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Division

コータは燐光が漂い示す方向へ駆ける。目の前の道のある一点で青白く輝いた。


コータは息を切らしながら周りを見渡し、古く黒ずんだ扉を発見する。


恐らくこれが神様の言っていた転移のための部屋であろう。そう思い、扉を開ける。


扉の向こうの部屋はぎっしりと詰まった本棚に囲まれ、高貴であろう造りの机とその奥に座り、椅子にかけ、読書に興じる女がいた。


部屋の中央には、いかにも魔法陣とおぼしきものが床に描かれており、恐らくこれが転移のための魔法陣なのであろう。すると、


「──────やぁ、君は今逃げ回っている元人間君なのかなぁ?」


妖しい笑みを浮かべ、眼鏡をかけた、白い羽を広げる女は本から目を離し、獲物を狙う鷹のようにコータを見つめる。


「怯えることはないよぉ。私はねぇ、この転移の部屋の主へと案内する、いわば受付嬢みたいなものさぁ。君を捕まえて人の恋路を邪魔する野暮な連中に突き出すような外道でもないから安心してくれよぉ。」


そう言うと、女は本を目の前の机に本を置き、笑みを絶やさずに無言でコータを見つめる。


コータは、どうするべきか思案し、沈黙の時間が過ぎる。何も言わないコータにしびれを切らした女はやがて口を開いた。


「君を転移するのは構わないが、連れはどこにいるんだい?まさか女の子を一人置いてきたなんてこと、ないよねぇ?」


女は皮肉な笑みを浮かべ、更に続ける


「まあ、どうするかは君の自由だけどねぇ。まあ、この部屋にいるのならそこの椅子にでも掛けていてくれよぉ。」


女は一方的にコータを捲し立てると、一角の本棚の前に置かれた、本が積み重なっている椅子を指差す。興が覚めたといわんばかりに、再び読書に興じる。


コータは、少し逡巡してから口を開いた。


「自分の神格を神様に戻すにはどうしたらいいですか?」


女は突然の予想だにしない質問に顔を再びあげる。


「神格を戻すぅ?それは一体、どういうことだぁい?」


女は質問の意図が掴めず、コータに問いをもって返す。


「神様に神格をもらったので、恐らくそれを返せればどうにかなるのではと思ったのですが。」


女はコータの質問の意図を知り、そして───


「そんなこと、出来るわけないだろぉ?」


と、いたずらっ子のような笑みを浮かべ、コータを一瞥する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ハァッ!」


銀と紺碧の閃光が交わり、激しく火花が飛び散る。


シノはカノンの一閃を神剣をもって防ぐ。


カノンは自身の髪のように煌めく、黒い刀身の青い光を放つ剣を息を整えつつ、握り直す。


そして、カノンを再び睨み、憤怒と恐怖を持って問う。


「なぜ、人間に神格を与えたのに、神格は少し

も無くなってはいませんのっ!?」


シノは微笑をたたえ、口を開く。


「簡単なことさ。私はコータに神格を与えていないだけだ。」


「あの人間の手から出ていたのは間違いなく神の力でしたわっ!神格を与えていない人間にどうしてその力は使えますの!?」


「答えはこれだ。」


と、シノは戦闘の邪魔になるからと端に置いた麻袋を指差す。


「彼は幼少の頃からずっと参拝していたのさ。つまり、昔から溜めていた供え物たちは時が経るにつれ、私の神社に満ちる神力を多少なりとも蓄積されてたんだ。その神力を糧にコータの持っていた力を引き出したに過ぎないよ。」


「あの人間には、最初から力が宿っていたということですの?」


「あぁ、その通りだ。さぁ、愛しの君が待っているんだ。早く決着をつけようか。」


シノは凛と立ち、カノンを迎撃出来るよう、神剣の剣尖を向ける。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「まあ、簡単に言うとな。人間君の力は眷属ちゃんから貰った力ではなく、君自身の力ってことさ。故に、シノに返すことは出来ないよ。」


女はコータに真実を伝える。コータは唖然とし、頭をフル回転させ、事実の整理に努める。


「つまり、僕自身に元から神格が宿っていた、ということですか?」


「んにゃ。半分合ってるかなぁ。君のは神格といよりも霊格っていう方が正しいねぇ。なんせ、君は神様とより霊体だしねぇ。」


と言うと、開いていた本を閉じ、ニヤニヤとしながら眼鏡をクイッと持ち上げる。


「順序立てて説明すると、神格とか霊格というのはそういう力を使うためのもの、ようは蛇口とイメージしてくれ。で、神力とか呼ばれるものはその蛇口から出る水とイメージしてくれ。出来たかい?」


「えぇ。何となくは。」


「そうかぁ。んじゃ説明を続けるよぉ。」


変に間延びのする口調にどこか調子をのまれそうになるが、のまれている場合ではないと自身を叱咤し、話を聞く。


「君たち人間にも神格とまではいかないまでも霊格というものがあるんだよぉ。で、通常は君たちのそれは錆び付いて蛇口が回らないようなもんなんだよぉ。だから、君が力を使えるのはあの眷属ちゃんが錆び付いていた蛇口を無理矢理回してくれたってことだよぉ。」


それは、つまり俺は益々人間から離れたということか。まぁ、今更感あるけども。


「でもねぇ?それには物凄ぉい危険があるんだよ?」


女は目を細めニヤリと笑みを浮かべた。

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