を建造しようとしたら、断罪機関がそれを邪魔して、環状道路を螺旋状の迷路にしてしまった。これは一大事だと惑星ネッドの市民は思った。惑星ネッドの市民の少年ジャラテクは、断罪機関をもっと善良な存在に作り変えてしまうことにした。

「おれの改造した最小ロボ菌類を感染させて、根源粒子から再構築してやる」

 すると、宇宙に浮かぶ断罪機関は、ジャラテクの最小ロボ菌類に感染して形を変えつつあった。断罪機関の防衛システムが作動し、悲鳴を上げた。最小ロボ菌類を撃ち滅ぼそうと、銀河群級光線砲を発射する断罪機関。しかし、そんなものでは、感染した最小ロボ菌類を駆逐することはできない。すでに、最小ロボ菌類は断罪機関の内部に侵食し、一体化しつつあった。断罪機関は、自身への攻撃の因果を探って、その原因を導き出すことにした。しかし、ジャラテクは断罪機関の検索エンジンを予期して、自分のデータを書き変えて身を守るように先手を打っていた。メキという名の女の子のデータを作り出し、この人格が断罪機関を攻撃しているように見せかけた。ジャラテクは、断罪機関の攻撃を完全にかわしていた。断罪機関の銀河群級光線砲は見当違いの方向へ発射された。

 しかし、ここにジャラテクの誤算があった。それは、この広い宇宙にはメキという名のジャラテクが設定したとおりの性質を持った女の子が実在したことだった。ジャラテクのもとに、女の子から通信が入った。

「いったいどういうつもりですか。なぜか、あなたが原因で私の近くの銀河群が攻撃を受けているようなのですが。このままでは、私たちは全滅してしまいます」

「ごめん。悪気はないんだ。なんとか持ちこたえてくれ。たぶん、助けに行くから」

 ジャラテクはそう返事を返し、急いでメキのいる惑星に飛んだ。移動するには、断罪機関が捻じ曲げてしまった迷宮高速道路を使った。ジャラテクの旅ナビシステムはこの迷宮の的確な出口を探し出していた。

 メキのいる銀河群は壊滅の危機にあった。断罪機関の銀河級光線砲を受けて滅びようとしていた。メキは、ジャラテクに怒る。「どうしてくれるんですかあ」と。ジャラテクはひとまず、この宙域のバックアップデータをとり、急いでメキを脱出させようとする。

「この星は滅びる。急いで逃げるんだ」

「あなたの所為なのよ。勝手すぎる。他のみんなは見殺しなの」

「できるだけ、あとで再生する。今は一緒に逃げてくれ。頼む」

 そして、ジャラテクとメキはまた迷宮高速道路に乗って、どことも知れぬ宇宙に飛び出た。

「そろそろ、最小ロボ菌類が感染して全部つくり変わってるはずなんだけどな。まだ銀河群級光線砲の攻撃が止まらないや。どうしてだろう。感染に失敗したかな。宇宙の根源粒子から作り変えたのに。なんでだろう。やつは、根源粒子より小さな単位でつくられているんだろうか。こうなったら、宇宙を一度消滅させて、あとで断罪機関のいない宇宙を再構成してやる」

「ちょっと、私を殺すつもり?」

「ごめん。あとで再構成するから」

 こうして、ジャラテクは宇宙を消滅させた。そして、断罪機関の因果律を消し、断罪機関のいない宇宙を再構成した。しかし、断罪機関は死ななかった。断罪機関は、無が見ている夢であったために。

「くそう、こうなったら、虚無安定装置で無のゆらめきを消してやる」

 ジャラテクが叫ぶと、大勢の宇宙工学者たちがこの場に移動してきた。

「やめるんだ、ジャラテク。無のゆらめきを消したら、新しく宇宙を作ることができなくなってしまう。最悪、この宇宙の太古の無のゆらめきが影響を受けて、我々すべてが消えてしまうこともあるのだぞ」

「だけど、断罪機関を残して、未来への発展はない。断罪機関を消すためには、虚無安定装置で無のゆらめきを消さなければ」

「現状の虚無安定装置を使うことは禁止する。改良するなり、新たな策を練るのだ」

 そして、宇宙工学者たちは自分たちの持ち場へ帰っていった。

 困ったのはジャラテクだ。虚無安定装置なしで、無の見ている夢である断罪機関を倒さなければならない。ジャラテクは閃いた。断罪機関が無の見ている夢ならば、眠っている無の目を覚ましてみればいいのだ。

「いくぞ。無へ送る目覚まし時計」

 そして、眠っていた無が目覚めた。世界が暗転したような気がした。しかし、それでも、断罪機関は死なない。無は目を覚ましても白昼夢を見るがゆえに。

 そして、無が目を覚ましたため、無は無でなくなり、無は存在として宇宙を覆うように姿を現した。

 大世界創造。目覚めた無が宇宙より大きな世界を創造していった。ジャラテクは歓喜した。世界が創造に満ちている。宇宙を創り出した引き金をいっきに全開でジャラテクが開いてしまったのだ。宇宙を包んでいた空集合は、全集合となり、宇宙は物質で満ちた。

 全集合で満ちた大宇宙の中で、まだ断罪機関とジャラテクは戦っていた。断罪機関はまだジャラテクが敵だということに気づかない。ジャラテクの一方的な攻撃が続く。

 無の見る白昼夢と化した断罪機関は、歪み、ゆらめき、かき消えそうになったり、暴走したりした。銀河群級光線砲があらぬ方向へ乱射される。断罪機関が幻覚を見ているのだ。自身の制御不能に陥った断罪機関であった。これで、ジャラテクは少し有利に戦えるかと思ったが、無の目を覚ましたというのに、断罪機関が死なないのは大きな誤算だった。新たな作戦を考えなければならないとジャラテクは思っていた。

 そこへ、ジャラテクに非在が話しかけた。

「無の目を覚ました汝に願い申し上げる。無が目覚めては、我ら非在のいる場所がなくなってしまう。我ら非在のために無を再び眠らせてもらう。よろしいかな」

 ジャラテクが返事をことばにする前に、非在は答えを得た。非在は無を再び眠らせた。それと同時に、突然、広がった大宇宙の全集合が再び空集合へと変転した。

 宇宙は元に戻り、ジャラテクと断罪機関の戦いはつづいた。

 断罪機関はやっとジャラテクという敵を認識した。断罪機関がジャラテクを見た。断罪機関はジャラテクの主観の中に入って、ジャラテクを殺そうとした。「滅びるがよい」断罪機関はジャラテクの主観の中で銀河群級光線砲を放った。ジャラテクは自分の体に当たって跳ね返る光に自分の体のデータを乗せ、光速で移動し、その攻撃をかわす。同時にジャラテクは無数に分裂した。

「これで、死なぬか。被造物にしてはできるな」

「被造物だって。まるで、神さまみたいな言い草だな。おまえだって被造物だろ」

「然り。我もまた神の被造物にすぎぬ。しかし、神を断罪する権利をもった我に汝が勝てるはずもない」

「知ったことか。未来の建設に邪魔なおまえは消えてなくなるんだ」

 ジャラテクはマルチユニバースビッグバンを起こして、断罪機関を攻撃する。しかし、断罪機関は死なない。断罪機関はジャラテクの主観の中に存在するために、物理的攻撃を一切受けないのだった。

「死ね。断罪者に逆らう者よ」

 断罪機関がジャラテクの脳を破壊し、それを物理世界に実体化させた。

「ジャラテクは死なない。なぜなら、私がジャラテクのデータをもっているために」

 メキがジャラテクを蘇らせた。

「ジャラテク、気づいて。今、この宇宙に断罪機関は存在しない。断罪機関はあなたの心の中にだけあるの」

 それを聞いて、ジャラテクは叫んだ。

「わかったぞ、お前の殺し方が」

 そして、ジャラテクは剣を取り出して、自らの心臓に突き刺した。ジャラテクが自殺した。即死だった。ジャラテクの心の中にだけ存在していた断罪機関は消えてなくなってしまった。メキが再び、断罪機関のいなくなったジャラテクを再生する。

「死んだよ、断罪機関は」

「死んだか、断罪機関は」

 すると、神が現れた。

「断罪機関を殺してはならなかったのだ。この世界は罪と苦痛に満ちている。罪と苦痛を作り出した私は、万物の創造主として、常に断罪されなければならなかった。私を罰し続ける者が必要だった。断罪者がいなくなったら、私は悪になってしまう。この宇宙の創造主が悪に染まる」

 そして、悪に染まった神との戦いがあった。人々はこの宇宙に満足していた。神を許した。すると、神もまた、人々を許したもうた。そして、外側から見れば悪に染まったかのような宇宙が、内側では理想郷のように繁栄した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ