106、アップルジュースの友人
真夏の昼間に、ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」をかける。自宅にいても、どこかさすらいの旅をしている気分がするじゃないか。
ぼくは孤独に一日をすごしているけど、飲み食いには困らない。炒飯にアップルジュースをつけて、昼食を終わらせる。
ぼくはカミュの「カリギュラ」が好きで、ちょうど、ぼくの家を訪ねてきた女の子に、こんな命令を出してしまった。
「きみよ、月をとってまいれ」
女の子は、ぼくと一緒に勉強をしに来た女子大生だったから、突然、命令されて、戸惑ってしまった。
「陛下、わたしに月など、とれましょうか」
女の子がいう。
「なに? ぼくの命令の聞けない配下など、いるわけがない。きみが誠にぼくに忠誠を誓うのならば、きみは月をとってこれるはずだ」
「それで、月をもってきたら、どうするの?」
女の子は冷静に答えた。
「え?」
ぼくはちょっと及び腰になる。
「月なんてもってきたら、大きすぎて、この部屋に入らないんじゃないの?」
女の子は冷静だ。
それで、ぼくは、女の子の服を脱がせた。
「月が盗めないなら、きみを盗むしかない」
「わお」
その晩は、とても素敵な夜だった。月は盗まれることなく、女の子は、ぼくの命令に従った。
「ああ」
女の子の小さな喘ぎ声が聞こえる。
次の日の朝も、やっぱり、ぼくはビリー・ジョエルの「ストレンジャー」をかけるんだった。




