116、宝石泥棒異聞録
地球政府に怪盗から予告状が届いた。
「今夜、貴兄の所有せる宝石を頂戴いたしたく候。怪盗スターパニック」
地球政府は、自分たちが所有する宝石が何なのか、何が狙われているのか、見当もつかないで地球政府官庁に警戒態勢を強いたのだが、その日の夜、地球から、月が盗まれてしまったのである。
地球政府は大慌てになった。怪盗スターパニックは、天体を動かす力をもっているようだ。いったい、昨夜、満月に輝いていた月がどのようにして持ち去られたのかはっきりわからない。ただ、午前零時、満月はすっと煙が消えるように消え去ってしまったのである。
宝石泥棒を捕まえろ。懸賞金は一兆円の値がついた。大勢の賞金稼ぎたちが、宇宙の中を探しまわり、月がないかを確認したのである。
月はなかなか見つからなかった。月が消えたために、地球から潮汐はなくなり、宇宙に進出しようという足がかりも失われた。月を失った損失は、人類にとって計り知れないものだった。怪盗スターパニックはどこにいったのか。謎は深まるばかりだった。怪盗スターパニックは月をどこに隠したのか。隠す場所などないはずではないか。それとも、光速で月は地球から遠ざかっているとでもいうのだろうか。
全天を眺めまわすに、名探偵アースフレンドは月の隠されている場所を目星付けようとしていた。
「ふむ、謎は解けた。月は、木星の裏側に隠してある」
果たして、地球政府の者が木星の裏側を確認してみると、確かに月が隠されていたのである。怪盗スターパニックは焦った。まさか、こうも早く見付けられるとは思ってなかったからである。怪盗スターパニックは、月にジェット機を付けて、宇宙の果てまで月を持って逃げてしまおうとした。名探偵アースフレンドが宇宙船にのって、それを追いかける。月と地球の追っ手は、いつまでも、宇宙の彼方目指して飛んでいったとさ。
いまだに怪盗スターパニックは月を盗んで返さない。なんでも、「この世にある最も美しかったもの」を返すわけには行かないそうだ。彼の正体は宇宙人らしい。とり戻すのは、名探偵アースフレンドの手に任せられている。地球では月のない暮らしに慣れてきたし、そこまで月を欲しがった怪盗の享楽を楽しんでもいた。
次に地球が月に会う時は、キラ星のごとく月の兄弟を連れていることになるという噂だ。




