その3 魔法の修業
専用の部屋に入ってからは本格的な魔法の練習が始まった。
まずは午前中同様、基本的な魔法講座をマリナから受ける。
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◆魔法は大きく分けて放射系と投射系に分かれる
◆投射系は対象に直接飛ばすもの。物理的な障害の影響を受けやすい。
放射系は対象となった周囲に直接影響を及ぼもの。物理的な障害の影響を受けにくい。
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「つまり、直接石を投げて当てるか、石を出現させるかの違いってことか」
「そうですね。あとマナ効率という面でも違ってきます」
「マナ効率?」
「投射系は魔法の効果そのものにマナを集中できるので、威力が高くできるのです」
「なるほど。生成されたマナをどこにつぎ込むかで変わってくるのか」
「あとは……魔法そのものの特性にも違いが出ます。例えば投射系は壁に隠れたり、飛んでくる方向を見て体術で避ける事も可能なので、命中率という面では確実性に欠けます。逆に放射系は対象付近に直接効果を及ぼせるため、高い確率で当てることができます。反面、効果その物とは関係のない部分にマナを多く消費するので、結果的に威力が低くなりがちです」
マリナが手にした光るペンを閃かせると、黒い壁に文字が浮かび上がってくる。
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◆生成されたマナは威力術式、具現化術式、移動術式に振り分けられる
◆どれにどれだけ注ぎ込むかで、魔法そのものに違いが出る。
◆五属性のマナに向き不向きがある。例えば火の精霊王配下の精霊が生み出した炎のマナであれば威力術式に向いているが、具現化術式には向いてない。炎のマナを具現化術式に注ぎ込んだ場合、見合った効果は得られない事が多い。ただしこれを利用した魔法もあり、炎のマナを具現化術式に全てを注ぎ込んだ火炎の霧は意外なほどの持続性が注目され…………
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「そして一時代を築いた炎のマナは……」
「ちょい、ちょい待って! 内容がかなりディープになってないか?」
気持ちよく説明を続けるマリナに待ったをかける。
何か途中から随分深い領域に入り込んでいってるような気がするんですが。
「す、すみません! つい夢中になってしまって」
マリナは少し下を向いて照れると眼鏡を直す。
だが暫く経っても講義が再開される様子はない。俺の気分を害したのか気にしているのかチラチラこちらを見てくる。
「いや、すまん。もう少し浅い所から続けてくれると助かる。しかし……魔法ってこんなに面倒なのか」
「はい! ちゃんと使おうとするととても大変です。ですから先人たちが幾つか使いやすいよう改良してきました」
彼女はホッとしたような表情になると、再びペンを宙に走らせていく。
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◆魔法を使用するたびにマナの配分を決定するのは大変なので、言霊を精霊に伝える際に、一連の流れをまとめて『魔法の名称』と『詠唱』という形で簡略化するようになった
◆よく使う魔法は『定型文』として精霊に記憶させれば、術者が詠唱を言う必要は無くなる
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「つまり本来は威力術式、具現化術式、移動術式の組み合わせで『魔法を生み出す』訳ですが、それを『詠唱』という形に置き換えることで、それらの作業工程をショートカットしているのです。例えば、炎の初級魔法である小さな発火は、国際的に詠唱が一般化されています」
マリナがリーフを呼ぶと、隅に座っていた彼女は恭しく一礼して立つ。
『彼の者を導く灯 それは始源の炎 燃えよ、小さな発火 発効!』
彼女が魔法と部屋の中央にある人形から炎が舞い上がった。
「今、リーフが出した一連の言霊が国際的に基本となっている詠唱です。威力の変化をさせたい場合や、範囲を変えたい場合は言霊を詠唱に追加していくのです」
「なるほど」
「詠唱を創ること自体は複雑で難しいのですが、既に『創られている』詠唱なら精霊に覚えさせてショートカットさせることもできます」
「ショートカット?」
「はい。例えば小さな発火の詠唱を精霊に覚えさせておけば、魔法士は『小さな発火』というキーネームを言うだけで使用することができます」
「そりゃ便利だな。一体どれくらい覚えられるものなんだ?」
「一般的には10個くらいでしょうか。ですがこれはもう単純に精霊のやる気次第ですね。勉強と同じと思って頂ければ」
「なるほど」
「初級魔法のように簡単な魔法であれば、威力術式、具現化術式、移動術式に大きな違いはありませんから、詠唱さえ覚えれば誰でもすぐに行使する事ができますわ」
目の前で魔法の仕組みを実演されると、心の奥底からえも言わぬ興奮が湧いてくる。何もない所からバンバン炎が出たり、風が出たりするのだ。俺にもそれが使えると言うのなら――。
「ミキト様にはまずこれらの初級魔法で詠唱の練習してもらいましょう。わたくしも精霊としてマナの生成を練習しなければいけませんから」
マリナが宣言する前に、俺は意気揚々と席を立ち、中央へ向かって歩き始めていた。




