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憂鬱の皇女

投稿遅れて申し訳ありませんでした。

ちょっと諸事情あって忙しかったので……


それと今回はタイトルと裏腹におふざけが結構あります。

『こんなことさせていいのか?』と言われるかもしれませんが、創作作品ということで1つ、お目こぼしください(^-^;

 旭日による軍増備計画(計画というよりは後付けだが)の提案の後、タカマガハラ・エリナは自室で写真を見ていた。

 そこには、戦艦『扶桑』の艦橋をバックに旭日、エリナ、そして扶桑と山城が写っている。

「どうやって旭日様を振り向かせればいいのかしら」

 特徴的なエルフ系の笹穂耳をピコピコと動かしながら、アジアと欧米系のハーフのような顔立ちで物憂げに考える姿はなんとも悩ましい。

 だが、彼女は皇女という立場上、恋愛などしたこともなかった。

 というか、突然現れて海賊を退治してくれた英雄のような男、旭日が初めてである。

 彼女の周辺の女官の一部に話したのだが、『テンプレですねー』とか『ファンタジーあるあるだぁ~』と茶化されるばかりでロクな助言ももらえていない。

 余談だがこの女官たちも平成日本人の転生者で、前世はガチオタだったのだ。

「このままでは、旭日様に振り向いてもらうことができません。ただでさえ、旭日様の周りには扶桑様や大鳳様、雲龍様に撫子お姉さまと美女揃いなのですから。なんとかしなければ……でも相談できる方なんて他に……あ」

 その時、エリナの頭の中で『近い年代の親しい女性』というワードに当てはまる人が1人だけいた。

 彼女は部屋を飛び出すと、親しい女官(軍で訓練した武闘派)を1人連れ、『裕福な商家の子女』に見える格好でプイと城を飛び出したのだった。



 なお、父である明治天皇がエリナに用事があるからと部屋に呼びに来た時、部屋に『ちょっとおでかけしてきます』という書き置きが残されているのを見て、『バカ娘はどこへ行ったぁー‼』と叫び、イトウ・シュンスケに『城下へ遊びに行くと言って出かけられました‼』と答えたのは別の話。



 そんなエリナは船着き場(今では改修されて石造りの立派なもの)に向かうと、船を出させた。

 見れば、軍の重責にある者がタクシー代わりに使っている零式水上偵察機や水上爆撃機・瑞雲もちらほら見える。

 従者や船着き場の係たちも『勝手知ったるなんとやら』と言わんばかりにエリナを城下へ送り出したのだった。

 30分ほどかけて上陸すると、まずは城下のとある一角にある中規模な西洋風の屋敷へ向かった。

 エリナはそこの家の扉をノックする。

『どちら様でしょうか』

「エリナですわ。メリア様はいらっしゃいまして?」

 すると、中で一瞬息を呑む音が聞こえた。

『しょっ、少々お待ちくださいませっ‼』

 小さく『パタパタ』と音がしたと思うと、扉が開いて20代前半のエルフ族の女性が顔を出した。

「姫様……御来訪されるのであれば事前にご連絡をとあれほど……」

「事前連絡などしたら父上にバレてしまうではありませんか」

「……」

 父の許可を取り付けてくる、という発想はエリナの中にないらしい。

 もっとも、そんな自由奔放な娘だと理解しているからこそ、明治天皇もそう簡単に許可を出すとは思えないのだが。

「で、メリア様は?」

「は、はい。日本に来てから調子がよろしいようでして、本日はお庭で絵を描かれております」

「わかりました。声はかけなくていいので、庭へ案内してください。彼女が絵を描き終わるまでは待ちますから」

「か、かしこまりました」

 そう、ここはオルファスター王国の第1王女、メリア・オルファスターのために用意された屋敷だったのだ。

 今エリナに対応した人物も元は日本の皇室付きの女官である。

 エリナとメリアは皇女、王女という立場に加えて『韻をふんだ読み方が同じ』という点からすっかり仲良し(あくまでエリナ視点)になっていた。

 名目上は『人質』という立場のメリアだが、体も弱く魔法を使うのにも一苦労するような病弱さなので、見張りという名目で世話係の女官と医務官を合計で10名ほど置いておくだけで済んでいた。

 旭日が『この方は逃げるようなことはしないでしょう』と太鼓判を押したのも大きかったようだが。

 エリナは女官に案内されて庭の方へ向かった。

 庭を見ると、ダークエルフの女性がピンと背筋を伸ばしながら、目の前に寝転がっている猫の絵を描いていた。

 猫はというと、山吹色の毛並みのフワフワした猫と、細身でサラサラの毛並みの黒猫が寄り添いながら陽だまりでスヤスヤと眠っている。

「あら、微笑ましい」

 猫は全く動じておらず、描かれるままである。

 しかしそれは、メリアが気配を完全に消しているからこそであった。

 それが見れば分かっただけに、エリナも彼女が書き終えるまで待っていることを改めて決めた。

 メリアは絵を描くことに夢中なようで、エリナが陰から見ていることには全く気付いていない。

 それから1時間、メリアは眠っている猫を描き続けた。

 描き終わった時には、油絵とは思えないほどに綺麗な2匹の眠り猫の絵が完成していた。

 メリアはよほど集中していたらしく、『ふぅ』と息を吐くと脱力した。

「お見事ですわ」

 不意に聞こえてきた鈴の音のような声にメリアが振り向くと、陰からエリナが顔を出していた。

「あっ、え、エリナ様……」

「しーっ。猫ちゃん起きちゃいますよ」

 エリナの言葉に口元を抑えるが、もう遅かった。2匹の猫は起き上がって伸びをすると、そのまま屋敷の中へ走り去ってしまった。

「あらら、逃げちゃいましたね」

「す、すみません……」

「いいんですよ、私が思わず声をかけたのが悪いんですから」

 エリナは庭へ出てくると、メリアの座っていた長椅子へ座り込んだ。

「ほ、本日はどうされたのですか?」

「いえ、その……」

 エリナはメリアのことを『同年代の友達』と思っているが、一方のエリナは自分のことを『敗戦国の人質』という感覚が強い。

 そのため、ついメリアはエリナを前にするとオロオロしてしまうのだが、エリナの方はまるで気にしていないので問題はない。

 そして、普段は元気で明るいエリナが、『モジモジ』とまるで初心な乙女のように(実際そうなのだが)なってしまっている。

「?なにかよろしくないことでもあったのですか?」

「じ、実は……ちょっと相談したいことがありまして」

 ちなみにメリアは自国がヴェルモント皇国に攻め込まれたことを既に知っているが、『列強の威を借りて威張っていた報いを受けたのです』と言って泣きながらも嘆き続けることはなかった。

 まぁ、そんな彼女なので、祖国のことはほぼ割り切っていた。

「まぁ、エリナ様が私に相談とは……どんなお話ですか?ヴェルモント皇国のことであればある程度はわかりますし、あっ、大陸国家の兵器についてでも……」

「あぁっ、いえ、そのぉ、そういうのじゃなくってぇ……」

「え?」

 エリナの言いたいことが分からずにキョトンとしてしまう。

「実は、その……と、殿方の気を惹くにはどうすればいいのかと思いまして……」

「えっ……?」

 メリアは自分の耳を疑ってしまった。

 なぜならば、エリナは一国の王族、皇族と呼ばれる立場である。

 その結婚相手を、エリナ本人の意思で選べるとは到底思えなかったからだ。しかし、ふと思い出す。

「……もしかして、旭日様のことですか?」

 旭日の名前が出た途端、わかりやすく顔を真っ赤にしたエリナであった。

「(わぁ~、わかりやすーい……)」

 正直に言ってメリアもまた恋愛経験などないに等しいが、それでも周囲がオーク族でやたらと性欲の強い弟妹ばかりだったこともあり、嫌でも色々な話が耳に入ってきていた。

 そのため、耳年増とまではいかないものの、ある程度男女のあれこれという話は理解していた。

「日本を劇的に強くした旭日様であれば、功績は十分。婿に迎えたいと言っても陛下はお怒りにならないかと思われますが?」

 メリアも何回か明治天皇と会談をし、その人柄と子供想いな一面、それでいて部下に対する正当な評価を下せる聡明さを見抜いていた。

 もっとも、明治天皇もまた転生者であり本来の歴史より長く生きているが故の部分もあったりするのだが、それはまた別。

「そ、その……旭日様は、我が国を強い国にしてくださった英雄です。でも……旭日様の周りには、魅力的な方が一杯いらっしゃいますから……」

「あぁ……」

 それはメリアにもわかる。

 なにせ、上は20代後半の妙齢美女から下は中学生くらいの少女まで、なんでもござれと言わんばかりなのだ。

「確かに……皆様綺麗な方ばかりでした」

 メリアも自分が乗せてもらった『飛鷹』の艦長を務めていた、とても上品なメイド服姿の女性のことを思い出す。

 確かに、日本人特有の黄色人種というには色白い肌で、胸元と腰の肉付きは豊かでありながら、腰も程々に(キュッと、とは言わない)締まっている姿は、正に『美しい』の一言に尽きた。

 さらに、旭日の側で戦っていたという細長い髪(この世界にポニーテールという単語は一部の国を除いて存在しない)の扶桑という女性は、飛鷹を上回るプロポーションだった。

 胸元は軍服に包まれながらも激しい自己主張をしており、足もスラリと長く、まるで有名な歌劇女優かなにかのようにも見えた。

 そして、その驚きは日本本土に着いてからさらに強まった。

 粗野に見えて強い心と美しさ、そして優しさを持ち合わせた山城。

 一見頼りなげに見えて、演習となると的確な指示を出して航空隊を運用して見せる雲龍姉妹。

 その豊満なボディで優しく旭日を包み込む伊400型姉妹。

 冷静沈着だが、冷徹無慈悲ではない津軽や大鳳。

 ちょっと頭のネジがおかしいような感じはあるが、常に旭日や仲間たちのためにと頑張っている夕張や明石。

 どの女性たちも、皆違った形で魅力を放っていた。

「(なるほど。エリナ様はそれで自分に自信を無くされてしまったのでしょうか……聞いた話では、旭日様がこの日本に着任された時に依頼された海賊退治には自らついていくほどの積極さがあったと聞きますが……)」

 その時、メリアは『エリナの能力』を思い出した。

「もしかして……最初に旭日様に同行した時は太陽神様のお告げがあったからその場で行動できたのですか?」

 エリナがあからさまに『ギクッ』と肩をすくめた。

「……エリナ様はもっと明朗快活で竹を割ったような方なのかと思っていましたが、意外と奥ゆかしい一面がおありなのですね」

 ころころとこちらも鈴を転がすように笑うメリアは、顔を真っ赤にしながら膨れているエリナを見てさらに笑ってしまった。

「し、仕方ないじゃないですか……18年生きていて、こんなの初めてだったのですから……」

 エリナの特殊性……『キマイラ族』であるということは、周辺国家はもちろんのこと、文明国や列強国にまで知れ渡っているという話題であった。

 そんな彼女のことだから、今までまともな恋愛ができたことはないのだろうとは思っていたが、どうやら想像以上に酷かったらしい。

「だとすれば……私の感覚ではありますが、回りくどいことをせずに、直球でお誘いをかけてはいかがでしょうか?」

「ちょ、直球で?」

「はい。旭日様はあの通りのお方ですから、真正面からのお誘いはしっかりと考えて下さると思いますよ」

「ですが、ただでさえ多忙で、今は非常時ですし……」

「非常時だからこそ、あるべき日常を思い出す一時の憩いがあってもよいと思いますわ」

「そう、でしょうか……」

 エリナはすっかり縮こまってしまっている。

 だからこそ、メリアは自分が後押しをしなければいけないと思った。

 そもそも、彼女はなにかの『答えが欲しい』、或いは『後押ししてほしい』と思ったからここへ来たのだろうということはメリアにはお見通しであった。

「そうです。このままでは、旭日様のお心を掴むことはできないでしょう。旭日様はただでさえご多忙な方。今の状態が10年も続けば、あっという間に三十路になってしまいます。ある意味今が……決戦を控えた今こそが、好機なんです‼」

 メリアの強い言葉が心に響いたのか、エリナは目元を引き締めた。

「……ありがとうございます、メリア様。私……行きます‼」

「その意気ですわ!」

 エリナは立ち上がると、従者に命じて食料地帯で採取されたリンゴを置かせた。

「本日のお土産と言いますか、お礼ですわ。では、ごきげんよう」

 エリナが足取り軽く出て行ったのを見て、メリアは『ふぅ』とため息をついたのだった。

「……弟妹たちもあれくらい可愛かったらよかったんですけどねぇ……」

 あの強引で、どうしようもないほど脳筋かつ欲望に素直だった、でも大事な弟妹たちのことを、ふと思い出してただ『無事でいてほしい』と思うメリアだった。

 一方のエリナは一度城へ戻ると、父からのお小言も程々に聞き、今度はちゃんと『旭日と逢引きしたい』と堂々と言ってのけた。

 流石の明治天皇も真正面からそんなことを言われるとは思っていなかったようで、『急にどうした?』と驚きを隠せないままに聞く始末だった。

「お父様は私が旭日様と添い遂げたいと言い出したら、賛同してくださいますか?反対なさいますか?」

「あぁ、そういうことか……確かに、現在の我が皇室に皇太子以外の男児はおらんからな。お主が婿を取ってくれるというのであればいざという時という意味でそれに越したことはないが……やはり旭日か」

 明治天皇もなんとなく娘の思いには気づいていたようだった。

「旭日にはずいぶんと苦労をかけておる。ヒロセに言わせれば、『バルチック艦隊に備えていた頃の我らよりも忙しく動き回っている』とのことだったからなぁ」

 日清戦争で勝利し、遼東半島を得た日本だったが、ロシアを主導とした三国干渉によって賠償金を大きく増やすことにはなったものの、割譲された遼東半島を手放さざるを得なくなった。

 そのことから『臥薪嘗胆』を合言葉にロシアを仮想敵国とし、軍備の増強を重ねたのが、当時明治天皇が君主として君臨していた大日本帝国だったわけである。

 その頃の官民問わぬ忙しさを上回るほど、と言えば明治天皇もどれほど大変だったかを窺い知ることができる。

「ふむ。旭日は我が国を江戸の時世から一気に100年も200年も引き上げてくれた傑物だ。しかも、一部技術に関しては我が国の敗戦した『あと』のモノまであるという……それに、旭日はあの天照大神様から直接恩恵を受けて転生してきた男だからな。そういう点でもお主の婿に据えるには問題なかろう」

 明治天皇は少し考えるような様子を見せると、『お主がそうしたいならば、そうすればよかろう』とあっさり許可をくれた。

 あっさり許可をもらえるとは思わなかったエリナはむしろ拍子抜けしてしまう。

「よ、よろしいのですか?」

「いいも悪いも……旭日にはいずれ、一艦隊の司令官などではなく、軍の重責、ひいてはお主の婿として万が一の際には我が跡目を継いでもらいたいと思っていたのだ。まぁ、本当に継いでもらうには『あ奴』になにかあってのことであるし、あってもあと20年から30年以上はかかるだろうが……それまでに我が国はこの世界でも列強国に並ぶ存在になれるだろう。島嶼国家群を率いて連合し、それら1つ1つが明治以上の実力を有していれば、強大となるからな」

 旭日が提案し、日本で明文化された『大海洋共栄圏』は今や加盟国が15ヵ国を超えており、各国への教官の派遣やインフラの整備などで国内はてんてこ舞いであった。

 しかしそれだけに経済も物流もかなり活発に動いており、人々は日々イキイキとしている。

 首都であるアシタカノウミの景観もすっかり様変わりしており、近代的なコンクリート造りの建造物が増えてきていた。

 ただし、後々に響くことなので旭日から建築関連に徹底して注意がなされたのが、『自然環境に配慮した工事をすること』であった。

 日本では強固すぎる護岸工事の影響や干潟開発の影響で生物の生息できる環境が激減し、貴重な在来生物は令和の世になってもなお姿を消しつつある。

 そんな未来を見たくないと思っていた旭日としては、その辺りを徹底して注意してほしかったのだ。

 もちろん施工業者の中にはそんな時代を知っている人もいるので、旭日を通じて出された日本政府からの依頼にしっかり応えていた。

「ただ、旭日はとても忙しい身の上だ。それに、旭日の周囲には艦女……いわゆる精霊娘たちがいる。その辺りも含めて、本人にキチンと了承を取った上で行動しなさい。まぁ、私からもお膳立てくらいはしておくが」

 こうして、エリナにとっての最大の障害と思われた『父親の説得』はあっさりと成功してしまった。

 拍子抜けしたエリナだが、そうと決まれば『善は急げ』、『思い立ったが吉日、その日以降は凶日』である。

「ではお父様、お願いできますか?」

「うむ。色々手探りになるだろうが……やってみるといいだろう。これも経験だ」

 エリナはその日、旭日とどのようなデートをするべきかとああでもない、こうでもないとやりながら考えたのだった。

 一方、旭日はというと、とある船の進水式に来ていた。

 もっとも、進水式と言っても軍艦の、ではないが。

「おぉ、これが……」

「はい。我が国初の『民間造船所』である『四菱造船所』が手掛けた超大型客船です。名前を、大蔵提督の戦艦にして、我が国のもう1つの名前である『扶桑丸』といたしました」

 四菱造船所を創立したタケダ・カツヨリは、戦国時代の武田勝頼の転生者であった。前世での失敗と、海が近いということから海への憧れを持ち、海洋に関する様々なことを学んだ。

 そして、資産家だった自分の家を利用し、大日本皇国初の民間造船所として、『四菱造船所』を立ち上げたのだ。

 四菱、とはつまり、武田の家紋のことである。

 旭日たちの目の前には、真っ白に輝く巨大な船体が海に浮かんでいた。先ほど名前が発表され、進水を終えたばかりであった。

「素晴らしいじゃないですか。見事なものです」

 この船の見た目は旧世界におけるイギリスの『クイーン・メリー』と呼ばれた船に酷似しており、海軍の意向もあって有事の際には徴用して軍籍に置ける船とできるように設計されていた。

 見た目は『クイーン・メリー』に酷似しているが、細かい区画の配置や機関室の保護など、軍艦染みた設備がいくつも存在するのはそのためである。

 以前武装客船らしきものをレイモンドが目撃していたが、それは国営の日ノ本造船所が建造したものであった。

「いわゆる『武装客船』とする予定だが……最初はどうするんだ?」

「はい。この世界は海賊のみならず、野良のワイバーンや肉食の海洋生物が多く生息しております。木造船はおろか、1万t越えの鋼鉄製船舶が襲われたこともありました。それを考慮し、50口径12.7cm連装高角砲を両舷併せて4基、さらに接近された時の砲として60口径8cm単装砲をこれまた両舷併せて4基設置します。そしてメインとなる主砲として、前甲板と後部甲板に『秋月型駆逐艦』が装備していた『65口径10.5cm連装砲』を1基ずつ装備する予定でございます」

「もはやちょっとした軽巡だな」

「さすがに速度と装甲は巡洋艦のそれには及びませんが……提督のお教えくださった技術の数々を取り込んでいますので、それなりに強力かと。また、有事の際には対空用の機銃を増設し対空戦闘に、さらに艦首部分に対潜迫撃砲を2基搭載することで水中生物や潜水艦にも対応できるようになっております」

「航空機は?」

「はい。提督のご指示がありましたので、零偵は無理でしたが、瑞雲か零観は搭載できるようにしておこうと思っております。爆弾の搭載、という意味ではどちらも十分すぎるでしょうが」

「ま、そうだわな」

 水中に潜っている存在(科学文明国からすれば普通に潜水艦)が攻撃しようとすれば、なにかしらの兆候を水の上に示すことになる。

 そこに向かって飛行機から爆弾を落とせば水中で爆弾や爆雷が爆発することで損傷し、うまくいけば相手を浮上させて大砲で仕留めることも可能となる。

 もっと良ければ一撃で撃沈することもありうるが、それはあくまで希望的観測にすぎない。

 ちなみに命中したかどうかの目印としては、海面に燃料の油が浮いて来ていればなにかしらの損傷を与えており、もし気泡が大量に出ているようなら大破浮上か撃沈の可能性が高いと言われていた。

 もっとも、大戦中のアメリカは日本軍の爆雷攻撃を受けた際にわざと重油を流出させたり、魚雷発射管から不用品や衣服などを発射して『撃沈した』と誤認させるような奇策も取ったと言われている。

 まぁ、創作ではないのだから『敵の潜水艦を発見!』と言って『ダメだ!』となるわけでもないのだから、対策は多いに越したことはない。

「よく作ってくれた。この船は将来的に列強国に対しても航行できるだけの能力があることを示してくれると信じたい」

「そういえば、グラディオン王国の使節団が来ているんですよね?国交を結べたら、この船……扶桑丸の処女航海の目的地にしたいですね」

「扶桑丸が停泊できるほどの大きな港を持っていそうなのは……上位列強以外じゃアルモンド王国くらいだな。俺たちはそれくらいしか知らないからな。それを考慮すると……確かに、もしグラディオン王国と国交を締結できれば、そこを処女航海の目的地にするのは十分ありだ」

 旭日としても、日本初の大型客船……列強に匹敵する民間船舶の処女航海の目的地として列強国の港に入港させることができれば、大きな話題を作ることができると考えていた。

 今のところ日本の発する大海洋共栄圏は第3世界大陸の付近でのみ広まっている考え方だが、もしこれで第2世界大陸や第1世界大陸にも広まれば、経済の活発化や交流による相互理解も生まれるだろう。

 旭日としては、これによってこの世界に存在しない国際機関を設立し、国家を厳格に管理することによる紛争の『理性的な解決』ができないかと考えているのだった。

 以前外務大臣のエンドウ・ナオツネに聞いたところ、『この世界に国際機関の類はない。国際会議のようなモノも開催されたことがない』という話であった。

 先進的な考え方を持っているはずの、そして数十年前に世界で起きた様々な戦争の際に介入を決意したアイゼンガイスト帝国ですら、そういう組織を設立しようという考えに至っていないという。

 それは恐らく、この世界が『地球で言う世界大戦レベルの大戦争を経験していないから』ではないのだろうかと旭日は推測していた。

 元々国際連合の前身である国際連盟は、第一次世界大戦の『あと』に設立された機関であった。

 実行力はないに等しかったものの、国と国が様々な枠を超えて会談を行い、将来を見据えた話をするというのはとても重要なことであった。

 その中で第一次世界大戦のことと、大艦巨砲主義による際限のない軍拡を抑えるべく軍縮条約が締結され(もっとも、ここには急激にその力を伸ばしてきた日本に対する警戒もあったようだが)、軍縮を進めようという部分があった。

 旭日はなんとしても国連に相当する機関を立ち上げさせ、中小国の争いを事前に話し合いで止めることができるような状態を作らなければ、世界平和など夢のまた夢であろうと考えている。

「この扶桑丸はその第一歩だ。我が日本が世界に乗り出すだけの力がある、と示すための……旧世界の日本は内乱ばかりで世界に目を向けるのが『遅すぎた』からな……まぁ、狭い島国が世界に名だたる国になれたというだけでも本来はすごいことなんだが」

「私も前世では父を超えることばかりに目を向けていて、家臣を束ねるのに大きく苦労したので、耳が痛いですね。できることならば、今度は世界を相手にできるくらいの大物になってみせたいですよ」

 カツヨリとしても自分が大きな世界に乗り出せるというのは嬉しいらしく、進水した大型船を見て微笑んでいる。

「こんな光景を、前世でも今世でも父上に見てほしかった」

 旭日も両親を大学生の時に亡くしているため、ある意味で『立派になった自分』を見てほしいという思いがあったために、カツヨリの気持ちは少しわかる。

 だが、この船はいずれ来る戦争のために備えている一面もあるので、そんな微笑ましい気持ちばかりでもいられないのだ。

「そのためにも、そう遠くない内に吹っ掛けられるであろう皇国からの戦いはなんとしても乗り切らないとな」

「はい。侵略される側の気持ち……とても恐ろしいものです」

 カツヨリもまた、父を超えるという目標を胸に織田信長の領地に攻め込んだ男だが、攻め込まれて初めてその恐怖を覚えたのだ。

 すると、海軍の兵が走ってきた。

「あ、大蔵司令、こんなところに居らっしゃいましたか‼」

「お、おぉ。どうした?」

「はっ。大本営(陸海空統合作戦本部)より、緊急の会議とのことで直ちにアシタカノウミ大本営に戻ってきてほしいそうです。なお、こちらの資料を夕張さんから預かっております」

「ん?緊急会議って……あぁ、新しい空母の設計図引いたんだったな。今度のはカタパルトにアングルド・デッキを備えた近代的な航空母艦にしなくちゃならないから大変だぜ……」

 ぶつくさ言いつつ、旭日は扶桑に頼んで零式水上偵察機で大本営まで向かうよう頼むのだった。

 1時間後、大日本天皇国アシタカノウミ大本営に到着した旭日は陸海空統合作戦本部の会議室へ赴く。

「遅くなって申し訳ありません。ただいま到着しました」

 軍務大臣のヒロセ・タケオを始めとして、陸軍大臣のニシズミ・コジロウ、海軍大臣のムラカミ・タケアキ、さらに空軍大臣のエグサ・タカシゲ、そしてそれ以下の幹部も勢揃いしている。

「うむ。今度発表される新型空母は我が国の未来を大きく変えることになる存在であるからな。しかも、旧来の空母は改装して揚陸艦や護衛空母に変更、揚陸のための特大発動艇・改と、対地支援用の流星を搭載する母艦になる予定だ。で、どんな雰囲気なのかね?」

「はっ、こちらの資料をご覧ください。私の傘下にいる夕張と明石が引いた設計図であります」

 旭日が扶桑に頼んで資料を配ってもらう。

 だが、資料を見た一同はなぜか顔を真っ赤にしていた。

「……大蔵司令、これは一体……?」

「へ?」



 その頃、明石と夕張の工廠、『明夕工廠』では夕張がツナギ姿(ただし上半身の上着は脱いでタンクトップ一丁)でグビグビと大和ラムネを飲んでいた。

「っぷはぁ~っ‼いやぁ、労働の後の一杯は格別っすねぇ!」

「ま、そうだね」

 物静かなところの多い明石だが、細やかな気配りもできる仲間思いの人物だ。そんな彼女だけに、静かにチビチビラムネを飲むこの時間は結構大切らしい。

 すると、明石が机の上に置かれた茶封筒に目をやった。

「夕張、あれなんだい?」

「あぁ、あれはっすね……アタシを含めた艦長精霊たちのヌード写真っす!」

「……は?」

 明石が急いで中を確認するのを尻目に、夕張は楽しそうに語る。

「やーだって司令ってば忙しくってヌく暇だってないでしょうからねぇ、せめてこれでちょっとは気晴らしでも……」

「夕張」

「なんすか?あ、流石にエリナ様のは撮影していない……」

「そうじゃなくて……これ、新型空母『赤龍』の設計図じゃ……?」

「……へ?」

 夕張が急いで茶封筒の中身を確認すると、エッチなヌード写真など1枚もなく、武骨な軍艦の設計図があった。

「あ、あれ……?あ!さっき伝令の人に渡した茶封筒の方がアタシらのヌード写真……」

「……の、ようだね」



 それから1時間後のこと。



「夕張のバカはどこだー‼あの大バカ者はどこへ行ったぁー‼」

「さっき『一流のカメラマンになるために修行に出る』って言って飛び出していきましたけど……」



 旭日が手に一〇〇式短機関銃を、腰に海軍刀を、背中に八九式擲弾筒を背負い、トドメにガスマスクをしながら工廠へ飛び込んできたのだった。

 明石としても冷や汗を流しながら答えるしかないのだった。

 結局コッソリと帰ってきた夕張はあっさりと見つかり、『夕張、覚悟しろぉ‼』とケツバットのお仕置き(ただしバットと言っても柔らかい奴)を受ける羽目になるのだった……。

 ちなみに、夕張が撮影したヌード写真は扶桑を始めとする一部の女性たちの嘆願もあり、旭日の手によって処分されたとさ。

 ついでに、『部下が大バカをやらかして……』と上層部に平謝りしたものの、上層部も夕張のぶっ飛び具合は知っていたからか大目に見てくれたという。

 寛大な人たちで、よかったね。

はい。二次創作などでもやって懲りていない大○部長オチです(^-^;


それと、そろそろ艦これのイベントなのでまた2か月ほどお休みします。

次は9月ごろになりますかね……本当にすみません

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