129、命に帰る契約
五万種の宇宙人が日常的に地球にやってくるようになった頃、宇宙人の間では、人格転写という人格を別の体に移しかえる技術が普及していた。人格転写によって、好きな種族の宇宙人の体に自分の人格を転送して生きていくのが流行っていた。地球人も宇宙文化をとりいれていったため、だんだんと宇宙人の体に人格転写するようになっていった。
「ヒトの体はわずらわしい。もっと便利な宇宙人の体にのりかえるのだ」
元気にさわぐなら、リズムで動くヤツアタマ星人。
速く動くなら、電子構造体のピカドロ星人。
なまけて生きるなら、海水につかってるだけでいいダラチン星人。
隣の本田は、彼女と一緒に宇宙人の体に転写して、宇宙人の体で交尾して、宇宙人の子供を出産していた。
向かいの中村は、三秒で出産する宇宙人になって、子孫を五万世代つくり、その進化を眺めていた。
みんながみんな、宇宙人の体になった。
宇宙文化の大流行だ。
「宇宙人のやつらは平和的だった。まったくもって仲良くしてくれたし、こちらが首をかしげるくらい気前もよかった。だが、おれは気づいたんだ。これがまったく恐ろしく忌まわしい宇宙の脅威だということにね。見ろよ、あの素敵な人格転写が流行ったせいで、地球人の体のままでいるやつは一人もいなくなっちまった。今じゃもう、ただ最先端の宇宙文化があるだけだ。あんなに自由な体の宇宙人になれるのに、地球人の体でいるやつなんているわけない。宇宙人は平和的にやってきても地球人を滅ぼしてしまうのだ」
こうして人類は絶滅した。




