第八章 光の後に
それは夜明け前に起きた。
私たちは街道沿いの宿に泊まっていた。眠っていた。しかし突然、瞼の裏が白くなった。
窓の外が光っていた。
西の方角に光があった。光というより、光の爆発だった。夜空が昼間のように白くなった。一瞬だけ。しかしその一瞬が恐ろしく長く感じた。
森の方角だった。西の大きな森の方角から、天を突き破るような光の柱が上がって、そして一瞬で消えた。
宿全体が揺れた。廊下で人が叫んでいた。
私は窓枠を掴んで西の空を見た。もう光はなかった。しかし空の色が違った。うっすらと白みがかった異様な色をしていた。
宝石が震えた。強く。今まで感じたことがないほど強く。
リオンとヴィサラとセイヴァンが部屋に飛び込んできた。
「見たか」とリオンが言った。
「見た」と私は言った。「ただの光じゃない。西の森に何かある。あの光はそこから来た」
「魔法にしては規模が違いすぎる」とヴィサラが言った。顔が青かった。「あんな光、見たことない」
「行く必要がある」と私は言った。誰も反論しなかった。
宿を出ようとした時だった。街の方から声が聞こえてきた。怒鳴り声と悲鳴が混ざっている。
「兵隊が来た」と宿の主人は青い顔で言った。「領主の兵隊が。ただ様子がおかしい。剣を持っていない。手から火を出しているとか水を操っているとか」
「魔法を使う兵隊」とリオンが言った。
「宝石を持つ人間が狙われる」とヴィサラが言った。「各地に散らばっている宝石を力で集めようとしている」
私の頭の中で地図が広がった。宝石を持つ人間。タルム村のウォルド家の母親。カルセのリオンの父親。そして私。
「急がないといけない」と私は言った。
街を抜けながら状況を確認した。魔法部隊は三方向から来ていた。四大元素を操る攻撃魔法。火、水、風、土。生活魔法とは比べ物にならない規模だ。
この時代にこれだけの攻撃魔法を見た人間はほとんどいない。混乱は当然だった。戦争の始まりと同じ状態だった。
「四大元素の魔法を短期間でここまで使えるようにするには、何か別の力が必要なはずだ」とセイヴァンは言った。「宝石の力を使って兵士に魔法を持たせたのかもしれない」
街の外れに出た時だった。リオンが立ち止まった。
「俺は帰らなければならない。カルセだ。父と母が危ない」
「行って」と私は言った。迷わなかった。「お父さんとお母さんを守って。それが今あなたのすべき一番大切なことだ」
「集合場所は」
「タルム村。全部が落ち着いたらそこに集まる」
リオンは頷いた。それから一瞬だけ躊躇った。「セイラ」
「何」
「無茶するな」
「しない。大胆と無茶は違う」
リオンは小さく笑った。初めて見る笑い方だった。それから走り出した。あっという間に人込みの中に消えた。
次にヴィサラが口を開いた。「私はここ周辺の村を回る。回復魔法が使える。怪我人の手当てをしながら、宝石を持っている可能性のある家に警告を出す」
「一人で大丈夫ですか」
「大丈夫。私は組織にいた。どう動けばいいかは分かる」
「タルム村に集合。必ず来てください」
「行くわ」とヴィサラは言った。「あなたこそ気をつけて」
彼女も走り出した。明るい茶色の髪が朝の光の中に消えた。
私とセイヴァンが残った。
「一つ気になっていることがある」とセイヴァンが言った。「私たちの旅の軌跡を振り返ると、タルム村から始まって、カルセ、ネルム、サーヴェル、ガルドナ。全て西へ向かっている」
私は足を止めた。頭の中で地図を広げた。確かに。全体として西へ向かっていた。
「誰かが誘導していた。気づかれないように、自然な流れで西へ向かうように」
「じいさんの足跡も西へ向かっていた」と私は言った。「じいさんも知っていた。西の森に何かがあることを。だから私をそこへ向かわせようとしていた」
「黒幕も同じ方向へ私たちを誘導していた。目的は違うだろうけど」
「両方かもしれない。じいさんは私が西へ行くことを望んでいた。黒幕も私を西へおびき寄せようとしていた。二つが重なっている」
「それでも行きますか」
「行きます。じいさんが望んでいたなら。そこに答えがあるなら」
西の森が見えてきたのは昼過ぎだった。大きな森だった。遠くから見ても分かるほど大きい。
近づくにつれて何かがおかしいと気づいた。森の縁の木々が、一部焦げていた。
しかし中心部へ向かうほど、逆に木々が青々としていた。
「中心部から力が溢れ出して、縁の部分が焦げた。内側から外へ向かって爆発した」とセイヴァンが言った。
「中心部に何かある」
私は森の入り口に立った。宝石が震えた。呼ばれている気がした。「行きましょう」
森の中は静かだった。鳥の声もなかった。虫の声もなかった。ただ二人の足音だけが聞こえた。
歩くほどに木々が大きくなった。そして森の中心部に出た。
開けた場所だった。直径で二十歩ほどの円形の空間。
地面に何かが刻まれていた。円形の紋様だった。複雑な線が幾重にも重なっている。
私は紋様の縁に歩み寄った。手をかざした。宝石が激しく震えた。
そして今まで一番強い映像が流れ込んできた。
じいさんがいた。この場所に立っていた。私の知るじいさんより、ずっと若々しく見えた。
じいさんの周りに光が溢れていた。凄まじい光だった。しかしじいさんの顔は穏やかだった。
じいさんは地面に向かって何かをしていた。この紋様を刻んでいた。一本一本の線を丁寧に刻んでいた。何時間もかけて。
やがて紋様が完成した。じいさんは立ち上がって紋様を見下ろした。そして呟いた。
「お前が来る時まで待っていろ」
「これはお前のためだ」
「お前が選択する時のために」
映像が消えた。
私は紋様の前に立っていた。「じいさんがここにいた。この紋様を刻んでいた。私のために」
その時だった。セイヴァンが森の奥に目をやった。「誰かいます」
木々の間に人影があった。老人だった。七十代くらいだろうか。白い髭を蓄えた小柄な老人。杖をついて歩いている。しかしその目が澄んでいた。何もかも知っているような目をしていた。
じいさんの目と同じ色をしていた。
「来たか」と老人は言った。
「この森の番人だ」と老人は言った。「ケイ・サヴァに頼まれた。お前が来るまでこの場所を守っていてくれと」
「五十年前に。あの人は全部知っていた。お前がここに来ること。この紋様が必要になること。全部」
「今朝の光は何だったんですか」
「黒幕が動いた。紋様に触れようとした。しかし拒絶された。その反発の光だ」
「この紋様はケイ・サヴァの孫にしか触れられない。それ以外の者が触れると弾き返す」
「黒幕の顔を見ましたか」
「見た。ただお前自身の目で見た方がいい。私が言っても信じられないかもしれない」
「急ぎなさい」と老人は言った。「黒幕は今日の失敗で次の手を打つ。タルム村が危ない」
森を走って抜けた。セイヴァンが隣を走った。
「タルム村まで急げば二日」とセイヴァンは言った。
「急ぎましょう」
二人で走った。平野を走った。
タルム村に仲間が向かっている。リオンが走っている。ヴィサラが走っている。
じいさんが守ろうとしていた全てのものが、今タルム村に集まろうとしている。
私も走った。懐の宝石が走るたびに揺れた。温かかった。
じいさん。全部が繋がりそうです。もう少しだけ待っていてください。
── 第八章 終 ──




