18 足りない
昼休み、頼人達パーティーと立原、木下は食堂に来ていた。ご飯のお替りが自由なこの学園の食堂は食べ盛りの高校生たちの財布にやさしい。仕送りを減らされていた田中がやせずに済んだのはこのご飯と、おかずを多めに乗せてくれる気のいい食堂のおばちゃんのおかげだろう。
5人は食事の乗ったトレーを持って席を探す。
「あ!アマヨリたちだ。こっちあいてるよー?」
そこそこ席が埋まっている食堂の一角で、戸田が腰まで届く長いポニーテールを揺らしながら呼んだ。高く澄んだ彼女の声は大きくなくてもよく響く。冬香たちのパーティーも来ていたようだ。
冬香のパーティーには戸田と若生の他にも2人のメンバーがいる。もちろん2人とも女子生徒だ。一人は若生と同じく槍使いの茶髪茶目の少女、柳美玖だ。短めの髪を後ろで一本にまとめている。もう一人はボウガンを得物とする緑髪緑目の少女、浜田愛理だ。本人は気にしているようだが、頼人はタヌキに似た丸顔に愛嬌があると思っている。
断る理由もないため彼女たちと同じ長テーブルに着く。示し合わされたかのように冬香の隣に座らされた頼人は内心で苦笑した。この年頃の少女たちは恋愛ものの少女漫画や映画が好きだ。冬香を伴って1組の教室に突撃したあの光景は彼女たちの目には映画のワンシーンのように映ったのだろう。事あるごとに頼人と冬香をくっつけようと画策している気がする。
頼人自身冬香のことは嫌いではない。むしろ外見は美人で素直な内面は可愛らしいと思う。身長にあまり差がないところが気にはなるが、頼人も男子高校生だ。冬香のような彼女ができるなら普通にうれしい。しかし冬香本人はだめなのだ。父親のような探索者となり、いつか幼馴染である藤堂に勝つという目標をもつ彼女の足かせになるようなことはできない。それに冬香から向けられているものは恋情ではなく年上の兄に向けるような信頼だ。その信頼を裏切るようなことはしない。
冬香から無邪気な笑顔を向けられるたびに起こる葛藤に悶える頼人に、田中は気が付きながらも見て見ぬふりをしてくれている。そんな田中に「もう俺、おまえと結婚しようかな。おっぱいあるし。」ととち狂ったことを言って盛大にドン引かれたことは記憶に新しい。普段は引かせる側の田中にとっては珍しい体験だった。
「頼人はパーティーメンバー増やさないの?」
咀嚼していたハンバーグを飲み込んだ冬香が聞いた。
「バランス的に前衛がもう一人欲しいんだけど、適任者がいなくてな。」
トマトにホークを突き刺しながら頼人が答える。
これは学園内初めてのダンジョン探索の後のパーティー会議で話に上がったことだ。初級ダンジョンだからこそ問題はなかったが、魔物が集団で来た時にどうしても中衛である田中が前衛になってしまう。本来なら敵を抑える前衛の隙間から槍の長いリーチを生かして核を狙うのが好ましい。第一パーティーの適正人数が4人~6人であるため足りていないのだ。頼人の存在が特出しているため近づくを相手を下手に警戒したことが裏目に出た。その点冬香のパーティーは前衛2人中衛2人後衛1人と理想的だ。
「ああ、もう大半がパーティー決まっちゃってるもんね。」
冬香の言う通り、ほとんどの生徒が既に仮パーティーを組み初級ダンジョンに挑戦している。まだパーティーを組めていない人間は訳ありということだ。
「貴様が闇の使徒、ネオスライムを滅したという雨宮頼人か!!!」
訳ありそうなやつが来た。




