112、最強の防御膜
その男は、体に薄い膜を張っていた。この膜は最先端の防御膜で、重さ十トンの鉄塊が当たってもへこむことがなく、核爆発をうけても耐えることができた。
「くそう、あの男をどうやって倒したらいいんだ」
敵は悩んだ。物理的な攻撃はおおよそ、効きそうになかった。
その男は、二十四時間、防御膜を張っており、殺害する隙はまったく見当たらなかった。
だが、ある時、敵は思った。
「もし、あの男が女の肌にも触れられないというなら、それほど羨ましくもない。攻撃は成功しているのではない」
ところが、男は、自分の妻と防御膜をつけたまま、性交しているようだった。
なぜ、男の男根は防御膜を突き抜け、女の粘膜と接触できるのか。
敵は必死に考えた。
その結果、男の防御膜は、人体だけを透過することが判明した。
「だからといって、どうしたらいいんだ。核兵器でも殺せない相手を殺せるわけがない」
敵の嘆きに男が心配して声をかけた。
「おい、人体を透過する防御膜の攻撃の仕方をやってみろ。誰でも思いつくことだ」
「いやだ。わからない。勝てるわけがない」
「バカヤロウ。それは、素手で直接、殴ることだよ」
男に敵は殴られた。
敵は奮起し、男を殴ってみた。ぼこっ。だが、まるで手ごたえがない。やはり、防御膜に守られたようだ。
「なぜだ」
「それは、おれが殴られてもいいように、素早く衝突する物体は防御膜を透過できなくさせているからだ」
「勝てない。絶対に勝てないよ」
男は笑った。ははははははははっ。女も笑っていた。
「おまえの筋力では不可能かもな。おれを殺す唯一の方法は、素手で人を絞め殺せる腕力のあるやつに、ゆっくりと首を絞めさせることだ」
敵は愕然としていた。勝てる方法があったのに、今までずっと、暴れ放題にさせてしまったことを後悔して、涙した。
「ははははははっ、おまえとはもう二度と会うこともあるまい」
男は消えた。




