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初めてのデート……?

今回もある意味タイトル詐欺かも……まぁ、後半はお色気シーンなのでお喜びいただけるかもしれません

 夕張が旭日による『武装おしおき』を受けた翌日、旭日は他の軍幹部に陳謝しつつ会議をやり直したのだった。

 新型航空母艦『赤龍』はアメリカの『フォレスタル級攻撃空母』と呼ばれる船をモデルにしており、資料からアングルド・デッキと蒸気カタパルト、さらにミラー着艦装置などを導入する初めての近代的航空母艦となる予定であった。

 この船は主としてジェット機を運用しやすくするために大型化しているため、建造予算も大幅に向上している。

 そのため、配備できる数には限りがある。

 旭日の予定では多くとも6隻が限界だろうと踏んでいた。

 空母は燃料を含めた資材をバカ食いする戦艦とは、また違った意味で金食い虫だからである。

 燃料や資材ももちろんだが、そこに搭載する航空機の整備補修維持など、多くの人手や資材を消費していく存在だ。

 某ブラウザゲームで戦艦や正規空母を無計画にぶん回した結果、資材不足で涙目になった提督諸氏もいらっしゃるだろうとは思うが……その辺りは『お察しください』という奴である。

 それはさておき。

 その会議が終わった後で今度は扶桑と共にアヅチ城へ登城し、明治天皇に今後の計画を報告するのだった。

「……ということでして、この新型空母『赤龍』が完成すれば、間違いなく我が国は大いなる力を手にすることになりましょう。なお、艦載予定の機体も開発中です。『橘花改』と『閃電改』の経験を大いに活かすこととなるでしょう」

 もっともその場合、橘花改を参考に、油圧カタパルトを装備したうえで艦上運用しやすい航空機を作れ、という話になるだろう。

 例えば『デ・ハビランド ヴァンパイア』の海軍型、シーヴァンパイアや『Fー86』の派生型(正確には『XPー86』の派生型)を改良した『FJー2~4』などがいいところであろう。

 以前も述べたが、できれば『Aー4』スカイホークを搭載できれば御の字だ。

 スカイホークは速度以外の能力が第一世代ジェット戦闘機の水準を大きく超えた優秀な航空機なのだ。

 流石に稼働率が低くなっている、完全な引退寸前とはいえ、令和の世においてもブラジルでは現役である、といえばその長寿ぶりが知れるというものである(なお、2025年時点でほぼ完全に引退した)。

「おぉ、それはすさまじいことであるな。だが、旧来の空母はどうなる?」

「ご心配には及びません。旧来の空母は『あきつ丸』などと同様の大発動艇、あるいはより重量のあるものを搭載できる改良型『超特大発動艇』を使用する揚陸艦に改装するか、戦闘機を搭載しての船団護衛の護衛空母にするのもアリでしょう。諸国と言えば、グラディオン王国の使節はどうされました?」

「うむ。彼らは『我が国とぜひ国交を結びたい』と考えているようで、我が国の産物を幾つか持ち帰り、それで上層部を説得するつもりのようだ。もし仮に、だが、グラディオン王国と国交を締結し、軍事同盟を結ぶことができればどうなる?」

「はい。彼の国の生産能力は……一部ではありますが我が国と遜色ないものどころか上回っている部分があります。我が国の新たな技術を取り入れれば、強力な同盟国になるでしょう。我が国もまた、彼の国の技術……特にテレビなどの映像技術を取り入れることができれば、国民に情報を多く届けることができるようになるはずです」

「これまではラジオ……それも鉱石ラジオが精一杯だったからな。国民に新しい娯楽を施すことができるな」

 正確にはこれまでもテレビはあったのだが、それはアイゼンガイスト帝国の魔導式テレビジョンであったため、非常に高価であった。

 だが馴染みのある科学式のテレビを作ることができれば、国民に広めることもできるだろうと旭日は考えていたのだ。

 そのため、日本と同じ科学文明国家でありテレビを実用化している(しかも聞けば、関連する技術者がグラディオン王国に転生していたらしく1970年代後半水準のモノを作っているというチートな一面)というグラディオン王国とは絶対に交流を結びたかったのだ。

 テレビ放送が始まれば、国内にいるであろうオタク及びテレビ関連の人間を集めてアニメを作らせたい。

 それが旭日の理想であった。

 その日の報告は終わったため、退室してキイの自宅へ戻ろうとした旭日だったが、明治天皇に『旭日よ』と呼び止められた。

「はっ、いかがいたしましたか?」

「うむ。突然だがお主は娘の……エリナのことをどう思っておる?」

 本当に突然の思わぬ質問にポカンとしてしまった旭日だったが、すぐに表情を引き締めた。

「エリナ様は……とても明朗快活な方です。一見お転婆に見える部分もありますが、それは強い好奇心の表れではないかと思っております」

「そうではない。お主個人が、エリナという女をどう思っているか、という話だ」

 思わぬ話(あくまで旭日にとっては、だが)に、またもポカンとしてしまった旭日だった。

 まるで、これでは結婚相手としてどうかと聞かれているような気分であった。

「旭日よ、お前は我が国を強くすることばかりを考えていて自分のことはなにも考えていなかったようだな」

「え、あ、その……まぁ」

 明治天皇はいつの間にか微笑んでいた。国を強くするためにと頑張っていた旭日のことを大事に思っているのもそうだが、その旭日が自分のことを疎かにしていたのがなんとも言えず笑ってしまったのである。

「旭日よ、お主が国のためにと粉骨砕身の上働いてくれているのは嬉しい。しかしな、もう少し己が身の上を顧みるのも大事だと思うぞ」

「それは……返す言葉もございません」

 医者の不養生と言われては赤面するほかない旭日だった。

「で、エリナのことを女性としてどう思うのだ?」

 旭日は明治天皇の質問の意図が読めないながらも、エリナに会ってからのことを思い出しながら語りだす。

「初めてお会いした時は、『とても綺麗な方だ』という印象でしたね。稲穂のような金髪に、雪のような白い肌……そして有無を言わせぬような威厳……それら全てを含めて『お美しい方だ』と思いました」

「そうか。そう思ってくれたならば嬉しいぞ」

 旭日は姉の撫子の影響もあって『女性の欲しがりそうなもの』や『女性の喜びそうなもの』ということには詳しい方だが、『女性の気持ち』にはそれほど敏感な方ではない。

 もっとも、当人も自覚しているので夕張など遠慮のいらない一部を除いてはかなり気を遣っているのだが。

 重ねて言う。夕張は別。

「それは重畳だな……時に旭日よ、お主は我が国に来て以来、あまり休みを取っていないと聞くが……」

「取っていない、というよりは取れないほどに忙しい、というのが実情でございます。私は海軍のことのみならず陸軍のこと、航空機のことにもそれなりに通じていることから、自然と各部門から意見を求められるのです」

 実際、マテリアル部門や航空力学に関してはもっと専門的に知っている人物を転生者として民間から発掘してもいるのだが、『大まかな形状や発展の仕方』については令和の世まで生きていた旭日の方が詳しいため、あちこちから呼ばれてしまうのだ。

 もっとも、先ほども述べた通り専門的な知識自体は知っている人物がそれらを広めようと教育を開始していることもあって、近代的なジェット機に関する知識もそれなりに広まりつつあった。

 旭日が手掛けなければならない仕事は減っている……かと思いきや、建築方面からも『近代的なデザインを考えてほしい』であったり、漁業方面からも『船のデザインと漁業の新しい方法を教えてほしい』であったりと、民間方面からも色々な意見を求められ始めたため、まだまだてんてこ舞いなのだ。

「そうであったか。明日以降の予定は?」

「明日、ですか?」

「うむ。どうだ?」

 旭日が後ろに立つ扶桑を確認すると、扶桑がメモ帳を開いた。

「はい。明日はこれまで陸軍と海軍でそれぞれ保有していた航空隊を統合し、空母艦載機及び揚陸艦の護衛部隊を除く航空部隊を改めて『空軍』とすることに関する会議、それに午後からは商工会における『新たな大日本皇国の特産品開発』に関する会議がありましたが……」

 前者はともかく、後者は曲がりなりにも軍人(しかも国賓レベルの人物)が参加する会議ではない。

 だが、旭日は特産品(要するにお菓子とか食べ物)にミリタリー色を混ぜていくことで、周辺国家(この場合の周辺国家は日本と友好が薄い国家)にも日本の能力をある程度知ってもらおうという考えであった。

「そんなところにまで顔を出しておるのか……よし。朕の権限で明日から1週間は休むことを許す。他の部署の者たちには朕から声をかけておこう」

「そ、そんな!今の仕事を急に休むわけには……」

「いや少しくらい休まねば逆に良くないだろうに」

 それもこれも、平成・令和の世におけるブラック企業での社畜を経験したことがある男の悲しい性である。

 臥薪嘗胆を合言葉に頑張っていた日露戦争への準備の頃の軍人たちや、話に聞いていた労働者よりもひどい、と明治天皇が判断したほどなのだから、当然と言えば当然なのだが。

「案ずるな。元々ただでさえ重要人物のお主が体調を崩したら元も子もないのだ。朕がきちんと軍部及び商工会に説得の手紙を送ろう」

「それは……色々とありがたいことです」

 ただでさえブラック極まりない労働環境(ただし神様特典で体力の底上げがされているため、前世で働いていた頃に比べればかなり無理がきくのだが)に辟易していた部分はあるため、少しくらい休めるならば休みたいのは事実であった。

「しかし陛下、本当によろしいのでしょうか?」

「構わぬ。というか、海軍の軍人たちからは『たまには提督を休ませてあげてくれ』と声が上がっておるのだ」

「へ?海軍から?」

「海軍はお主の働きぶりと逸脱ぶりをよく知っている。だから最近通常業務でもできることは他の者がやっておるのであろう?」

「はい……最近では艦長たちも色々手伝ってくれるようになりまして。それでも仕事は山積みなんですが」

 その通りであった。

 旭日が官民問わず、陸海空問わずにあちこちを走り回っているものだから、本拠地のはずの海軍の方が逆に気を遣って仕事を分散してなんとか回している状態であった。

 当然のことながら、陸軍もかなり恐縮しているのである。

「ならば数日くらい良いではないか。いざという時にお主が倒れてはどうにもならぬ。ただでさえヴェルモント皇国との戦が起こるかもしれぬと皆ピリピリしておるのだ。そんな中でお主になにかあっては困る。なので朕が許す。明日から1週間は休め」

「そ、そう仰られるのであれば……」

「ただな。お主も働かねば、と思っている部分があるのだろう。そこでだ、おぬしには別で仕事を頼みたい」

明治天皇がなにを言いたいのかがわからず、旭日は頭に『?』と疑問符を浮かべる。

「明日から、娘のエリナと共に北東の温泉地へ行ってきてくれぬか?」

「温泉地、ですか?」

「うむ」

 大日本皇国の地下には大きな火山帯が存在し、これによって前世の日本同様に各地で温泉や鉱物が精霊の加護もあって湧いて出てくるという特徴がある。

 そのため、温泉地は元々各地に存在したのだが、旭日が来たことによって各地の開発が大きく進んでいたのである。

 北東方面には北部のオオミナト鎮守府にほど近いところに温泉地として整備された場所としてハチノヘができたため、そこへ行ってほしい、ということである。

「エリナがお主のことを随分と気にしていたのでな。それに、たまにはいつもの娘たちと離れるのもよいことではないか?」

 確かに、旭日は転生してから常に艦長娘たちと一緒であった。

 だからこそあえて一度離れるのもアリなのかもしれない、と明治天皇は考えたのである。

 ついでに娘と心の距離を縮めさせようという親心もあるのだが。

「エリナはお主ともっと色々と話をしたいそうなのじゃ。視察がてら、娘の相手をしてやってくれ」

「そういうことでしたか。心得ました。明日より1週間、温泉地の視察に行って参ります」

「いずれは軍の者たちも利用することになるだろうからな。これは間違いなく重要な役目だ」

 そう、実際に前世における大湊の近くには温泉はもちろんだが、いわゆる歓楽街があった。

 現代でこそそう言った風俗的なものは悪とされている一面があるが、兵士たちの士気を『健全に』保つ上では、意外と重要なことである。

 旭日としては敵対した国の兵士、さらに一般庶民たちにはある程度寛容であらねば、と思っているので、それは大事だと考えていた。

「ははっ……エリナ様をそんなところへお連れして大丈夫なのですか?」

「問題ない。エリナには温泉街『だけ』を視察するように言うておく」

「あ、なるほど」

 歓楽街関連は旭日だけで視察しろ、ということらしい。確かに、曲がりなりにも皇女に対して歓楽街を見せるわけにもいかないだろう。

 これもまた、明治天皇からの旭日へのご褒美のようなものなのだろう。

「畏まりました。陛下からのお心遣い……この旭日、ありがたく頂戴いたします」

「うむ。たまにはゆるりとしてこい」

 その夜、キイ鎮守府の近くにある旭日の家に戻ると、艦長娘全員を集めてそのことを伝えた。

「と、いうことで、明日から1週間、俺は北東にある温泉地ハチノヘへ行くことになった。北方を拠点としている満潮たちや香椎とは会うかもしれないが……他の面々とは基本的に会えないだろうな」

 すると、矢矧が手を上げた。

「司令がいらっしゃらない間、私たちのことは……」

「基本的には扶桑に一任する。扶桑は俺の秘書でもあるからその辺りの勝手はわかってるしな。演習関連は山城に任せた」

 その直後、皆の表情がピクリと引き攣ったが、これは無理もない。

 なにせ山城はその昔、練習戦艦として『地獄金剛、鬼山城』と海兵たちから恐れられた『訓練の鬼』なのだ。

「まーそういうこったから後輩共……覚悟しとけよぉ?」

 山城のニヤリとした笑い方に、『ひいぃ……』と背筋が寒くなった者が多かったという。

「空母及び航空機関連については雲龍たちに任せる。飛鷹と隼鷹はその補佐だ」

「「ははっ。お任せくださいませ」」

 飛鷹と隼鷹は商船改造空母としては速い25ノットという速度を出すことができたために、『蒼龍』、『飛龍』に次ぐ空母戦力として期待された存在であった。

 ただの能力というだけならば『雲龍型』の方が強い(搭載量はほぼ同じだが)が、飛鷹と隼鷹と比べれば実戦における経験値が違いすぎる。

 彼らによる訓練もまた、過酷なものになるに違いない。

 すると、巻雲が手を上げた。

「司令、私たち駆逐艦はどうすればよろしいでしょうか?」

「駆逐艦は基本的に砲雷撃訓練と回避訓練かな。『秋月型駆逐艦』くらいの対空戦闘能力を持っているならともかく……『朝潮型』も『夕雲型』も艦隊決戦志向だからな。中途半端に伸ばすよりは徹底させた方がいい」

 特化志向。ある意味日本人らしい考え方である。

 すると、今度はヨーが手を上げた。

「司令、潜水艦の訓練ですが、潜水母艦は造らないのですか?」

「あ~それな。できれば『大鯨』みたいなちゃんとしたのがあるといいんだが……何分現在の造船所の展開力では正面戦力を揃えるので手一杯でな」

「「「「「「あ~……」」」」」」

 正確に言えば津軽のような敷設艦を含めた補助艦艇も専用のドックを作って建造しているのだが、なにせ今はヴェルモント皇国がいつ宣戦布告してきてもいいように正面戦力と燃料弾薬、食料などの補給備蓄更に輸送経路の確認などを行うので手一杯なのだ。

 特に輸送艦、武装輸送艦、水上機母艦の建造に忙しいため、海防艦艇は松型駆逐艦をメインにする必要があるだろう。

 とはいえ、造らなければいざという時に対応できないのも事実。

「ま、その辺は帰ってからおいおいね……ヨーたちはひとまず水上での晴嵐発着時間の短縮に挑戦してみてくれ。晴嵐に関しては水上機母艦と一緒に輸出も検討しているから、制空戦闘・急降下爆撃・雷撃など、それらの検証も含めてな」

「はい、わかりました」

 引き続き手を上げたのは姉の撫子であった。

「ひーくん、お姉ちゃんはどうすればいい?」

「姉さんは……扶桑のサポートを頼むよ。書類仕事を特に」

「わかったわ~」

 撫子は旧世界で証券会社に勤めていた。複雑な書類仕事ともなればお手の物である。

「ただ、問題は大和そのものだよな……なにせ停泊しているだけで1日5tの重油がなくなるって言うし」

「「「うぅ~ん……」」」

 戦艦大和はその巨体に搭載している46cm砲弾と装薬を誤爆させないために、停泊中も機関を起動してエアコンをつけておかなければいけなかったという逸話がある(無論それだけが理由ではないのだが)。

 実際、停泊しているだけでも電気系統を動かしたりするのに機関を動かす必要があるのでそこは問題だ。

 すると、大鳳が手を上げた。

「それなのですが、精霊に頼んで冷却魔法を用いれば電源の使用が控えられるという情報があります」

 思わぬ話に旭日は座っていた椅子からずり落ちてしまった。

「なぬ?そうなのか?」

「はい。電源の使用を控えるだけで主機関の使用率は半分を割ります」

「ま、マジか……だとすれば使用量は半分以下になる、のか?」

「完全にゼロとはいきませんが、これまでとは比較にならない省エネルギーになります。なお、電源の一部は地上から持ってくればよろしいかと」

 旧世界と異なり、電源も地上から持ってこれるようになっているため、大和が使用するものは最低限で済みそうであった。

 しかし本当に、精霊魔法と魔法陣学様々である。

「ハハハ……ま、それならいいけどな」

 今度は明石が手を挙げた。

「開発中の新兵器などに関しては撫子様に見ていただき、性能などをレポートにまとめていただいたうえで帰ってからご覧いただければよろしいでしょうか?」

「あんまり溜め込まないでね。あとがキツイから」

 帰ってきたら書類の山、なんてことになったらどこぞの仮面皇ではないが逃げ出したくなってしまうだろう。

「かしこまりました。その点はお任せください。解決できる点は司令の裁可を受けずに通しますか?」

「いや、さすがにそれはマズいな。姉さんも詳しい人だが、専門家を含めてちゃんと会議する必要があるからな。大変だろうけど溜めておいてくれ」

「はい。お任せを~」

 普段は真面目だが、意外とフランクな一面がある彼女は旭日が書類に囲まれている姿を想像したらしく、ニヤニヤと笑っていた。

「あんまり笑ってくれるなっての……まぁ1週間、色々と面倒をかけることになると思うが、よろしく頼むよ」

「「「はい!」」」

 その夜、お風呂に入っていた旭日は何事かを考えながらブツブツと呟いていた。

「司令、どうなされたのですか?」

 香椎と北上が『ヒョイ』と顔を覗き込んできたのを見ると、旭日は『いや、な』と歯切れが悪そうに言った。

「行く前にどうしても『諸国へ輸出する航空機とそれを運用できる船舶』について考えたくってさ……」

「まだそんなこと考えてたんですか。っていうかいくらなんでも仕事バカにもほどがありますよ」

 香椎が呆れたように言うと、北上もジト目を向けていた。

「司令、女の子と一緒にお風呂入ってるんだからもうちょっと女の子に『むほー』とか『ぐへへ』とか言って興奮してもいいと思う。私は空母や戦艦ほど胸やお尻の肉付きはよくないけど、触れば女の子という感じくらいはするはず」

 要するに、自分たちのこともちゃんと見てほしい、ということらしい。

 だが、そこにニヤニヤしながら樫野が口を挟んできた。

「まぁ司令の単装砲は素直に最大仰角になっているので司令の内心は窺えますけど、司令に好意を持っている女性だらけの場所なのですから、もうちょっとそれを表に出してもバチは当たらないと思いますよ?」

 本当は旭日としても彼女たちに手を出したいという欲求がないわけではないのだが、如何せん毎日が忙しいことと旭日本人がどちらかと言えばヘタレに近い気質なこともあって、未だに誰にも手を出していない。

 こんな風に積極的に迫ってくる北上や香椎がいるにもかかわらず、だ。

「逆にそんなこと言われて『はいそうですか』ってできるほど器用な人間だったら、とっくに彼女の1人や2人はできているって」

 だが北上はまだジト目を崩さない。

「でも司令、エリナ様の婿にならないかって陛下から言われてるんでしょ?」

「ちょ、おまっ、どこでそんな話を!?」

「軍の中でも持ち切りだよ。『司令は陛下公認のお婿さんだ』って」

 その豊かな胸を風呂の淵に『たぷん』と乗せながら、葛城も北上同様にジト目を向けてくる。

「実際司令はどーなんだよ?あたしらはまぁ一応存在としては人間じゃないからともかく、エリナ皇女のことはどう思ってんだ?なにも意識していない、ってわけじゃねぇんだろう?」

 山城の言葉に、『そうだなぁ』と旭日は顎に手を当てながら考える。

「確かに山城の言うとおりだ。エリィのことは間違いなく女性として意識しているし、キレイな人、すごい人だとも思う。ただ……」

「ただ?なにか不満でも?」

「いや、不満とかっていうよりは……俺自身の問題かな?」

「どういうことですか?」

 荒潮の言葉に『それはな』と言って聞かせるように旭日は言葉を続ける。

「俺は……確かに転生者で力も持っている。だが……それはあくまで太陽神様から与えていただいた力に過ぎない。俺自身の力じゃない」

「ですが、司令は私たちをうまく運用してくださっているではありませんか」

『そんなことはない』と旭日は大井の言葉に首を横に振った。

「メルフィット・ザンドラの時は烈風1機の損害で済んだけど、あの時だってもし相手が五体満足なら負けていたかもしれない。俺の生きていた時代に存在する『Fー15』や『Fー2』を多数投入していたとしても勝てたかどうか……それくらいの相手だったと思う」

 実際、魔龍種の強さは列強国基準でも戦略級であり、もしその力が十全であるならば最高速度は第一世代ジェット機並みの遷音速、投射力は重爆撃機である『Bー52』ストラトフォートレスに匹敵するものを有し、頑強さはちょっとした戦艦より硬い。

 現代戦闘機でも、飛び立つ前のところに対空誘導弾の波状攻撃で翼を損傷させて地上に落とし、対艦誘導弾の波状攻撃で戦闘力を削ぎ、最後に大量の爆弾を投下することで倒せるかどうかという存在だったと旭日は考えていた。

 メルフィット・ザンドラとの戦いに関しては、某ゲーム風に言えば『姫か鬼クラスが中破or大破状態で正規空母2隻、戦艦2隻、重巡2隻を有する万全な状態の艦隊に迷い込んできたようなもの』と考えている。

 オルファスター王国との戦いに関しては、元々技術水準が離れすぎていたため、数だけが脅威のノーマルモード……に限りなく近いイージーモードと言ってよかった。

 実際には相手の練度の低さもあってイージーモードどころかチュートリアルのような戦いでしかなかったが。

 だが、旭日はそんな相手にも慢心してはならないと自分に常に言い聞かせ、未だに80年以上技術が離れているであろうヴェルモント皇国を仮想敵として万全の準備を進めている。

 というか、慎重すぎる。

 俺ツエーをしようというわけではなく、単に慢心だらけでガダルカナル島撤退以後は敗北に次ぐ敗北を重ねていた帝国軍を資料だけとはいえ知っているだけにそう思っているのだ。

「今度の相手はこの世界で曲がりなりにも列強国というべき存在だ。ほんの少しの慢心で仲間にも死人が出るだろうし、なにより銃後の人々を巻き込みかねない。そんなことにしたくはないんだ」

 旭日の真剣な表情を見た香椎と北上は、『ドキン』と言わんばかりに頬を赤らめていた。

「そ、そうでしたか。司令のお心も知らずに失礼なことを……」

「ごめん、なさい」

「いや、皆が心配してくれることはとても嬉しいんだ。でもさ、だからこそそんな皆はもちろんだけど、エリィにも釣り合っているのかな、って」

 旭日なりに、転生者として得た力と己自身が似合っているのかどうかということは悩んでいたのだ。

 すると、天城と葛城が旭日の前に立つと、その手を取って自分の豊満な胸元に引き寄せた。

「ちょ、2人とも!?」

「確かに、司令は……旭日様は普通の男性だったかもしれません。ですが……」

 天城がちらりと葛城の方を見る。

「太陽神様に転生を許され、私たちを特典にすることを許されたという時点で、旭日様は十分すごい方なんですよ。いくら私たちの魂が太陽神様の下であなたの意のままになるように作られたと言っても、私たちのことを真に思って下さる方でなければこのような真似はできませんし、山城さんのように『好きにしてもいい』なんて言えないんです」

 普段は大人しそうな2人からの告白に、思わずドキリとしてしまう旭日。

 さらに、後ろからはヨーやヨーイがその豊満な肢体で抱き着いてくる。

「私たちはあなたのために存在します。あなたが望むのならば、できることはなんでもする覚悟と思いです」

「それこそが私たちの、今の存在意義ですから」

 その曇りのない瞳を見た旭日は、自分がそれなりに追い込まれて視野狭窄に陥っていたのだと気づいた。

「そっか……皆、そう思ってくれるんだな。ありがとう」

 旭日は自分の道筋もちゃんと見つけなければいけないなと考えながら、天城と葛城の胸から手を離すと、隣に座っていた北上と香椎の腰を抱いて引き寄せた。

「俺も俺なりに、頑張ってみるか」

 そんな旭日を、夕張や扶桑などは穏やかな顔で見るのだった。

正直、自分で書いていても『扶桑と山城以外のキャラ立たせるのが難しい』と感じていますが、それでも頑張って自分なりに表現しているつもりです。


次回は10月24日に投稿しようと思います。

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