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セイラ・サバーの事件簿  作者: あび


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9/11

幕間 ケイ・サヴァの独白

 これは誰かに語った話ではない。

 ただ私の中にある話だ。

 お前に届くかどうか分からない。しかし残しておきたかった。

 だから書く。


 私がこの世界に来た時、私はすでに老人だった。

 向こうの世界で生きた年月がそのまま体に刻まれていた。皺も、白髪も、節くれた手も、全部持ったまま来た。

 目が覚めた時、私は荒野に立っていた。

 空は灰色だった。地面は乾いていた。草一本なかった。

 最初に気づいたのは音だった。人の声がした。叫び声だった。

 遠くを見ると人がいた。一人や二人ではなかった。何百人、何千人、数え切れないほどの人間が荒野に溢れていた。そして互いに争っていた。奪い合っていた。騙し合っていた。傷つけ合っていた。

 魔法を使える人間が使えない人間を支配していた。何も持たない人間が獣のように扱われていた。

 川があった。しかし水が少なかった。川のほとりに動物の死骸が転がっていた。餓死したのだろう。骨だけになっていた。

 私は立ち尽くした。ここはどこだ。なぜ私はここにいる。

 ただ一つだけ思った。私は地獄に落ちたのだと。生き方が間違っていたのだと。


 ふらふらになりながら歩いた。当てはなかった。ただ立ち止まれなかった。

 そして地平線の向こうに見えた。木々だった。緑の木々が密集している場所が、灰色の荒野の中にぽつりとあった。

 あそこだけ違う。あそこだけ生きている。

 私は走った。老いた体で走った。転んだ。立ち上がった。また走った。

 しかし入れなかった。森の縁に立った瞬間、見えない壁があった。手を伸ばすと押し返された。森が私を拒んでいた。

 私はその場に膝をついた。もう立てなかった。

 どうして。どうして私はこんな目に遭わなければならないのか。

 涙が出た。老人が荒野の地面に膝をついて泣いていた。情けなかった。しかし泣かずにいられなかった。

 その時だった。すっと、という音がした。

 顔を上げると森の壁が開いていた。木々が左右に分かれて、細い道ができていた。招いていた。私を招いていた。


 森の中のことはよく覚えていない。歩いていた。光があった。柔らかい光だった。そして泉があった。

 次に目が覚めた時、私は泉の縁に横になっていた。体が軽かった。頭がはっきりしていた。

 傍らに宝石があった。いくつも。色とりどりの宝石が泉の縁に並んでいた。

 手を伸ばして一つに触れた。その瞬間、何かが体に流れ込んできた。魔法だった。誰かに教わったわけではなかった。ただ触れるたびに体の中に刻まれていった。

 私は立ち上がった。誰かに命じられたわけではなかった。しかしその瞬間に分かった。これで何かをしなければならないと。


 森を出た。荒野に戻った。しかし今度は違った。私には力があった。

 最初に小さな村を作った。荒野の中に水を引いて、土を耕して、種を蒔いた。魔法で一つずつ丁寧に。

 人が集まってきた。争っていた人間たちが、安全な場所があると知ると集まってきた。

 村が町になった。町が国になった。国同士が争った。私は間に立った。力で止めた。知恵で収めた。

 少しずつ世界が変わっていった。理想に近づいていると思っていた。


 ある村があった。小さな村だった。魔法使いの家系が代々住んでいた。

 私はその村に立ち寄った。三日だけ泊まった。

 母親がいた。祖母がいた。小さな女の子がいた。温かい家族だった。

 食事を共にした。星を見た。畑の野菜を褒めた。何でもない夜だった。

 しかし何でもない夜だったからこそ、あれほど大切な夜だったのかもしれない。

 私はその村を去った。そして一ヶ月後に、あの村が燃えたと聞いた。

 私の名前が使われていた。私の魔法が原因だという嘘が広められたと。

 生き残ったのは小さな女の子だけだったと。

 その知らせを聞いた瞬間、私の中で何かが割れた。

 私が力を持っていたから。私が動いていたから。あの家族が死んだ。

 力を持つ者は必ず誰かに利用される。

 私はその単純な真実を、あの村が燃えて初めて理解した。遅すぎた理解だった。


 それからだった。私の中で二つの声が争い始めた。

 一つは言った。力を使い続けろ。もっと大きな力で世界を守れ。

 もう一つは言った。力を捨てろ。力があるから人が死ぬ。

 国が平和になるにつれて声は大きくなった。平和な国が増えるほど、私の葛藤は深くなった。

 そしてある夜。もう一人の私が現れた。鏡を見ているようだった。同じ顔。同じ声。しかし目が違った。

 その目は恐ろしかった。私自身の中にある一番暗いものが、形を持って現れたようだった。

 私は恐れた。だから魔法を使った。急いで使った。十分に考えずに使った。

 もう一人の私を切り離して、西の森の泉に沈めた。

 その瞬間に私は誓った。もうこれほどの魔法は使わない。生活魔法だけで生きる。力に頼ることをやめる。

 そして封印の旅に出た。


 良かったのか悪かったのか今でも分からない。

 ただ一つだけ確かなことがある。

 私はただ、日々を生きる人が笑顔になれる場所を作りたかっただけだ。

 それだけだった。

 その単純な願いが、どうしてこれほど遠くなってしまったのか。


 そして私は気づいた。自分には続きを生きる力が残っていない。

 封印の旅を終えた時、私の体は限界に近かった。

 しかし沈めたもう一人の私はいつか蘇る。封印は完全ではなかった。私の封印が解けていくにつれて、あちらの封印も解けていく。それが分かっていた。

 だから誰かに続きを頼まなければならなかった。誰に頼むか。

 考えた時に、一つの顔が浮かんだ。まだ見ぬ顔だった。しかしその顔には見覚えがあった。

 遠い記憶の中にある顔に似ていた。向こうの世界で私を育ててくれた人の顔に。祖母の顔に。

 私はその顔を持つ者がいつかこの世界に来ると確信した。理由は分からなかった。ただ確信があった。

 だから準備した。各地に足跡を残した。言葉を残した。宝石を残した。西の森に紋様を刻んだ。

 あの子が来る時のために。あの子が選択する時のために。

 私が間違えた場所で、あの子には正しく選んでほしかった。

 力は奪うものではない。力は生まれるものだ。それだけを伝えたかった。それだけでよかった。

 あとはあの子が決める。私が決めることではない。


 名前を呼ぶとしたら何と呼べばいいか分からない。

 ただ一つだけ言えることがある。

 お前が来てくれてよかった。この世界に来てくれてよかった。


 じいさんより


── 幕間 終 ──


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