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最強おじさん異世界で休日を満喫する!〜なお、勇者は換金所である〜  作者: 涙目


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2/12

ep1 冒険者ギルド

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 冒険者たち


「今日は何の依頼受ける?」


「ゴブリン討伐かな」


「薬草採取も悪くない」


主人公


(人が多い……)


(帰りたい……)


(でも生活費が……)


依頼を見る。


Aランク。


Sランク。


ドラゴン討伐。


魔王残党討伐。


古代遺跡調査。


主人公


(これなら一秒で終わるな)


依頼を取る。


ここまでは問題ない。


問題は受付だ。


「次の方ー」


「はい!」


「次の方ー」


「よろしくお願いします!」


陽キャどもめ。


どうやって会話してるんだ。


怖くないのか。


主人公は壁際へ移動した。


作戦開始である。


(右に三人)


(左に二人)


(正面におっさん)


(受付はスキンヘッド)


分析完了。


(今じゃない)


待つ。


(今でもない)


待つ。


(まだだ)


待つ。


スキンヘッド受付が欠伸をした。


(きた!!)


主人公の体が消える。


神速。


魔王すら捉えられなかった移動術。


依頼書をカウンターへ。


バン!!


即離脱。


柱の陰へ。


完璧だ。


(よしよし)


スキンヘッドが依頼書を取る。


そのまま受理しろ。


受理だ。


お前ならできる。


しかし。


スキンヘッド。


依頼を戻した。


(!?)


なぜだ。


おい。


戻すな。


それ俺の。


俺の生活費。


受理しろ。


受理してくれ。


スキンヘッドが舌打ちした。


「たく……」


依頼をめくる。


「重なってるかどうかくらい確認しろや」


怖い。


怖い怖い怖い。


怒られた。


俺じゃないけど怒られた。


でも。


言わなければ。


言わなければ生活費が。


口を開く。


「……ぁ」


スキンヘッド。


顔を上げる。


「ん?」


目が合いそうになった。


主人公。


即座に壁へ張り付く。


忍者も真っ青の速度で。


受付は首を傾げた。


「……?」


沈黙。


「なんだ。気のせいか」


主人公。


安堵。


(危なかった)


(目が合うところだった)


危機一髪である。


しかし。


依頼は受理されていない。


(どうする……)


震える主人公。


そのとき。


背後から声。


「またやってるのか」


振り返る。


勇者だった。


主人公。


硬直。


勇者。


依頼書を拾う。


受付へ。


「この依頼は彼のです」


スキンヘッド。


「彼?」


勇者。


「彼です」


スキンヘッド。


「どこに?」


勇者。


「そこです」


スキンヘッド。


「壁しか見えねえが」


主人公。


(帰りたい)



数日後。


(ふっ、依頼は討伐一択だろ!)


掲示板を見上げる。


薬草採取。


荷物運び。


引っ越し補助。


行方不明猫の捜索。


却下。


却下。


却下。


却下。


(なんせ、人と会話しなくていいからな!)


討伐依頼。


それこそ至高。


敵を倒す。


帰る。


報酬をもらう。


終わり。


最高。


(人と会話しなくていいからな!!)


重要なので二回考えた。


そして。


掲示板の討伐欄を見る。


見る。


もう一度見る。


三度見る。


「なっ……!」


討伐依頼が。


ない。


「討伐依頼が……ない……だと……」


馬鹿な。


そんなはずがない。


昨日まではあった。


ゴブリン討伐。


狼討伐。


森の魔物討伐。


大量にあった。


なのに。



ない。



一枚も。


主人公は震えた。


(な、なぜだ……!)


その時だった。


近くの冒険者の会話が聞こえてきた。


「あー、最近楽だよな」


「だな」


「討伐依頼ほとんど出ねぇし」


「なんか知らんけど魔物が減った」


主人公硬直。


「森も平和」


「街道も平和」


「ダンジョンも平和」


「勇者様のおかげかな」


「かもしれんな」


違う。


違う。


勇者じゃない。


俺だ。


暇だから散歩して。


ついでに魔物を見つけて。


ついでに倒しただけだ。


「……」


主人公悟る。


(俺のせいか)


討伐依頼が無い。


理由。


全部自分が片付けたから。


最悪だった。


仕事を探していたら。



仕事そのものを消滅させていた。



(くっ……)


額に汗が流れる。


仕方ない。


討伐以外だ。


依頼を確認する。



薬草採取。


人と会話する。


却下。



迷子捜索。


人と会話する。


却下。



配達。


確実に人と会話する。


論外。


「……っ!」


突如。


主人公の視界に一枚の依頼書が飛び込んだ。


【畑を荒らす害獣の駆除】


目が輝く。


討伐。


討伐だ。


しかも害獣。


対象は魔物。


依頼主と会話しなくてもいけそう。


完璧。


これしかない。


主人公。


神速で依頼書を確保。


即離脱。


そして例のスキンヘッド受付へ。


(よし……)


(今回こそ……)


人の波が引く。


スキンヘッドが水を飲む。


その一瞬。


バン!!


依頼書設置。


即退避。


柱の影。


完全勝利。


(受理しろ……)


(受理しろ……)


祈る。


スキンヘッド。


依頼書を拾う。



お。


いいぞ。


そのままだ。


いけ。


いけ。


いけ!



スキンヘッド。


依頼を見た。


そして。


笑った。


「またか」


!?


「この依頼、もう終わってんだよ」


!?


「誰だよ毎回先に片付けてる奴」


!!?


「依頼出した翌日に魔物いなくなってんだぞ」


完全に俺だった。


「気味悪ぃよなぁ」


やめて。


本人いる。


ここにいる。


柱の裏にいる。


「依頼主も困ってたぜ」


「困る?」


近くの冒険者が首を傾げる。


「そりゃそうだろ」


スキンヘッドは笑う。


「お礼を言いたいのに誰かわからねぇんだから」


主人公停止。


「畑の爺さんよ」


「ありがとなぁって泣いてたぜ」


主人公停止。


「……」


脳が処理している。


今。


ありがとう。


と言われた。


直接じゃない。


でも。

言われていた。


「変な話だよな」


スキンヘッドは肩をすくめる。


「見つけたらビール奢るんだけどな」


主人公。


「……」


ちょっとだけ。


嬉しかった。


でも。


声を掛ける勇気は無かった。


なので。


そっと帰った。


帰り道。


主人公は少しだけ上を向いた。


(……ビールか)


そして。


次の日も誰にも会わない討伐依頼を探しに行くのであった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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