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探索者学園生の日常  作者: 味醂α
19/41

19 混沌の来訪

「我は混沌から生まれし深淵の恒星(アビス・シリウス)だ!!!」


「深いんだか高いんだかわからないな。」


 いちいちポーズを決めるそいつに立原が冷静につっこむ。あずき色の髪と瞳を持つそいつは土属性を持っているようだ。腕や首など、目に見えるあらゆるところに包帯が巻かれ、右目には黒い眼帯をしている。


「3組の寺門太郎てらかど たろう君。いつもケガしてるの。ヒールポッド使えばいいのに。」


「無駄よ冬香。彼が大けがしているのは身体じゃなくて頭の中だもの。」


 よくわからない寺門の代わりに面識のあるらしい冬香が名前を教えてくれる。辛辣な発言をしたのは嫌そうな顔をした若生だ。


「よく来た太郎!いかにも我こそが紫の雷使い、雨宮頼人だ!アマヨリと呼ぶがいい!!」


 頼人は全力でノリに行った。寺門が「太郎じゃない!深淵の恒星だ!」と怒る。


「太郎、我のことも忘れるな。我は邪神、アマヨリの第一使徒デーブ。混沌から生まれた者同士仲よくしようぞ。」


 頼人が邪神に昇格し、田中の名前が外国人化した。「第一使徒だと!?ほかにもいるのか!?それと太郎じゃない!」と期待したような眼差しを送ってくる寺門に答えようと、田中はテーブルに着く人員を物色する。女子は除外。速水は頼人と田中の扱いに慣れすぎてさらりと流されそうだし立原は真面目過ぎて乗ってこれないだろう。おのずと一人に絞られる。


「うむ、こちらが第二の使徒、色欲の木下である。」


「色欲の木下だ。デーブの雄っぱいじゃなくておっぱいがもみたい。」


 さすが色欲。煩悩垂れ流しだった。木下のすごいところは女子がいる場所でも普通にそれを口にできるところだ。案の定女性陣は冷たい視線を送っている。約1名自分の胸に手を当てて落ち込んでいる者もいるが。


「それで太郎君はアマヨリに何の用があったのさ?」


 話が進まないと判断した空気の読める男、速水がめんどくさそうに口をはさんだ。木下の発言に立原と同様顔を赤くしていた寺門ははっとして話し出す。


「貴様らがネオスライムを滅したと聞いてな。我直々にやつらの潜伏場所を聞きに来たのだ。我の中に封印されし邪竜を抑えるのには贄が必要なのでな。」


「つまり包帯買い替えるのに金がかかるから手っ取り早く稼ぎたいと。」


「おお!よくわかったなデブ。確かに今つけてるやつ黒ずんでる。」


 田中と頼人は中二病ごっこに飽きたようだ。若生が包帯やめればいいのにとつぶやく。


「あのさぁ太郎君。ユニークモンスターがそうポンポン湧くわけないでしょ?それにこの学園内で取れた魔石は俺たちの手元には残んないよ?」


 速水がもっともなことを言う。寺門は太郎と呼ばれたことに対して言い返す気力もなくうなだれた。なんでそんなこともわからないのにこの学園に入れたのだろうかと疑問に思いながらも、目の前で落ち込まれると気の毒になる。頼人は寺門の肩にそっと手を置くと口を開いた。


「落ち込むな太郎。邪神である俺が魔女の秘薬をやるよ。」


「いやそれ『ねりねりねりね』じゃん。」


 スタイリッシュにお馴染みのパッケージのお菓子を差し出した頼人に速水が突っ込んだ。寺門は心なしか嬉しそうに受け取る。どうやら好きらしい。ねりねりねりねを見つめている寺門に食堂の座席の隙間を縫うようにしてやってきた藤堂が声をかけた。


「寺門君そろそろ行くよ。」


血塗られた銃火(ブラッディ・ガン)か。お迎えご苦労。」


 場の空気が凍る。ざわざわとする食堂の中でそこだけがやけに静かに感じた。


「ぷっ ブラッディ先輩お疲れ様っす。」


 沈黙を破ったのは頼人だった。


「ブゥァハッハッハッハブラッディ・ガン!ブラッディ・ガン!」

「ぶはっちょっやめてやれよ!ブラッディ・ガンぱいせんかわいそうだろ!?」

「ヒィーッ嘘だろ!?藤堂がブッブラッディ・ガンんんんんんん」

「プッククククククククク」


 その時の藤堂は今までに見たことのないくらい盛大に顔を引きつらせていた。女性陣に後から聞いたことだが、寺門は藤堂のパーティーメンバーであるらしい。それを聞いた頼人と田中は初めて藤堂に同情の念を覚えるのだった。

 

 




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